人事デュー・デリジェンス(人事DD)とは
- M&Aコンサルティングレポート
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人事デュー・デリジェンス(人事DD)とは
人事デュー・デリジェンスとは、M&Aを検討している買い側候補が、買収対象先の所属人材、組織体制、人事制度を分析・調査し、内在するリスクやコストの実態を明らかにするためのプロセスです。
所属する人材の年齢や報酬、保有資格などの把握、どのような組織体制で経営されているか、また、運用されている人事制度、管理や評価の仕組みなどを把握し、経営統合をスムーズに進めるためのリスクを把握し、準備を事前に進めていくことを目的に行います。
人事デュー・デリジェンス(人事DD)の流れ
人事・デュー・デリジェンスは大きく3つのプロセスに分かれます。
第一ステップ:デュー・デリジェンスの事前準備
人事デュー・デリジェンスの実施にあたり、仮設課題の設定などを行いながら、調査方針、調査範囲の設定、調査方法の検討を行います。
どういった資料を提出してもらうのか?どこまで調査するのか?ヒアリングは誰に対して実施するのか?など、事前に調べておくべきことをまとめて売手企業に伝え、資料等の提出を依頼します。
第二ステップ:デュー・デリジェンスの実施
事前準備に基づき、提出してもらった資料を精査し、事前に立てた仮説課題に対しての検証を実施します。
就業規則や雇用契約書の内容を確認し、法令違反となるようなことがないか、勤務実態が法令違反となることはないかなどや、給与の支払い状況や退職金の支給、福利厚生の内容などを分析し、リスク要因となるものを洗い出します。
第三ステップ:結果報告と内容の検討
人事デュー・デリジェンスの実施の結果をまとめ、買い手候補先に報告します。
現状の課題やリスクとなりえる部分の報告はもちろんのこと、経営統合後をスムーズに行うための現状の体制から変更すべき点の提案なども行い、M&A実行を判断するうえでの総合的な提案を行います。
人事デュー・デリジェンス(人事DD)の必要性
人事デュー・デリジェンスをする必要性として、人事制度や組織体制というのは、組織ごとに個別性が高く、実態を把握しないまま経営統合後に買収先の体制に合わせてしまうことで、人材の流出を招くリスクがあります。
特に特定の資格保有者や、事業運営上重要な役割を担う人材の流出は企業価値そのものの減少につながる可能性があります。
できるだけ買収時の環境に近い人材体制で経営統合後も運営できるようにするためには、人事デュー・デリジェンスは必須プロセスと言える項目です。
人事デュー・デリジェンス(人事DD)の目的
先述の通り、人事デュー・デリジェンスを実施する目的は、M&Aにあたり人財、組織、人事のリスクを把握し、経営統合をスムーズに行うために行います。
近年では残業代のトラブルなど雇用にまつわる労使トラブルも増加しており、無用なリスクを抱えないようにするためにも重要です。
人事デュー・デリジェンス(人事DD)の対象
人事デュー・デリジェンスの対象は幅広く、経営陣に対する人事デュー・デリジェンスもあれば、従業員の労働時間や給与支払いに関するもの、組織体制や人事制度など幅広い内容で行われます。
また、同じく行われる労務や法務、財務のデュー・デリジェンスと重なる部分もあり、総合的な視点と判断で行われるものです。
同業他社の事例や過去のM&A事例などをもとに、発生しうる可能性のあるリスク要因をあらかじめ仮説立案し、想定されるリスクの発生可能性を調査するということもポイントとなります。
人事デュー・デリジェンス(人事DD)の注意点
人事デュー・デリジェンスの注意点として、資料で分かる点は専門家が精査することである程度リスクとなる部分の把握をすることはできますが、組織文化的な部分はヒアリングなどで把握することも必要となることがあります。
経営統合をスムーズに進めるためにも、過度な負担がかからないようにすることや悪い印象を持たれないように進めることが大切です。
また、デュー・デリジェンスは細かく実施できることに越したことはないですが、その分コストも増大していきますので、必要なリスクヘッジの一つとして考え、コストの許容範囲内で実施することも注していただく部分になります。
新卒入社から約10年間、税理士・会計事務所業界に特化した経営コンサルティングに従事。
その後支援先企業の組織拡大に合わせて、組織・人財採用に課題がシフトしたのに合わせて、人財領域の専門コンサルタントとして、税理士・会計事務所業界以外の業界にも対応し、多岐にわたる業界の支援を担当する。
その後、企業の成長支援の一環としてのM&Aの支援業務を行っている。
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