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解体工事業界の2023年時流予測と解体工事業界におけるM&Aの活用方法

  • 建設業 M&Aレポート
解体業 M&A

解体工事業界の2023年時流予測ならびに、それを踏まえたM&Aの活用方法について、記載をさせて頂きます。

昨今、解体工事に着目したテレビ番組が放送され、建築と逆の工程を行うだけの解体ではなく、最先端の技術を駆使した解体は、安心・安全だけではなく、美しくもあるということで、注目を浴びている業界でもあります。

壊すだけだから誰でもできるというものではなく、解体工事事業を行うには、建設業許可または解体工事業登録が必要になり、そのためには、一定の資格・経験を有した「人材(ヒト)」を確保する必要があり、人的要件の確保に係るコスト負担は、他の業界などと比較した場合、相当大きなものとなっています。

また、当該業界においても、DXや重機のテクノロジー化を含む解体技術の革新が、日進月歩で進んでおり、「人材(ヒト)」と「技術」が問われる業界となってきているものと思われます。

業界としては、少子高齢化が進むことでの空き家の増加、高度経済成長期に建築された建物・インフラの老朽化・頻発する大型災害等により、解体工事に対する需要は高まりを見せており、国土交通省の推計によれば、解体工事件数は今後5年程度増加すると想定されています。

ただ、業界構造としては、「人材(ヒト)」の採用難・高齢化が進み、人手不足・人件費高騰が顕著な業界であるにも関わらず、現在は中小企業に猶予を与えられている働き方改革関連法への対応も、2024年3月末までには必要となってくることから、人手不足への対応と、働き方改革・生産性アップの同時進行を求められ、更なる人的要件の確保に係るコスト増は、避けては通れない状況になってきています。 さらに、特に下請解体工事業者の過当競争、産業廃棄物処分費の高騰等、利益逼迫要因は今後ますます増えることが予測され、中堅企業・中小企業における経営環境はさらに厳しさを増すものと思われます。

このような中、大手事業者においては、人材確保のため、採用の強化、女性の積極的登用等、また長く安心して働くことが出来る環境整備のため、教育プログラムの整備、ナレッジマネジメント等を推進しています。

またさらに、サーキュラーエコノミー(循環型経済)の一環として、適切な解体工事と廃棄物処理を徹底し、資源の循環再生を効率的に行うため、自社単体でDX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組むような事例が増えています。

具体的には、ロボットの活用による、一部工程の無人化やヒトとロボットの協働での施工、AIの活用による積算業務、紙の設計図面を3D化など、DXを実践することで、「脱属人化」「一元管理」「見える化」を実現できるか否かが、経営において重要なポイントとなることが予測されます。

また、自社単体での取り組みに加えて、他社との協業を企図した「M&A」も頻繁に行われており、2023年においては、この流れがますます強くなるものと想定しております。

これまで、一般的にM&Aにおいては、「垂直統合」として、事業の川上から川下まで、全ての事業を内製化するためのM&Aや、「水平統合」として、事業エリア等を拡大させることを第一の目的としたM&Aが主流でした。

その中でも、解体工事業界においては、これらの垂直・水平統合に加えて、「人材(ヒト)」にフォーカスし、有資格者・経験者を囲い込むことを目的としたM&Aが多く行われ、さらに今後は、その「人材(ヒト)」という部分が、「DX」分野や、「先進技術」分野に着目した上で「人材(ヒト)・技術」の囲い込み、さらには「脱炭素」や「SDGs」というような時流適応を、主要な目的とするようなM&Aが増えてくると想定しております。

例えば、2021年10月に公表されたベステラ株式会社が、株式会社矢澤を買収した事例では、プラント解体業界のリーディングカンパニーであり、東証プライム上場のベステラ社が、アスベスト対策、ダイオキシン対策等の有害物質、環境汚染対策工事に対して特殊な工事技術を提供し、大手ゼネコンに対して豊富な工事実績を有する矢澤社を子会社化しています。

当該M&Aにおいては、2022年4月のアスベスト関連法改正に伴い、建築物等の解体工事におけるアスベスト飛散防止対策の強化が求められるなか、アスベスト対策、ダイオキシン対策等の環境を考慮した特殊工事に対する高度な「技術」を獲得することで、両社のシナジー効果を目指す目的があったものと思われます。

よく事業には、「導入期」「成長期」「成熟期」「移行期」「安定期」のライフサイクルがあるとよく言われますが、そのライフサイクルに応じて、M&Aにおける取引環境・市場環境も大きく変化するものであり、一般的には以下のような環境変化で推移すると言われています。

「導入期」は、ベンチャー期として、業績・実績ではなく、ビジネスモデル、技術などに着目

「成長期」は、売手有利のM&Aが進みやすく、高い株価での取引が成立することが多い

「成熟期」は、中堅大手による中小企業買収など、買手主導・買手有利のM&Aが進む

「移行期」は、中堅大手の再編が進み、業界再編として動き出す

「安定期」は、業界再編が一巡し、業界内M&Aが終了、再編後に残った企業で業界が安定推移

このようなライフサイクルにおいて、解体工事業界は、現在「成長期」であるかと思われますが、一部の動きとしては、「成熟期」を見据えたM&Aが進んでいるものと思われます。

今後は、市場拡大も終盤を迎え、一般的な解体事業だけでは高い評価をすることが難しくなり、持続可能な成長が見込めるような人員体制・取引基盤・特殊技術等を有する解体事業者だけが選択されるような状況が進むと想定されます。

このように、M&Aと「時流」には、密接な関係があり、実際の「企業価値評価」「株価」「取引価格」等にも大きな影響を与えるものであります。

ビジネスの寿命がショートタームになってきている昨今、自分たちのビジネスが、ライフサイクルのどこに位置しているのか、また自分たちのビジネスが時流の中で、どのようなポジションを担っているのかを把握することが、日常のビジネス運営はもとより、M&Aの実行の判断でも、今後ますます重要になってきます。

M&Aがあらゆる企業の戦略の一つの重要な常套手段となっており、自社の成長戦略のため、また成長の為の時間を買うという観点から、M&Aというものを改めて検討するひとつのきっかけにして頂ければと考えます

下記の解体工事業界2023年時流予測レポートも合わせてご覧ください。

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