M&Aにおける退職金について。事業譲渡・株式譲渡後の退職金、節税の方法を解説
- M&Aコンサルティングレポート
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M&Aにおける退職金
・退職金制度について
前提知識となる退職金制度について簡単に解説します。退職金は、本来は法的に義務化されている制度ではありません。しかしながら、近年導入率が高く、定年退職者だけでなく途中退職者にも支給される場合もあります。また退職金は、老後の生活保障の観点から税率が低く設定されているという点も重要です。
本記事ではM&Aと退職金の関係について解説します。
・買収企業の退職金
スキームによって買収された企業の給与システム、退職金制度の遷移は異なります。
また、一般の従業員と役員は、法的に企業との関係が異なるため、退職金に違いがあります。
・事業譲渡
役員
多くの場合、事業譲渡スキームでは役員はそのまま在籍するケースがほとんどのため、退職金が発生することはありません。退職金制度自体もM&A前後で変化しません。
従業員
事業譲渡スキームでは、譲渡成立の時点で一度、売却企業との雇用関係が解消されるため、この際に売却企業から退職金が支払われます。
・株式譲渡
役員
株式譲渡においてはほとんどの場合、売却企業側の役員は退陣することになるため、退職金が支払われます。まれに社員として在籍するケースもありますが、その際も一度退職金が支払われることがあります。
従業員
株式譲渡スキームの場合は、売却企業がなくなることなどはなく、買収企業の子会社として元の企業が存続するため、多くの場合はもともとの退職金制度が継承されます。
・退職金の税務
退職金への課税は一般の所得に対しての課税とは分けられ、控除分が比較的大きいといった、優遇された扱いになっています。
売却企業が退職金を支払う際は、支払額は損金に算入されるため課税対象所得が減少します。さらに、M&Aでの会社売却益にかかる税率は一律で20.315%ですが、役員退職金は累進課税のため税金を安く抑えられる可能性があります。
・退職金スキーム
ここまで上記で述べてきたように、M&Aをおこなった場合、売却企業側で退職金の支払い義務が発生することがあります。この退職金制度を活用することでM&Aの最中にかかる課税を減少させられるケースがあります。
端的にいえば、企業売却の際に退職金を支払うことで、資産を縮小させ、株式の価値を下げて譲渡を行うという手法です。これによって売却企業のオーナーは税率の低い退職金によって、課税額を減少させ利益を最大化します。
買収企業も資産の縮小が行われたことで購入額を抑え、損金に算入することで節税を行うことができます。
・まとめ
M&Aにおける退職金制度は、スキームによってその変化が異なります。PMIの際に問題が起きるリスクを避けるためにも、スキームの選定や合意書の締結の際に条件の明確化を行いましょう。
また、株式譲渡においては売却企業役員への退職金を活用することで、利益を最大化し、節税することができます。
退職金制度を活用して、より利益を獲得できるM&Aを行いましょう。
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