資本業務提携とは?M&Aとの違いやメリット・デメリットと事例を解説
- M&Aコンサルティングレポート
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資本・業務提携とは
資本提携
まず資本提携とは、複数の企業がそれぞれの技術やノウハウ・資金などを提供し合い、複数の企業の力を合わせて成果の獲得を目指す提携関係を指します。資本提携を行うにあたっては、出資を受ける側が出資する側に対して、株式譲渡や第三者割当増資などを行い、提携を結ぶ企業の一方がもう一方の株式を取得する、またはお互いが株式の取得を行います。
業務提携
業務提携は、資本関係を築かずに技術やノウハウを共有しながら、互いに協力して業務を行うことで業務の効率化や業績向上を目指すことを指します。技術や人材、サービス力などの経営資源を持ち寄り、技術協力による共同開発などを行うことで、コスト削減や新商品の開発等、様々なシナジー効果を生み出すことを目的としています。
資本業務提携とM&Aの違い
資本業務提携は、M&Aの1つに含まれる場合もあります。ただし、M&Aや買収の場合、経営権を移転させる目的で行われるケースが多いのが現状です。一方で資本業務提携は、経営権の移動が行われません。資本業務提携を結んだ後も、経営権に影響が出ないように、10%程度の株式取得で留めるため、それぞれの企業は独立した経営権を保有することになります。資本業務提携とM&A・買収では、そもそもの実施目的が異なるためM&Aよりも必要な資金は少なく、資金投入のリスクが低い点もポイントとなります。
資本提携の方法
資本提携の大半は株式譲渡、第三者割当増資のどちらかで行われます。
・株式譲渡
提携企業が法人または個人から発行済みの株式を買い取ることで資本提携を行う方法です。株式譲渡は法手続きが非常にシンプルである一方、株主が多く存在している場合には、株式の買い集めに時間を要してしまう可能性があります。
・第三者割当増資
新たに発行する株式を特定の第三者に割り当てる、新株引き受け方法のひとつです。第三者割当増資では、既存の株主もそのまま株式を保有し続けるため、新株を受け取る第三者はそれほど大きい影響力を得ることができません。そのため、支配獲得を目的としない資本提携と相性がいいスキームです。
このほかにも株式交換や株式移転など、資本の移動に伴い経営権が移動する場合も資本提携に含まれる場合があります。
業務提携の方法
業務提携の方法は様々な種類がありますが、企業同士で行われている業務提携は以下の3つです。
・技術提携
複数の企業が技術面で協力し合うことで、双方のメリットを期待する業務提携です。企業の立場はともに対等であり、お互いに独立した経営を保ったまま協力するという特徴を持っています。
・生産提携
生産提携は、生産の一部や製造工程などの一部を他企業に委託し、生産能力を補完するものです。OEMやODMもこれに該当します。双方にとって生産設備の獲得やブランド力の獲得につながります。
・販売提携
自社の開発した製品やサービスなどを、ブランドや販売チャネル、販売ノウハウなどの販売資源を持つ他社に委託する提携方法です。販路の拡大や、新規顧客の獲得、それに伴う売り上げの増加などが見込まれます。
資本提携・業務提携のメリットとデメリット
次に資本・業務提携のメリット・デメリットについてそれぞれお話しさせて頂きます
資本提携
【メリット】
強力な関係構築ができ、双方にとってシナジー効果を創出しやすくなる
資本提携は、単なる業務提携(アライアンス)に比べ、提携相手に株式を譲渡するため経営面や財務面で様々なサポートを受けやすくなります。また提携先が社会的に認知度・ブランド力が高い企業の場合、自社の企業価値向上にもつながるでしょう。
【デメリット】
提携内容によっては経営に干渉される可能性がある
多くの資本提携では、提携先に譲渡する株式を発行済み株式総数の1/3未満に抑えることが一般的です。そのため、会社経営に大きなダメージを受けるほどの干渉は基本的にはありませんが、一定割合以上の議決権を保有する少数株主権によって様々な権利を行使することができるようになります。そのためどの程度の出資比率を与えるか、長期的に関係を維持できるかといった点に注意する必要があります。
業務提携
【メリット】
他社の経営資源を生かし自社の発展につなげられる
業務提携は先述した通り、資本の移動が伴わないため、資本提携やM&Aと比較してコストや手続きが少なくて済むのが特徴です。そして何よりも他社の経営資源を自社の発展に生かすことができるため様々なメリットがあるといえるでしょう。
【デメリット】
経営資源・情報の流出リスクと提携の希薄化
業務提携では内部機密情報や経営資源を相互に公開するため、自社の技術やノウハウが流出や自社の製品の模倣による売り上げ低下などのリスクがあります。また資本の移動が伴わない身軽な提携の為、業務提携自体が希薄化してしまい、提携解消となる可能性もあります。
資本業務提携の事例
最後に資本業務提携の事例を3つ紹介いたします。
・イオンモール×マリモ
2023年3月28日、イオンモール株式会社は国内のマンション開発を担う株式会社マリモと資本業務提携したと発表しました。イオンモールは、イオン傘下の中核会社で、ショッピングモールの開発と運営を担っており、国内に140か所のモールを抱えています。一方マリモは、地方の中心都市や郊外でマンション開発に強みを持つ企業です。商業施設開発を得意とするイオンモールと、住宅・不動産開発を得意とするマリモが資本業務提携を築くことで、商業施設と住居が一体となった大型施設の開発を目指しています。
今回の資本業務提携で、イオンモールはマリモホールディングスよりマリモ株式の30%相当を譲り受けました。そして日本国内の不動産事業を当面の業務提携の範囲とし、物件の共同開発に関する情報の共有、人的交流を行っていく予定です。
・日本郵船×ギリア
2023年1月30日、日本郵船株式会社は、ギリア株式会社と資本業務提携をしたと発表しました。日本郵船は、日本の大手海運会社であり、定期船や航空運送、物流を行うライナー&ロジスティクス事業などを行っています。一方ギリアは、人工知能および応用技術にかかるコンピュータソフトウェアや、システムなどの企画、開発、コンサルティング、保守等を行っています。近年の海運業界では、自立運行システムの確立や脱炭素を見据えた新エネルギー活用等の技術革新が求められています。今回の資本業務提携により、ギリアの持つ研究開発力やAI技術を生かし、自立運行船や避航操船の開発・営業部門やバックオフィス部門のDX化を進めていく方針です。
・亀田製菓×マスヤ
2022年12月23日、亀田製菓株式会社と株式会社マスヤとの間で資本業務提携契約が締結されたと発表されました。亀田製菓は「亀田の柿の種」や「ハッピーターン」など米菓の製造販売を行っている。一方マスヤは、米菓の製造・販売を行っており、「おにぎりせんべい」や「杵もち揚げ」などを主力商品として展開しています。今回の資本業務提携により、亀田製菓が持つ米菓製造技術や営業・マーケティングなどのノウハウを提供し事業成長を図る狙いがあります。また、マスヤの生産余力を活かし、OEM生産の検討など関連事業の拡大を進めていく方針です。
資本提携・業務提携の流れ
資本提携・業務提携それぞれ違いはありますが、基本的な流れは同じです。
まず提携を進めるにあたって一番重要なのは、何を目的として資本提携を行うのかを明確化することです。現状の課題や今後の目標などを再度洗い出し、どういった企業と提携すべきかをイメージすることで、実効性のある資本・業務提携に繋がります。
資本・業務提携を行う目的を明確化することができれば、実際に提携企業を探します。その際、自社の弱みや補ってくれる企業や、強みをさらに伸ばすことができる企業など、シナジー効果を得やすい提携企業を探します。
候補先が見つかったら、資本・業務提携の詳細を擦り合わせていきます。出資比率や取り決め、お互いどこまで協力できるのかを交渉していきます。
そして意見や条件に対し双方合意すれば、契約条項を定めたうえ締結へと進みます。
資本・業務提携は時間と労力を要するため、M&A仲介業者など、専門家を活用することも選択肢の1つとなってくるでしょう。
まとめ
今回は資本・業務提携についてお話させていただきました。M&Aと比較してそれぞれメリット・デメリットはありますが、検討する上では選択肢を多く持っておくことが非常に重要です。船井総研は着手金等は無料、クロージングまで一切費用が掛かりませんので、お気軽にご相談ください。店舗M&Aを含む事業譲渡から株式譲渡・資本業務提携まで幅広くご対応させていただきます。
船井総研では、50年以上にわたる業種別コンサルティングの経験を活かした、M&A 成立後の業績向上・企業の発展にコミットするM&Aを目指しております。業種専門の経営コンサルタントとM&A専門のコンサルタントがタッグを組み、最適な成長戦略を描きます。