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建設業における2022年のM&A動向の振り返り

  • 建設業 M&Aレポート
建設 M&A

M&A件数の動向

建設業界における2022年のM&Aの動向についてお伝えさせて頂きます。まずは全業種のM&A件数の推移から。新型コロナウイルスの影響はM&Aにどのような影響を及ぼしているのでしょうか。それを把握するため、レコフM&Aデータベースをもとに傾向を見てみましょう。2022年のM&A件数は4304件でした(データ種別をM&A、検索期間を2022年1月1日~2022年12月31日と設定した際の件数データ)

【M&A件数の成長率への影響】

日本で初めて新型コロナウイルス感染症の感染者が確認されたのは2020年1月のことです。その前後でM&A件数の変化を見てみたいと思います。2018年から2019年にかけて日本のM&A件数は前年比106.2%で推移していますが、2020年のM&Aは件数は前年と前々年を下回っています
2022年2月24日のロシアのウクライナに侵攻、資材の物価高などが企業業績にも影響し、2021年から2022年にかけてのM&A件数の伸びも鈍化しています。
もう少し定量的に見てみましょう。2021年のM&A件数が新型コロナウイルス感染症や、ウクライナ情勢、物価高等の影響を全く受けなかったとした場合、つまり
2018年から2019年のM&A件数の伸び率(106.2%)を維持したと仮定して2022年のM&A件数を計算すると4,894件になり、約600件程度の減少インパクトがあったという見方もできるでしょう。

建設・土木業界の動向

【建設・土木業界の市場規模推移】

2018年以降の建設・土木の全体の市場規模(出来高)は、全体(民間・公共の合計)としては大きな変動はなく、52兆円前後で推移しています。
市場規模全体としては大きな変動はありませんが、民間工事と公共工事で分けて見ると、新型コロナウイルス感染症の影響を受けている時期が異なっているように見えます。
民間工事は2020年の前年比が93.6%となっている一方で、公共工事は2022年の前年比が94.6%となっており、後者は最近になって出来高が減少する傾向となっています。

【建設・土木業界のM&A件数推移】

続いて建設・土木業界のM&A件数の推移について見てみましょう。2018年から2021年にかけての建設・土木業界のM&A件数は、CAGR(年平均成長率)+12.7%で推移してきました。しかしながら、2021年から2022年にかけてはほぼ横ばいの推移となっています。新型コロナウイルス感染症やウクライナ問題の解消、世界経済の回復が進めばM&A件数も増加基調に戻ると思います。2022年は183件でした。(データ種別をM&A、検索期間を2022年1月1日~2022年12月31日と設定し、業界を建設と設定した際の件数データ)

建設・土木業界のM&Aのパターン

2022年の振り返りとして、我々が全国の社長と面談を繰り返し、直接お聞きした話や、実際にM&Aのお手伝いさせて頂いた案件から、建設・土木業界のM&Aの傾向をまとめさせて頂きたいと思います。

【売り手社長の年齢】

数年前までは、事業承継・M&Aをご検討される経営者の方々の年齢は60代、70代が多かったのですが、最近は明らかに若年化する傾向にあります。特に、50代前半で株を譲り渡すことをご検討されるケースが増えてきています。事業承継・M&Aという言葉の浸透と共に、抵抗感が薄れつつあるのと、様々な事業リスクに対する早期対応の意識や大手企業との資本提携による成長戦略への興味などが影響していると言えるでしょう。

【M&A後の売り手社長のポジション】

ケースバイケースではありますが、売り手の社長は株を手放された後もそのまま社長を継続して経営手腕を発揮して頂くケースが増えています。この背景としては、業種や規模を問わず、人材不足の状態が続いているのと、急激な企業風土の変化による予期せぬトラブルを避けたいという買い手側の意向などがあります。

【M&Aのパターン】

建設・土木業界のM&Aのパターンは、

(1)バリューチェーンの一気通貫型
(2)工事対象となる構造物の多様化型
(3)工事範囲の多様化型

の3つに分けることができます。

(1)の中では意外と解体業者、廃棄物処理業者の譲り受けを希望されるケースが増えています。環境意識の高まりや、新規でこれらの業務を行うとなると行政手続きの面で制約があるためです。

(2)は公共工事と民間工事で得意領域が棲み分けされているケースが多いため、商圏内でそれぞれの需要を獲得するという狙いがあるようです。

(3)は、分離発注から自社施工・多能工化への切り替えによる効率化を目的としたパターンになります。
その他、異業種間でのM&Aも無い訳ではありませんが、建設・土木事業とかけ離れた親和性の無い事業に興味を持たれるケースは少なく、経験の無い事業を収益化することは難しいため、あまりオススメはできません。

【買い手の傾向】

買い手の傾向も見ておきましょう。下記のバブルチャートは直近決算の売上高が100億円以上の企業で建設・土木事業を手掛ける会社の中から、主力事業が建設・土木事業である企業を除外して分析したものです。やや複雑な説明になりましたが、図を見て頂くと分かりやすいと思います。
例えば、グラフの右上に、「建設・土木資材販売(卸)」とありますが、簡単に言うと、建設・土木資材の製造・販売を主力事業としている企業群(メーカー・商社等)が、建設・土木事業(工事業)も手掛けているケースが多いということです。同様に、主力事業が、「電気工事業」、「不動産」の会社で、かつ、建設・土木事業を手掛けている会社も多い状況です。
同業の建設・土木会社はもちろん、主力事業が「建設・土木資材販売(卸)」、「電気工事業」、「不動産」といった企業群も”有力な買い手”となるということです。

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