譲渡をご検討中の方 買収をご検討中の方

M&Aの前さばき

  • M&Aコンサルティングレポート
M&A

一般的にM&A関連でお会いする会社は、売り手も買い手も比較的業績が好調な会社が多いものですが、売り手が業績不振で再生が必要な企業の場合は、M&A前に再生のステージが必要となります。

再生がある程度できて軌道に乗った会社でないと、なかなか買い手がつかないという現実があります。

過去にお手伝いした例では、破たん寸前の地方のスーパーマーケットチェーンの再生をお手伝いした案件が記憶に残っています。

銀行さんから相談をうけて訪問しましたら、店はどこも腐りきっていました。我々が視察に来ることを伝えたら、在庫のボリュームを出すために賞味期限切れの商品をわざわざ売場に並べていたほどで、バターの外箱に油が浮いている始末。

ある店で鮮魚のチーフにお話をお伺いしようとしましたら、険しい目つきで「おまえら何しに来たんだ!会社を潰しに来たのか!」と怒鳴られる始末でした。欠品も常態化しており、やる気なく投げやりになっているのが売場に表れています。

何から何までどうしようもない。

当然売上も低迷し、このまま何もしなければ破たんせざるを得ない状況でした。

そこに外部からやる気のある経営者が来てくれました。この社長はスーパー業界に明るかったわけではないですが、毎日朝2時に起きて鮮魚の仕入れに同行してバイヤーの背中を押し、昼は店に行き、夜は遅くまで会社に残っていました。

ほんとうに、いったいいつ寝ているのか?いつ休んでいるのか?と思えるほど、執念深く熱意をもって取り組まれていました。

現場もそういうトップの姿を見て、部長クラスが先頭に立って売場で頑張ってくれるようになりました。

当方は専門家として、主に営業面での施策推進をお手伝いしました。朝市の開催、週別に重点販売商品を定めて売場展開、鮮魚を売り切り販売にチェンジ、主要商品の価格やSKUの見直し、などなど、それが出来ているスーパーでは当たり前のことばかりを、きちんと現場で展開できるようにお手伝いしてゆきました。

弊社の専門コンサルタントが商品・価格・売場・POPなどをすぐ実行できるように具体的に提案しました。

売場は見る見る良くなってゆきます。当然資金などないため改装工事などは一切おこなっていません。売り上げは見た目の改善ほどすぐには伸びませんでしたが、着実に上昇してきました。

半年ほどたって再生が軌道にのってきたある日、店舗訪問をしましたら、例の毒づいてきた鮮魚のチーフが、それまで見たこともないような笑顔で「先週は過去最高売上を記録したんですよ!」と嬉しそうに語ってくれました。こちらも、いろいろな作戦が成功したとはいえ、「たった半年で人はこうまで変わるものか」と驚きました。

再生スタートから1年以上たち、金融機関の了解も得られ、この会社は新たなるスポンサーを見出して、その傘下企業となってゆきました。1年少々のお付き合いでしたが、これだけ短期間に建て直しができたのも、関係者のやる気のたまものだったと思います。

同時に営業政策がことごとくハマったことも幸いでした。

M&Aは一つの節目になりますが、よいM&Aのクロージングに持ってゆくためには、売り手企業が軌道に乗って安定してこなければなりません。中小企業の企業再生は「べき論」では何も動かず、個別具体的に商品や価格や売り方を変革してゆかねばなりません。

ご紹介した事例は、船井総研が長年培ってきた現場実行ノウハウがうまく生かせた好例ではないかと思います。

PAGETOP