M&Aの進め方【7】(M&Aの実施フロー③法務DDの重要性)
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1. はじめに
前回は、M&Aの実施フロー②として「DD」に触れ、DD(買収監査)の全体像についてご理解を頂けたと思います。
さて、約1カ月程度の期間の中で、相手先の会社や事業を把握するためには、「全体像の把握→個別事項の把握」の流れが必要であると述べましたが、今まで多くのDDを経験した者の私見として、「法務DD」の重要性について述べたいと思います。
2. 法務DDの重要性
DDの重要度について、私見ながら、以下の順位付けがあります。
1.法務DD
2.事業DD
3.財務DD
DDと言えば財務や事業のイメージが強いのですが、私見ながら、まず始めに注意すべきは「法務DD」です。
「法務DD」とは、商取引、不動産、金銭消費などの諸契約の確認に加え、合意や協定、機関決定(株主総会・取締役会)、許認可、労働契約といった事項の精査を示すものですが、想定外の事項にヒットすると、クロージング後に予定していた取り組みが実現出来ない可能性を秘めています。
3. M&Aの失敗例
具体的には、
・引継予定の不動産賃貸借契約が資本変更で不可能と言われ、莫大な保証金を要求された。
・解約予定の商取引先から不当行為で訴えると言われた。
・契約書に明記のない協定が存在しており支出が増えそうだ。
・DDで把握出来ていない密約があった。
これらは、M&A契約後やクロージング後に表面化する事が多く、M&A契約前の事業DDや財務DDで価値算定や事業計画を入念に検討しても一瞬にして「絵にかいた餅」になる可能性を秘めていますし、トラブルや訴訟で無駄な労力を使う事になってしまい折角のM&Aが台無しになってしまいます。
開示された契約書や議事録以外にもヒアリングによる確認も必要であり、契約の引継ぎや解除の重要度が高い案件については、後のM&A契約を含め、弁護士等の法律のプロを入れる必要があるでしょう。
4. 法務DDを行う際に気を付けること
「M&Aは弁護士がやるべきもの」
こちらは弁護士からよく聞かれる言葉ですが、実はあながち間違えでもなく、M&Aに占める法務の役割は事業や財務を超えて重要な部分がある点をお伝えします。
他方、「一から弁護士を入れると費用が心配」という意見もよく聞かれますが、こちらもあながち間違えではありません。弁護士や会計士といった士業専門家を丸投げではなくポイントを絞り上手に使う工夫が必要であると言えます。
船井総研入社後は専門サービス業の経営コンサルティング部門の統括責任者として多数のM&Aを経験。現在は、M&A部門の統括責任者をつとめる。買って終わり、売って終わりではなく、M&A後の企業成長を実現するマッチングに定評がある。過去経営支援を行ってきた企業は200を超える。
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