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クリニック・医療業界M&Aの動向(時流)・今後について

  • 医療・介護 M&Aレポート

本コラムでは、クリニック・医療M&Aの動向・今後についてお伝え致します。

医療業界の動向とM&A傾向

近年のM&Aの理由として「高齢化」「後継者不在」が挙げられます。医療業界においても医師全体の中で60歳以上は28.1%となっており、診療所だけでは51.5%と過半数を超える医師が60歳以上を迎えています。全国の診療所の高齢化が進んでおり、事業承継の課題を抱える診療所が増加傾向になっています。また承継者も誰でもいいわけではありません。医療法により後継者には「医師であること」が求められます。そのため、下記のような理由で承継を希望したタイミングでも適切な後継者が出てくるとは限りません。

✓医師(院長)が高齢・体調不良となり診療の継続が困難となった。

✓子供が医師にならない、医師となっても帰ってこなかった。

✓診療報酬の改定の影響を受けた。

✓経営難でも地域医療貢献のため閉院が難しいケース。

✓建物の大規模修繕の予定や機械の大幅な入れ替えなど承継する子供に金銭的に大きな負担となるケース。

後継者(親族)が医師以外の進路を選択した場合や、医師でも別場所で開業・勤務医として継がないケースがあります。また、親族外の医師を後継者として採用・育成することが難しいケースや、医師ではなく一経営者としての素質など複数の理由から第三者への譲渡を検討されています。

近年、M&A件数も増加傾向にあり、第三者へ譲渡した場合の条件調整も柔軟になってきています。引き続き診療を続け地域医療へ貢献されるパターンや、アーリーリタイヤを選択される方など様々な方がいらっしゃいます。

医療業界M&A:事業承継課題の着手が遅れた場合のリスク

上記で述べた承継課題ですが、とても重要性が高いものの緊急性が低いとして課題解決のための着手が遅れる院長先生もいらっしゃいます。なぜ事業承継の課題を「今」考える必要があるのか、リスクを4つ挙げます。

例えば「5年後」に何が課題として起こりうるのか、自院の将来を見据えて承継の時間軸を考える必要があります。

1.ドクターやスタッフの高齢化により、積極的な事業投資が進まない。

2.成長とともに事業価値が増加し、承継時の税負担が増える。

3.取引先が事業承継することで、自院担当者との年齢差により自院のドクター・スタッフとの波長がかみ合わない。

4.病気などの急な院長のリタイヤにより、後継者や患者に負担がかかる。

医療業界M&A:スキームの選択と評価方法について

実際にM&Aを進める際に個人事業か、医療法人によって譲渡方法が異なります。

譲渡を行う際のスキームについて

✓持分譲渡…持分あり医療法人に適用。許認可の承継が可能。内部留保を退職金として充てる方法も可能。

事業譲渡…施設のみ譲受を行う。持分なし医療法人や個人事業主の場合に適用。行政届け出関連書類、賃貸借契約、従業員の雇用契約など全ての契約のまき直しが必要。

それでは、譲渡対価の計算方法についてまとめたものが下記の内容となります。

✓持分譲渡

ネットキャッシュ(現預金同等物-負債)+EBITDA(営業利益+正常収益力)3倍前後※診療科目・立地によってはEBITDA倍率が変動します。

事業譲渡

事業譲渡では、企業価値=事業用資産+営業権を指します。

※事業用資産とは、決算書上にある医療用機器含む文字通りの事業を行う上で必要な資産です。一方、非事業用資産とは、会員権など私的なもの含め事業を運営する上で譲受側が必要としないものになります。

その際に参考値としてお考えいただきたいのは、今、手にできるものと将来発生しうるコストとのバランスです。

例えば、今、売却すると現金が手に入ることと、院長として給与をもらい続けた場合など「手にする現金の価値とタイミング」を重視しがちですが、M&Aではなく閉院にも手間と時間がかかることを検討材料の一つとしてご検討ください。

例として、廃業時の設備・建物を撤収するにも原状回復費用がかかること、院長の高齢化に伴って患者の年齢層も高齢になり自然減による財務状況へ影響が出ることなどから決定を後倒しにするほど選べる選択肢が少なってしまうためタイミングを慎重に見極めることが重要です。

医療業界M&A後の対応について

双方との相談で詳細条件を定めていきますが、常勤ではなく非常勤として診察に携わるなど譲受後のライフプランは多様です。

こうして譲渡側・譲受側の二人三脚のもと、患者さん、スタッフとの関係構築を図る条件調整など、ご希望の条件からご相談にのって進めて参ります。M&Aを検討される際は、ぜひ船井総研までお申し付けください。

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