初めてのM&A(売却)で確実に自身の満足度を高めるためのポイント
- M&Aコンサルティングレポート
弊社がこれまで中小企業オーナーの方からM&A(売却)のご相談を受けてきた中で、「会社売却をするタイミングはいつがいいですか?」「会社売却の際に気を付けるべきことは何ですか?」というご質問は、多くの方が口にされます。今回は、この2点について考えていきます。
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1.会社売却のタイミングはいつがいいのか?
自身の会社に後継者が不在で「自分が〇〇歳になったら会社売却を考えたい」という経営者の方は多いと思いますが、売却のタイミングとしては年齢の基準よりも“会社の業績が良いタイミング”で検討をスタートすることが重要です。
「会社業績が良いときに何故売ってしまうのか?もったいない、早すぎるのでは?」と思われる経営者も多いと思います。
しかし、相手(=買い手様)があってこそのM&Aです。とてもシンプルなことですが、買い手様の立場から見ると、業績の良い会社・悪い会社であれば、当然良い会社に関心を持たれます。売り手様の会社の沿革が深く、優れた技術やノウハウを蓄積していたとしても業績の低迷や赤字体質といった場合は、その後の経営統合の難易度が高く、買い手様に譲受けを慎重に判断されてしまう可能性があります。
また、会社の業績は譲渡価格に大きく影響します。中小企業のM&Aにおける企業価値は「時価純資産+営業権」から算定されることが多いですが、営業権は「直近の営業利益○年分」といったように、会社業績の良し悪しを計算根拠に算定されます。
従いまして、利益が出ている状況でなければ、買い手様は時価純資産以上の買収価格を提示することが難しくなります。
業種、業歴、社内人材・組織体制、取引先、機械設備などの動産、保有不動産などの個別要素も大切ですが、会社業績が良ければ良いほど、買い手様へのわかりやすい一番大きなアピールポイントとなります。
実際のM&A実現に向けた売り手と買い手双方の協議の場では、買い手様側の立場として「どんな業績の会社であれば買いたいか」、反対に売り手様側が「どの程度の価格での譲渡を希望されているのか」、などM&Aアドバイザーがニーズを把握したうえで、相手方とのご認識のすり合わせやご納得に向けた条件調整を行います。
2.M&Aにおいて気を付けるべきことは?
M&Aにおいて一番大切なことは、相手(=買い手様)を“良く知る”ことです。一見当たり前のようなことですが、実はこの観点が不足している方は実際に多くいます。
例えば、買い手様が売り手様の拠点視察をすることは当然ですが、逆のパターンはどうでしょうか。売り手様が買手様の事務所、店舗、工場などを見学に行くことは、ほとんどございません。
会社を親族承継でもなく、幹部社員への承継でもなく、第三者へ譲渡(M&A)するということは大きな決断・勇気が必要なことだと思います。それは買い手様としても同じことで、オーナー社長の築いてきた会社を譲受けることは、その企業の資産・負債のすべてや知的資産(取引先との取引継続や従業員の雇用)をすべて引き受けるため、相当にハードルの高く、綿密な経営分析を行い進めていきます。
そのため、M&Aは単に譲渡金額の合意だけで成立するものではなく、譲渡後の引継ぎ期間や役員陣の待遇(役職、期間、報酬)、表明保証条項などの複合的な要素を組み合わせて成していくものです。
これらの2つの大きな要素を考えると、売り手様が買い手様からのオーダーに答え続けるばかりではなく、“自身の会社を更に発展させたい“という大局観のもと、ビジネスパートナーとして一緒に事を成す相手を見定める感覚を持つことは重要なポイントとなります。事業承継の一つの選択肢としてM&Aを検討される場合でも、売り手様・買い手様双方の歩み寄りの結果として、譲渡後一定期間、売り手様が引き続き役員や顧問として残り、会社運営に携わることもしばしば見られます。
売り手様も買い手様も同じ経営者として、相手を良く知り、オーナーチェンジという会社組織としての重要なプロジェクトを一緒に成し遂げる協調性を持ち続けることが、満足度の高いM&Aに近づいていきます。M&Aも「“ヒト”、モノ、カネ」が重要です。まずは、自社における譲渡のタイミングを見定めて、その後に買い手の候補先である相手方の”ヒト”を良く知ることが結果的にご自身のはじめてのM&Aの満足度を高めることに繋がっていきます。
新卒で都市銀行に入社。法人営業と事業再生業務を中心に13年従事。幅広い業種・規模の顧客の経営課題に対し、事業戦略・財務戦略の両輪から解決に向けたコンサルティングを経験。船井総合研究所のM&Aにおいては、銀行での業務経験を活かし、M&Aをただ成立させるだけでなく、双方の企業の特徴を深く理解し、最適な企業とのマッチング、および成立後のシナジー効果を最大限に発揮させる点を得意とする。
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