企業の跡継ぎは銀行?
- 事業承継
株式会社帝国データバンクによる全国企業「休廃業・解散」動向調査によると、新型コロナウイルス感染拡大に対する各種支援で抑制傾向ではあるものの、全国で56,000社以上の企業が休廃業・解散に陥っています。
2020年は、新型コロナウイルス感染拡大、緊急事態宣言発令などで、国内の経済活動が急激に縮小したうえに、好調だったインバウンド景気の消滅により、「休廃業・解散」に陥った企業が増加しました。経済の担い手である中小企業にとって、従来より見られた「後継者問題」は解決されない状況ですが、「業績悪化&後継者不在」が、2021年以降、「休廃業・解散」への「引き金」になると想定されます。
これまでの国の政策を振り返ると、中小企業の「後継者不在」という問題を解決にむけて、2011年度からスタートした各都道府県における「事業引継ぎ支援センター」の設置や、事業承継税制の特例措置により、中小企業の事業承継支援が推進されてきました。
また、中小企業の「業績悪化」という問題を解決するため、2003年より各都道府県に「中小企業再生支援協議会」が設置され、年間1,800件程の事業再生支援、金融機関との調整を含めた再生計画策定支援などが取り組まれてきました。
しかし、この2つの問題を同時に解決するには、「M&Aのバイヤー(買い手)」という面だけではなく、「再生支援としてのスポンサー」という面を併せ持つパートナーとのマッチングが不可欠です。売り手が黒字企業のM&Aのとき以上に、M&A後の業務改善(事業再生計画の実践、ハンズオンでの再生支援)が重要性を増しています。
これら「再生支援」と「事業承継支援」の両面を担えるパートナーとして、従来はM&Aに戦略的に取り組む事業会社、投資ファンドが主なプレーヤーでした。
これに加えて最近は銀行が「投資専門子会社」を設立し、再生支援/事業承継支援を担うことが増えてきています。
過去、銀行やその子会社は、資金力を有する銀行による業界支配の予防、銀行本体の社会インフラとしての金融機能、決済機能等の経営健全性維持の観点から、事業会社の株式取得について、銀行法で厳しく制限されていました(いわゆる「5%ルール」)。
しかしながら、2019年10月に、銀行法施行規則の改正により、銀行が設立する投資専門子会社は、事業承継支援を目的とする場合に、最長5年間、事業会社の株式を最大100%取得・保有することも可能となりました(いわゆる「5%ルールの適用除外」)。
今後は、銀行単体としての資金の供給による再生支援に加えて、銀行が有する金融ノウハウや、外部パートナーとのネットワークを活用した、事業会社における中長期目線での事業再構築と成長戦略の推進支援が期待されます。
中小企業の事業承継としての跡継ぎ先、再生企業のスポンサーが「銀行」という事例は、今後ますます増加してくるものと思われます。
—
(注記1)「休廃業・解散」とは、倒産(法的整理)によるものを除き、特段の手続きを取らずに企業活動が停止した状態の確認(休廃業)、もしくは商業登記等で解散(但し「みなし解散」を除く)を確認した企業の総称を指します。
税務監査・財務コンサルティングの業務経験に加え、事業承継・事業再生コンサルティングの成功経験を多く持つ。2017年10月に船井総研中途入社後、M&Aコンサルティングにより22件の案件成約を担当。 現在、船井総研における事業承継・M&Aコンサルティングの中核的な役割を担う。
中野 宏俊の紹介ページはこちら 船井総研のM&Aの特徴とM&Aに関する解説ページはこちら