事業譲渡を用いたM&Aとは?事業譲渡のメリット・デメリットと具体的な手続きについて解説
- M&Aコンサルティングレポート
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事業譲渡を用いたM&Aとは
中小企業におけるM&Aは株式譲渡によって行われるのが一般的ですが、今回は事業譲渡について簡単に説明させて頂きます。株式譲渡は会社全体を譲り渡すことになりますが、それに対して、事業譲渡は会社ではなく特定の事業を対象として譲渡します。事業を譲り受ける側(買い手)としては必要な事業(人材・資産)のみを取得することができます。
会社法21条1には、「事業を譲渡した会社(以下この章において「譲渡会社」という。)は、当事者の別段の意思表示がない限り、同一の市町村(特別区を含むものとし、地方自治法(昭和22年法律第67号)第252条の19第1項 の指定都市にあっては、区又は総合区。以下この項において同じ。)の区域内及びこれに隣接する市町村の区域内においては、その事業を譲渡した日から20年間は、同一の事業を行ってはならない。」とあり、譲渡会社には競業避止義務が発生します。
事業譲渡のメリット
譲受側(買い手側)
・希望する事業だけを選択して譲り受けることができる
・対象事業の資産・負債を特定して承継するため簿外債務、未払残業代などのリスクを回避することができる
・細かな調査を行う必要が無いのでデューデリジェンスの期間・コストを削減しやすくなる、のれん代を損金計上することができる(5年間の均等償却)
譲渡側(売り手側)
・会社を存続させ、譲渡対価として成長資金を得ることができる
・譲渡対象とする事業(残したい事業)を選択することができる
・ノンコア事業の譲渡により主力事業に集中することができる
例えば複数店舗を展開する飲食チェーンが不採算店舗を売り、好業績店のみを残す場合にも事業譲渡を活用することができます。
事業譲渡のデメリット
譲受側(買い手側)
・手続きが煩雑になる
・株式譲渡と比較した場合に税負担が大きくなる
・許認可取得の必要性
・事業運営に不可欠な人材の流出リスク
例えば、許認可は一般的に法人に付与されるため、事業譲渡により主体となる法人が変わったとしても許認可は売り手に残ったままになります。従って、許認可が必要な事業における事業譲渡の場合には、事業を譲り受けた側が許認可を取得する必要があります。
従業員の雇用契約もすべて巻き直しになるため、譲り受ける事業の運営上不可欠な優秀な人材の流出リスクがあるということもデメリットとして考えられます。
また、譲り受ける事業の資産について、消費税課税資産が含まれる場合は、消費税が発生する他、不動産取得税、登録免許税などが発生します。
譲渡側(売り手側)
・株式を譲渡するわけではないので株主個人に現金が入るわけではない(法人にお金が入る)
・株式譲渡の対価に対する税率(20.315%)よりも事業譲渡の対価にかかる税率(34%)の方が高くなる
・法人に入った事業譲渡の対価を株主個人に給与・配当などで事業譲渡の対価を戻す際にも税金が発生する
・譲渡対象とする事業について個別の資産・負債を特定する作業や様々な既存契約の移転手続きが発生する
・譲渡益に対する税金が発生する
・株式譲渡と比較して、最終契約書締結まで時間を要する場合がある
例えば、取引先が数千社あったり、従業員数が数千人いる場合は、契約書(取引契約・雇用契約等)をいったん解除して契約し直す必要があるので譲り渡す側も譲り受ける側も工数負担が大きくなります。また、原則として株主総会特別決議が必要になるため大企業が事業譲渡を行う際には大きな負担となります。
事業譲渡における、最終契約書締結までの流れ
事業譲渡の大まかな流れは以下の通りです。
1:譲渡対象とする事業を決定する
2:譲り受け対象先(買い手)を探す
3:トップ面談を行う
4:譲り受け側(買い手)から意向表明書を受け取り、基本合意契約を締結する
5:譲り受け側(買い手)はデューデリジェンスを行い譲渡条件を調整する
6:事業譲渡契約書の締結・対価の支払・資産・権利移転等の手続きを行う
事業譲渡に際する金額(対価)の計算
上記の①において、譲渡対象とする事業を決定する際には、同時に事業譲渡の金額(譲渡対象事業の対価)も大まかに決めておくと良いでしょう。譲渡対象事業の金額は、大まかに、譲渡対象事業の時価純資産にのれん代を合算したものになります。のれん代は、譲渡対象事業の実質利益の3倍~5倍前後が目安になります。
まとめ
事業譲渡によるM&Aでは、株式譲渡によるM&Aと比較して法的・経営的な達成すべき課題が多いです。したがって手続きもより高度なものになります。事業譲渡を用いてM&Aを行う際にはプロフェッショナルの方々の助言を参考に細心の注意を払って行う必要があります。
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