《スキーム別》自社独自の事業承継
- 事業承継
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1. はじめに
「自社に見合った事業承継の最適な手法、ご検討しましたか?」
これまでの2回のコラムでは、事業承継とはヒト・モノ・カネにおいて細かく最適な対応が求められ7つの項目順に事業承継を進めていく必要があることをご説明しました。
第1回:事業承継にまつわるお金の問題>>
第2回:役員の退職金に関わる課題>>
今回は、自社に見合った事業承継の最適な手法について触れていきます。
2. 承継先ごとのスキーム
事業の承継先としては、主に次の3つに分けられます。
①ご血縁に対しての承継
②会社の経営幹部・従業員に対しての承継
③第三者へ対しての承継
2-1. ご血縁に対しての承継
①のご血縁に対しての承継で、考えやすいスキームとしては、「株式の贈与(相続)」ですが、
この場合、株を贈与する側としては得る対価はなく、さらには株を贈与された側としては額によって税金が発生します。
スムーズに引継ぐことはできそうですが、前回のコラムで触れた「後継者の資質があるかどうか」、また税金に対する資金準備は万全かを確認しておく必要があるでしょう。
稀に後継者の資質を試すために、株を贈与せずに、別会社で実績を出させ、買い取らせるオーナーもいらっしゃいます。
2-2. 会社の経営幹部・従業員に対しての承継
②の会社の経営幹部・従業員に対しての承継で、考えやすいスキームとしては、「株式の譲渡」になります。
会社に関係しているとしても、オーナーからみれば血縁ではない他人のため、基本的には株を譲渡することになります。
ただ経営幹部といってもサラリーマンですので、買取資金を全てもっていることは少なく、個人的に銀行から調達して捻出することになります。そのため、オーナーの希望するような金額はつかず、会社の資産(財産)から負債を差し引いた純資産額が相場取引の基準となることが多くみられます。
オーナーやそのご親族が金額的に納得できるか、後継者が銀行の借金に怖気づくことなく、しっかりと借りることができるかが論点になるでしょう。
2-3. 第三者に対しての承継
③の第三者への承継ですが、後継者がいる場合であっても、明らかに経営者としての資質に欠けている場合や事業の将来のビジョンが描けない場合、「会社の永続的成長・運営」を承継の目的として考えると、そもそもはじめから引き継ぐべきではないケースが多く見受けられます。
このように自社単体での成長が限界を迎えていると判断した場合、事業ビジョンを描ける企業と組むことを一度は検討すべきで、これがいわゆるM&A(第三者承継)となるわけですが、スキームとしては②と一緒で「株式の譲渡」になります。
ただ、②と大きく違う点は株の対価に「事業としての価値」が加算されることです。魅力がある事業の場合は②と比べても大きく金額に差がつきますので、オーナーとしては株の譲渡益を得ることができることになります。
最近では株を売却しつつ、本人または後継者が経営陣(取締役や経営幹部)として残り経営を続けるケースも増えています。
3. スキーム別のメリット・デメリット
これらをまとめると、承継スキームのメリット・デメリットは次のようになります。
まずはこれらの承継スキームを理解して、自社にできる可能性があるものを全て検討しましょう。
この時、企業の永続的発展を主たる目的として考え、その上で他の条件について検討していくことが承継の成功確率を高めます。
ぜひ自社に置き換えて早めのご検討をしてみてはいかがでしょうか。
税務監査・財務コンサルティングの業務経験に加え、事業承継・事業再生コンサルティングの成功経験を多く持つ。2017年10月に船井総研中途入社後、M&Aコンサルティングにより22件の案件成約を担当。 現在、船井総研における事業承継・M&Aコンサルティングの中核的な役割を担う。
中野 宏俊の紹介ページはこちら 船井総研のM&Aの特徴とM&Aに関する解説ページはこちら