自社の企業価値の把握の仕方
- 企業価値評価
「自社の企業価値をどう考え、活用するのか」について触れていきたいと思います。
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■会社の企業価値とは
会社の企業価値とは、言うなれば「株価」です。
ただし、親族に承継するときの株価とM&Aの際の株価は、通常大きく差が生じます。
単純にいえば、親族に承継するときには現時点での財産から負債を差し引いたものを株価とするのに対し、M&Aの際は、利益をしっかり出している場合、業界・地域特性を鑑みながら”のれん”の価値が上乗せになるためです。
親族内承継の際の株価 = 会社の財産 - 会社の負債
M&Aの際の株価 = (会社の財産 ― 会社の負債)+ のれん価値
親族内承継では、贈与税・相続税の負担が懸念されますが、M&Aの場合は株式がしっかりお金として手元に残るというのが、売り手にとっての大きなメリットとなるわけです。
一方、買い手にとってM&Aの最大のメリットといえば、「時間を買う」事ができるためです。企業成長のために既にヒト・モノ(知的財産含む)・カネが既に備わっており、一気に成長が期待できるわけで、しっかりと利益を出している会社が売り手であれば、承継時の株価よりも大きく価値が付くわけです。
■のれん価値の算出方法
この”のれん”価値ですが、具体的には営業キャッシュフローに業界相場倍率を掛け合わせ、地域補正を加味したものが一般的な算定根拠となります。
例えば、会社の財産から負債を差し引いた株価を3,000万円、年間営業キャッシュフローが1,000万円、自動車販売業の業界相場倍率が3倍だとします。地域補正としては、名古屋市内を想定し1.2倍とすると、M&A時の株価は
3,000万円+1,000万円×3倍×1.2=6,600万円
となるわけです。
ちなみに、株ではなく一部事業を譲渡する場合は上記の”のれん”価値が相場となります。
業界相場倍率は、成長分野、収益性の高さ、安定性の高さなどから鑑みて変動していきます。当然ですが、譲渡案件が増えれば買い手市場となり、相場が減少傾向となります。
特に業界再編の動きが非常に早い昨今では、今は3倍だけれども半年後は2倍、来年は1倍ということも十分にあり得るため、情報収集をしておくことをお勧めします。
■自社の企業価値を知るために
自社の企業価値をしっかり把握した上で、M&Aをする価値があるのかを検討していただき、この他の諸条件を組み立てていくことが譲渡後のライフプランに大きく影響します。
2004年船井総合研究所に中途入社。以降、成熟産業を中心に事業再生案件に従事。金融円滑化法や金融支援に伴う再生支援実績は40件を超す。M&Aでは3件の法的整理(会社更生法2社・民事再生法1社)に伴うスポンサー募集をはじめ、中規模以上のアドバイザリー業務に従事。不採算事業売却や成熟事業売却などのM&Aを得意とする。一般社団法人日本ターンアラウンド・マネジメント協会準会員。
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