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医療・介護 M&Aレポート

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歯科診療所のM&A動向について

歯科診療所のM&A動向について

  • 医療・介護 M&Aレポート
歯医者 M&A

歯科診療所のM&Aの動向について解説します。

歯科診療所の現状

近年、歯科診療所の経営は厳しいという意見を多く聞きます。厚生労働省の調査データ「令和3(2021)年医療施設(動態)調査・病院報告の概況」によれば、令和3年10月1日現在における全国の歯科診療所は67,899施設あり、対して全国のコンビニの件数が約57,000件であることを踏まえると、競合状況は厳しいと言えるでしょう。とはいえ、理事長の高齢化問題や後継者不足による閉院の増加、働き方の多様化による勤務医・非常勤志望の歯科医師の増加、歯学部定員削減等もあり、歯科診療所の前年対比増加件数は25施設に留まっています。一般的な歯科診療所の診療圏は500mと言われます。日本の地域社会における高齢化はますます進むことから、地域単位で見れば、過剰と言われる競合状態が供給不足に転じる場所もあるでしょう。また、それらを見越して分院開設やM&Aによる買収を通じて成長戦略を進める歯科グループもあり、歯科業界における再編はさらに加速していくものと予想されます。

歯科診療所のM&Aについて

厚生労働省によれば、歯科診療所の開設者は約76%が個人、約22%が医療法人、残り2%が市町村等その他となっており、圧倒的に個人開業医が多い状況にあります。個人と法人では手法が大きく異なる為、売却相場の目安、スキームが異なってきます。それらを次に大別しますので、参考にして頂ければ幸いです。

【個人開業医の場合】

手法:事業譲渡

相場:譲渡資産の時価(主に不動産+医療機器) + EBITDA×0.5年~1.5年

M&A成功のポイント

適正な譲渡価格を知る

歯科医師個人の技術力に依存する自由診療は評価されない

患者の引き継ぎ期間を設ける(特に訪問歯科診療)

〇豆知識…EBITDAとは?

EBITDAとは、本業で稼ぐ力を示す指標で、投資家が企業の稼ぐ力を評価する投資尺度の一つとして利用します。一般的には『税引き前利益+支払利息+減価償却費』で計算され、いわゆる年間を通じて稼いだ金(キャッシュ)を表します。M&Aでは頻繁に使われる指標です。

以下、M&A成功のポイントを解説します。

適正な譲渡価格を知る

個人開業医が第三者に承継を行う場合、クリニックの固定資産(主に土地建物や内装などの不動産や医療機器)を時価譲渡することになります。この時価譲渡額を基礎として、これに本業で稼ぎ出す力(EBITDA)を「営業権」とみなし、その「営業権」の0.5~1.5年程度を上乗せして、譲渡価格とするケースが通例です。したがって、非常に簡易な言い方をしてしまうと、クリニックや医療機器が新しければ価格に有利で、収益面は黒字が良い、これに尽きます。ともすれば、業歴を有する歯科医様からは、診療所は古いが長く地域医療を支えてきた!稼いできた実績もあるのだから、譲渡価格はもっと評価されてしかるべきだ!なんて叱られそうですが、この理屈は買い手には通じません。なぜならば、過去の利益は全て個人に帰属し、買い手には一切引継がれないからです。適正な譲渡価格を意識しましょう。

歯科医師個人の技術力に依存する自由診療は評価されない

個人の高い技術力に依存する医業収益は評価されません。例えば高難易度の矯正歯科治療(インプラント)や特殊な審美歯科治療、小児歯科治療を強みとするクリニックは、ずば抜けた収益力が認められたとしても承継できる買い手はごく一部、したがってM&Aの成約率は低下します。ただし、技術水準が同レベルのクリニックを承継候補とする、後継の歯科医師への技術力承継を目的とした教育期間を十分に設定することなどの対策により、成約率を向上させることは可能です。いずれにせよ、早めの活動が必要となってきます。

患者の引き継ぎ期間を設ける(特に訪問歯科診療)

歯科医師個人と患者の繋がりが強い為、患者の引き継ぎ期間を設定することが有効です。また、訪問歯科診療に力を入れているクリニックにおいては、その訪問ルートの維持、承継後の円滑な治療体制維持が重要ポイントとなることから、しっかりと引き継ぎ期間を設定する必要があります。近年の事例を見ると、特に病院や介護施設などの訪問ルートを抱える歯科クリニックは評価される傾向にあります。

以上が成功ポイントでした。また、他に注意しておかなければならない点としては、クリニックの負債、従業員との雇用契約、患者のカルテなどは原則として引き継がれません。承継において譲渡側(売り手)は診療所廃止届を提出し、譲受側(買い手)は診療所開設許可を新規に取得する必要があり、従業員を引き続き雇用したい場合は新たに雇用契約を結び直すことになります。また、カルテは売り手・買い手間で勝手に受け渡しすることはできないので、行政と相談のうえ対処することになります。

【医療法人の場合】

手法:持分譲渡、事業譲渡、合併

相場:医療法人の純資産額 + EBITDA×0.5年~1.5年

M&A成功のポイント

出資持分あり社団医療法人と出資持分なし社団医療法人で手法が異なる

シナジー効果を明確にする(診療圏拡大、間接コスト削減、人材の流動配置等)

適正な譲渡価格を知る

以下、成功のポイントを解説します。

出資持分あり社団医療法人と出資持分なし社団医療法人で手法が異なる

医療法人は社員の入退社、役員の交代を行うことで、運営するクリニックを含む法人全体の資産、負債、権利、義務等を包括的に承継することになります。具体的にはクリニックが保有する不動産や医療機器、テナント契約やリース契約、スタッフの雇用契約等全てを承継し、運営を継続します。ただし、ここで問題になってくるのが、医療法人の種類によって選択可能な手法が異なるという点です。

医療法人は大別すると、「財団医療法人」「社団医療法人」に分類されます。社団医療法人はさらに「出資持分あり社団医療法人」「出資持分なし社団医療法人」に分類されます。厚生労働省によれば全医療法人の約99%を社団医療法人が占めていることから、基本的に医療法人のM&Aと言えば、社団医療法人をベースに考えるということでよいかと思います。なお、出資持分あり・なしの手法の違いは、過去コラムにおいて解説しているので、そちらをご覧ください。

>>出資持分ありの医療法人と出資持分無しの医療法人のM&Aの違いを解説

●豆知識…医療法人類型

  • 財団医療法人

個人または法人が寄附・拠出した財産に基づいて設立される。財産そのものを法人とみなす制度であり、大企業の大口寄附により設立された企業名病院などが多い。また同族による寄附の場合は贈与税の課税対象となり、個人資産での設立も税金面において非常にハードルが高く、今後も増加はし難い。全国で約400法人程度。

  • 社団医療法人(出資持分あり)

社団を構成する社員が資金を出資することで設立する。社員はその出資割合に応じた「出資持分」を保有することができ、社員を辞める際や、医療法人が解散する際には、出資持分に応じて医療法人が有する純資産の払い戻しを受けることができた。株式会社の株式にイメージが近いが、2007年4月以降は医療法改正により新規設立はできなくなった。

  • 社団医療法人(出資持分なし)

2007年4月の医療法人改正により、以降に新規設立された社団医療法人は全て「出資持分なし」となる。出資者の財産権が認められておらず、解散時の残余財産などは国等に帰属する。

シナジー効果を明確にする(診療圏拡大、間接コスト削減、人材の流動配置等)

医療法人は個人開業医と比較して規模が大きいケースが多く、承継後の組織運営を意識する必要があります。特に互いのシナジー効果を明確にしておかないと、交渉時に論点が散らばり、成約率が低下する傾向があります。M&Aにおける優先課題は何なのか。それは診療圏拡大による成長戦略なのか、人員確保や人材の流動配置による運営体制の維持が目的なのか。考えはじめるとキリがありませんが時間は有限。優先課題を数点に絞り、それを解決可能なシナジー効果が期待できるかどうかを考えましょう。

適正な譲渡価格を知る

医療法人の純資産額を基礎として、これに本業で稼ぎ出す力(EBITDA)を「営業権」とみなし、その「営業権」の0.5~1.5年程度を上乗せして、譲渡価格とするケースが通例です。個人開業医と比較して、過去の利益が医療法人の純資産額として蓄積され反映されていることから、譲渡価格は高めになることが多いです。

最後に

歯科診療所のM&Aを検討する場合、買い手側は売り手側が希望する譲渡価格と、自身で開業した場合に必要な投資額とを必ず比較します。例えば勤務医が新規開業するケースを考えてみてください。コンビニ跡地の居抜き物件などで投資リスクを抑えれば、投資額はせいぜい20~50百万円程度で収まります。また、医療法人が分院を開業するケースはどうでしょうか。高価な医療機器を設置し、多数のチェアを確保したとして、2~3億円も必要でしょうか。結果としてM&A成約における譲渡価格は、50百万円~1.5億円程度に収束している印象です。

とはいえ、あくまでM&Aはケースバイケース、一概には言えません。いずれにせよ検討の入口は、まずは自院の企業価値算定を行い、譲渡した場合、譲受する場合の具体的なイメージを持つこと。それには多くの事例を扱っている我々、専門家を頼って頂くのがよいかと思います。理事長様が理想とする引退プラン、診療所のさらなる成長戦略、これら検討のお手伝いをしたいと存じます。気軽にご相談頂ければ幸いです。

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