M&Aの進め方【6】(M&Aの実施フロー①基本合意)
- M&Aの進め方
M&Aの実施フローは、以下の3工程に分ける事が出来ます。
1. 一次検討(情報開示・意向表明・基本合意)
2. 二次検討(DD・契約)
3. クロージング手続(手続・クロージング)
今回は1次検討の要となる、「意向表明」と「基本合意」について触れてみたいと思います。
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「意向表明」とは
開示情報による検討の結果、「意向あり」の場合、買手から売手に提出される代表印付き書面の事で、以下の項目を書面に明記するのが一般的です。
<意向表明書の記載事項>
・実施の目的・譲渡対象・想定スキーム・譲渡対価・資金調達の方法・従業員の処遇
・その他希望条件・窓口担当者および連絡先
<添付資料>
・会社案内(または決算書)
なお、表明について、法的には口頭でも効力を持ちますが、やはり書面にて表明する方が間違いはありません。
また、売手は、意向表明書の受理後、一定期間の内に書面にて相手方へ回答を通知する事が必要です。回答を保留し続ける事は信義則に反する行為であり、その後の他社交渉で思わぬ落とし穴となるリスクを秘めています。よって、一定期間内に書面回答する必要があります。
基本合意書(LOI)とは
意向表明書に合意の場合は「基本合意書(LOI)」の締結に進む事となります。基本合意書とは、一般条項に関する合意事項が列記された書面となりますが、その後の2次検討(買収監査)の結果で変更の可能性が残りますので完全条項とは言えません。但し、基本合意に至った開示情報の質・量や決定プロセスにより、法的拘束力を伴う場合もあります。また、合理的理由を伴わない変更(不合理に価格を下げる行為など)もペナルティーとなる場合があります。
なお、基本合意書締結の注意点として「細部の決定にこだわりすぎて前に進まない」事が挙げられます。細部の決定は2次検討(買収監査)後に締結する本契約で押さえれば問題はなく、基本合意書の段階では、要となる重要事項の決定を意識した方が良いでしょう。
2次検討(買収監査)の結果による変更の可能性や細部の決定を残しながらも、今後大きな齟齬が出ない様、円滑に基本合意書の取りまとめが出来るかは、アドバイザーの腕の見せ所といったところではないでしょうか。
独占交渉権の付与
基本合意締結に至った場合、一般的には相手方に独占交渉権を与える事となります。独占交渉権の有効期間内は他社との一切の交渉が出来ない事となります。その主な理由は、その後の2次検討(買収監査)実施が相手方に時間的拘束や費用負担を強いる側面があるからです。
「弁護士や会計士等の外部専門家の費用をかけながら精査していたにも関わらず、他社と水面下で交渉されていた」なんて事をされたら買手にとってはたまりません。よって、独占交渉権を与える事となりますが、他方、基本合意を締結するとは、「相手方で内定した」事を意味しますので、意向表明書への検討は重要と言えます。
船井総研入社後は専門サービス業の経営コンサルティング部門の統括責任者として多数のM&Aを経験。現在は、M&A部門の統括責任者をつとめる。買って終わり、売って終わりではなく、M&A後の企業成長を実現するマッチングに定評がある。過去経営支援を行ってきた企業は200を超える。
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