クロスボーダーM&Aとは? メリット・デメリットと事例を解説
- M&Aコンサルティングレポート
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クロスボーダーM&Aとは
「クロスボーダー」という言葉には「国境を超えた」という意味があります。クロスボーダーM&Aとは、端的に言えば国境を跨いだM&Aのことです。一般的には売り手企業若しくは買い手企業の一方が海外企業である場合のM&AをクロスボーダーM&Aと称します。近年ではクロスボーダーM&Aは増加傾向にあり、中堅・中小企業によるクロスボーダーM&Aも増加傾向にあります。
M&A取引の形態
クロスボーダーM&Aには2種類の形態が存在します。国内企業が海外企業を買収するM&Aの形態=「IN-OUT」と、海外企業が国内企業を買収するM&Aの形態=「OUT-IN」です。実際に日本で増加傾向にあるのは前者のIN-OUTであり、ベンチャー企業などが市場が縮小している日本市場に加え、海外市場に進出することを目的としています。(国内企業が国内企業を買収するM&Aの形態は「IN-IN」と呼称されます。
クロスボーダーM&Aで用いられる特徴的な取引手法
クロスボーダーM&Aでは通常の国内間M&A(IN-IN)とは異なる手法(スキーム)で取引が行われます。以下ではその代表的な手法である「三角合併」と「LBO」を詳しく解説します。
三角合併
三角合併は親会社(買い手企業)が別会社(売り手企業)を買収するにあたって、子会社(買い手企業)を設立し、そこに別会社(売り手企業)を吸収合併させる形の手法です。クロスボーダーM&Aにおいては、買い手企業のある国に自社の完全子会社(法人)を設立し、売り手企業を買収します。
LBO(レバレッジドバイアウト)
LBO(レバレッジドバイアウト)とは、買い手企業が売り手企業を買収するにあたって、その資金に関して、売り手企業の信用力や資産を担保に金融機関から融資を受ける買収手法です。
クロスボーダーM&Aの成功事例
ソフトバンクグループによるARM買収
2016年にソフトバンクグループはイギリス半導体設計大手のARMを買収しました。買収金額の240ポンドのうち、167ポンドを手元資金、73ポンドをローンにて買収しました。
クロスボーダーM&Aのメリット
グローバル化
少子高齢化や人口減少によって日本市場全体は縮小傾向にあります。そこで、自社の製品・サービスを日本市場のみならず、成長している海外市場にて展開することでグローバルな市場で自社を成長させることができます。
生産コスト削減
逆に、既に海外に展開をしているが海外に拠点を持っていない日本企業にとって、海外に生産拠点を持つことは生産コストの削減に直結します。また、原材料や人件費の観点から生産を行うのに最適な国にて生産を行うことで生産コストの削減を図ることもできます。
クロスボーダーM&Aのデメリット
人的問題
クロスボーダーM&Aが実現することによって、海外拠点で人的問題が発生する可能性があります。当然、買収した企業の人員整理などを行うにあたって日本企業とは異なった問題が生じてきます。特に教育や研修の部分では現地の人物にあった方法が求められます。
地理的問題
地理的問題によって日本にある本社と海外にある拠点での画一性が保てなくなる可能性があります。国内に存在する完全子会社であれば本社の意向を即座に反映させることができますが、地理的問題が生じることによって経営陣が海外現地の状況を把握できていなかったり、逆に海外拠点が本社の決定に従わないという状況が発生する可能性があります。
政治的問題
海外に進出するということは、その国の政治的リスクを孕んでいる可能性があります。日本では合法であったことでも海外では宗教的観点から違法であったり、政治の不安定によって日系企業が不買運動を受けたりすることもあります。また、紛争や戦争が起こった場合は海外拠点も物理的な被害を被る場合もあるため、日本にある本社が常に拠点のある国の状況を把握しておく必要があります。
クロスボーダーM&Aを成功させるポイント
クロスボーダーM&Aは通常のM&Aと違い「法的・文化的・政治的」に様々な障壁があり、IN-IN取引よりも難易度が高いです。クロスボーダーM&Aを実施するにあたってはそのポイントと要点を抑えて実施する必要があります。
リサーチを入念に行う
先述した通り、海外に拠点を持つということはその国の状況を様々な観点から把握しておく必要があります。もちろんM&Aを実施する前の段階においても、当該(売り手)企業の経営的状況だけではなく、自社の製品・サービスと現地(海外)の文化との整合性、宗教との親和性、政治の状況等を入念にリサーチし、買収後のトラブルを回避する必要があります。
クロスボーダーM&Aの実績の強い仲介会社を選択する
日系企業のクロスボーダーM&Aの実施数は近年増加傾向にありますが、クロスボーダーM&Aの仲介経験のあるM&A事業者は多いというわけではありません。クロスボーダーM&Aの経験の薄い仲介事業者よりも経験のある事業者に依頼することで、様々な観点からのアドバイスをもらうことができます。
まとめ
近年の日本ではクロスボーダーM&Aは、今後の会社の成長のための選択肢の1つとして認識されるようになってきています。特に少子高齢化の影響で市場が縮小している日本にとって海外へ進出することは自社の製品・サービスをグローバルに展開できる1つの選択肢です。クロスボーダーM&Aは多数のメリットがある反面、多くのリスクを抱えていることも事実です。自社の将来のビジョンや既存の製品・サービスと当該企業(売り手企業)や現地との整合性をIN-IN(国内企業同士でのM&A)よりも考慮する必要があり、そのためには徹底的なリサーチが不可欠と言えます。
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