M&Aの進め方【4】(実施スキームの検討その1)
- M&Aの進め方
前回まで3回に渡り、M&Aの活用を検討する際の注意点と価格について触れてきました。
さて、今回より、M&Aを実施する際の実施スキームについて整理したいと思います。
なお、M&Aの実施スキームを考える際に大きく2つの行為に分けて考える事が出来ます。
取引行為のうち、
・株式譲渡は「株式譲渡契約締結後、株式譲渡対価を主に金銭で支払う行為」となります。
・事業譲渡は、「譲渡対象の資産負債契約等を事業譲渡契約書で特定し主に金銭で支払う行為」となります。
いずれの取引行為も時価と簿価の差損益に対する税を認識する必要がありますが、事業譲渡の場合は消費税や不動産移転の場合の不動産取得税および登録免許税を認識する必要があります。
なお、事業譲渡は個別移転が原則なので、対象従業員を引継ぐ場合は個別合意が必要となる事や、許認可の引継ぎが出来ないため新規取得が必要となります。事業譲渡のデメリットとして、移転手続の煩雑さと許認可引継ぎ不可を挙げる事が出来ます
他方、事業譲渡のメリットとして、負債の特定が可能であり簿外債務を引継ぐリスクを回避出来る点を挙げる事が出来ます。
すなわち、事業譲渡は許認可が必要な業種や従業員引継ぎが必要な場合には不向きなスキームと言えます。
次に、組織再編行為とは、会社組織と形態を変更する会社法上の法律行為を意味しますが、その形態として、合併、会社分割、株式交換、株式移転を挙げる事が出来ます。
上述の許認可が絡むケースなどでは、事業譲渡が不可なので、会社分割を活用したM&Aが多く採用されたりしますが、各組織再編行為における許認可の扱いや、債権者・株主保護に関する規定、更には、従業員引継ぎに関する労働契約承継法などの主なポイントについて、次回以降触れていきたいと思います。
船井総研入社後は専門サービス業の経営コンサルティング部門の統括責任者として多数のM&Aを経験。現在は、M&A部門の統括責任者をつとめる。買って終わり、売って終わりではなく、M&A後の企業成長を実現するマッチングに定評がある。過去経営支援を行ってきた企業は200を超える。
光田 卓司の紹介ページはこちら 船井総研のM&Aの特徴とM&Aに関する解説ページはこちら