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太陽光発電・再エネ業界M&Aの事例

  • 電気・ガス・エネルギー M&Aレポート

近年、太陽光発電業界のM&Aが、報道をにぎわせていますが、どのような当時者が、どのような意図をもって、どのようなM&Aが行われているのか、そのポイントを、具体的なM&A事例をもとに分かりやすく解説していきます。

太陽光発電・再エネ業界M&Aの現状

まずは、2021年に行われた再生可能エネルギー業界におけるM&Aについて、レコフデータをもとに、船井総合研究所により、エネルギー電源別で集計を行った結果、太陽光発電関連が52件、風力発電関連が16件、バイオマス発電関連が19件、地熱発電関連が1件と、太陽光発電関連のM&Aが多くの割合を占めています。

それでは、その太陽光発電関連のM&Aとして、買収側は、どのような業態・業種が多いのかというと、いわゆるエネルギー関連事業者が約40%、商社や投資ファンドが約30%、その他、建設・不動産関連事業者などがその多くを占めており、一定程度、連続買収を仕掛けるストロングバイヤーが存在している業界であることが特徴として挙げられます。

また、昨今は上場企業による、太陽光発電関連事業の買収も増えてきており、「カーボンニュートラル」「脱炭素」「SDGs」等の時流に乗るかたちで、企業経営における再生可能エネルギー導入の必要性の高まりから、M&Aを実行しているケースも散見されています。

近年行われた太陽光発電関連のM&Aの事例について、具体例を挙げながら、ご説明させて頂きます。

太陽光発電・再エネ業界M&Aの事例紹介

(1)ENEOS株式会社による、ジャパン・リニューアブル・エナジー株式会社のM&A事例

2021年、ENEOSホールディングス株式会社(東京都千代田区)が子会社を通じて、再生可能エネルギー事業を運営するジャパン・リニューアブル・エナジー株式会社(以下、JRE、東京都港区)の全株式を取得し、子会社化することを発表しました。当該案件で、最も衝撃を与えたのは、その取得価格で、約2,000億円と発表されています。ENEOS側のリリースの中で、

①2022年度末までに、国内外における再生可能エネルギー事業の総発電容量を100万キロワット超に拡大することを目標としており、その目標に資すること、

②JREは、太陽光、陸上風力およびバイオマスの再生可能エネルギー電源を多数保有していること、

③再生可能エネルギーの主力電源化に向けた切り札として普及が期待されている洋上風力発電においても、事業化検討に積極的に取り組んでいること

等を挙げ、本件の意義について説明をされています。

(2)株式会社ダイキアクシスによる、株式会社サンエイエコホームのM&A事例

2021年、水回りの住宅関連商材・浄化槽・産業排水処理など、「水」に関連した事業を展開する株式会社ダイキアクシス(愛媛県松山市)が、太陽光発電設備の設計・販売・施工・保守会社である株式会社サンエイエコホーム(神奈川県藤沢市)の全株式を取得し、子会社化することを発表しました。株式会社ダイキアクシスは、「水」に関連した事業だけではなく、M&Aによる事業の多角化を図っており、その中でも再生可能エネルギー事業への参画を進めるなか、太陽光発電事業における設計から保守まで一気通貫で取扱いができる株式会社サンエイエコホームをグループ化することで、再生可能エネルギーに対するソリューション体制を盤石にし、相互補完をしながら事業伸長をより加速化させていく目的があったものと思われます。

(3)株式会社シーラホールディングスによる、日本太陽光発電株式会社のM&A事例

2022年、投資用マンション販売事業、不動産クラウドファンディング事業等を運営する株式会社シーラの親会社である株式会社シーラホールディングス(本社:東京都渋谷区)が、太陽光発電の設計・施工・運用・保守・管理等を行う日本太陽光発電株式会社(本社:愛知県一宮市)の全株式を取得し、完全子会社化することを発表しました。土地の仕入から、太陽光発電システムの設計、施工、運用、保守メンテナンス、管理等を一気通貫で行う日本太陽光発電と、高い不動産開発力を持つシーラのノウハウを融合することで、遊休地の有効活用や、投資用マンション購入のお客様に対して、太陽光発電施設を投資商品として提供することで、相互シナジーの創出、また中期的には、シーラのマンション開発における、自家発電設備の整備を図るなどの付加価値提供を想定されているものと思われます。

(4)株式会社フィットによる、株式会社Plus one percentのM&A事例

2021年、コンパクトソーラー発電施設販売、ソーラー発電を搭載したスマートホーム販売を主な事業とするマザーズ上場の株式会社フィット(本社:東京都渋谷区、本店:徳島県徳島市)が、東日本を中心に太陽光発電システムの開発・販売を行っている株式会社Plus one percent(東京都杉並区)の全株式を取得し、子会社化することを発表しました。クリーンエネルギー事業を四国・西日本を中心に行ってきた株式会社フィットが、その事業領域を東日本まで一気に拡大することを企図し、また相互に部材調達や販売網の共有を図ることで、企業価値向上を加速させる目的があったものと思われます。また、この取引には、一部対価の支払いに条件を付す「アーンアウト条項」を設けられており、不動産や資産のようなアセットを売買して終了というものではなく、M&Aの両当事者が、事業を共に成長させることを、より明確にすることで、「成長戦略の一環としてのM&A」を内外に発信しているものと思われます。

(5)Abalance株式会社による、Vietnam Sunergy Joint Stock CompanyのM&A事例

2020年、自社保有発電所の建設・運営、太陽光発電所の販売、モジュール・関連製品の販売等、グリーンエネルギーの総合カンパニーを形成している東証二部上場のAbalance株式会社(東京都品川区)が、モジュールメーカーとして、太陽光パネルの製造販売事業を運営するベトナムのVietnam Sunergy Joint Stock Companyを、特定子会社化すること発表しました。この取引によって、Abalanceグループとしての「グローバル化」を実現し、且つ「サプライチェーン体制の確立」を実現することで、モジュールメーカーとしての競争力強化の実現を企図しています。

事業会社のライフサイクル

このように、太陽光発電施設の売買を主目的とする「資産のM&A」だけではなく、「事業のM&A」も拡大しており、またその中においても、新規の事業ポートフォリオの獲得を目指すもの、事業エリアの拡大・グローバル化を目指すもの、商流拡大を目指すものなど、様々な戦略を持ったM&Aが活発に行われています。また、その流れに前後するように、民間保険会社による、太陽光発電事業に係るM&A保険の提供開始や、セカンダリー太陽光発電所の査定サービスの拡大など、投資環境も整備されてきています。

事業会社には、「導入期」「成長期」「成熟期」「移行期」「安定期」のライフサイクルがあるとよく言われますが、そのライフサイクルに応じて、M&Aにおける市場環境も大きく変化するものであり、一般的には以下のような環境変化で推移すると言われています。

「導入期」は、ベンチャー期として、業績・実績ではなく、ビジネスモデル、技術などに着目

「成長期」は、売手有利のM&Aが進みやすく、高い株価での取引が多い

「成熟期」は、中堅大手による中小企業買収など、買手有利のM&Aが進む

「移行期」は、中堅大手の再編が進み、業界再編として動き出す

「安定期」は、業界再編が一巡し、業界内M&Aが終了、再編後の企業で業界が安定

このライフサイクルにおいて、太陽光発電業界は、現在「成長期~成熟期」に入っており、一部の動きとしては、「移行期」を見据えたM&Aが進んでいるものと思われます。また、太陽光発電以外の再生エネルギー業界(風力、バイオマス、地熱等)は、現在「導入期~成長期」にあるものと思われ、今後のM&Aの中心は、太陽光発電業界から、徐々にこちらの業界にシフトしていくものと思われます。

太陽光発電・再エネ業界M&A:まとめ

M&Aは、企業経営の中で大きな転換点になるものです。売却側・買収側のいずれの当事者になる場合においても、きっちりとした前準備と時機を逸しない経営判断が必要になってきます。まずは、自分たちでの日々の情報収集はもちろんのこと、必要に応じてM&A専門家への相談することで、客観的に自社の現状を評価をしてもらい、M&Aという戦略にどう対峙すべきかアドバイスを受けることも重要になってきます。M&Aを活用した企業経営は、新聞等で報道される大企業だけのものではありません。自社の戦略としても十分に活用することで、自社の「収益性」「永続性」を高めていきましょう。

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