ビジネスホテルではなくカプセルホテルのM&Aが狙い目な理由
- ホテル・旅館 M&Aレポート
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1.営業利益1億円/年が見込めるカプセルホテル新規参入成功事例
コロナ禍では地を這うような業績となってしまった宿泊業界。当時の宿泊業界事業社様の心境。及び経営状況は本当に辛い状況であったとお察しします。改めてですが、この場を借りてお見舞い申し上げます。ただ、2023年に入り、宿泊業界は業績が急回復してきました。コロナ禍の業績を経験した方々からすれば「コロナ禍でも営業を続けて本当に良かった」と、明るい兆しを感じておられる方も多いのでは?と思います。「必ず日はまた昇る」「病まない雨はない」という言葉がぴったりハマるのが、ここ数年の宿泊業界の状況だったと察します。
そんな宿泊業界にて、皆様へのご紹介に足ると思える弊社ご支援先の事例があります。コロナ禍は悲惨な業績を辿ったのですが、2023年に入り、業績が非常に好調となっているカプセルホテルの事例です。2023年度は、年間営業利益1億円に迫る勢い。今年に入り、毎月、500~800万円の営業利益が達成されるようになりました。ちなみに、業績好調の主要因と考えられるのは「カプセルホテル」という業態を選択したことに尽きます。ビジネスホテルなど、他の宿泊ビジネス業態を選択していたらこの業績は達成できなかった。そう確信する御支援先です。
それを証明するのは、特に繁忙日の客数。金曜日、土曜日が繁忙日になるのですが、土曜日は売上100万円/日に迫る勢いとなっています。コロナ禍では売上50万円/月未満という月もあったのですが、今は、それも笑い話にできるくらい。特に繁忙日の売上が安定するようになってきたのです。そんなカプセルホテルの御支援を通じて宿泊ビジネスの成功原則を体感しています。
2.宿泊ビジネスの成功原則とは?
繁忙日に売上が見込めるようになった最大の要因は、施設の開発当時に「部屋数150室以上」という原則を意識したから。オペレーション効率や売上獲得の効率を考えると、やはり、一定数以上の部屋数は絶対に必要です。ただ、無人化でオペレーション効率を高め、少ない部屋数でも利益を出せる宿泊ビジネス業態もあります。DX時流に適応する時代の寵児のような新業態もあります。ただ、それでも「部屋数150室以上」というのは古今東西変わらない宿泊ビジネスの成功原則と感じます。
そして、「部屋数150室以上」を確保する際に、必要となるのが一定数の延べ床面積です。例えば、ビジネスホテル業態で一定数の部屋数を確保するには、延べ床面積で1200~1500坪が必要と言われています。ただ、延べ床面積で1200~1500坪を確保するとなると、敷地面積も容積率もかなりの規模が必要です。確保できる物件に巡り合う確率は非常に低いと思います。ただ、カプセルホテル業態で「部屋数150室以上」を確保するには、延べ床面積で300坪程度あれば大丈夫。延べ床面積400坪もあれば、コンビニ等や小規模カフェ等のテナントが誘致できるくらいのゆったりした造りの施設を開発することができます。もちろん、価値の高い一階部分はほぼ不要。エレベーターがあればフロントが上位階や地下にあっても問題ないです。
そして、オペレーション効率においてもカプセルホテル業態は圧倒的に有利です。ちなみに、私が関わっているご支援先のカプセルホテル業態(「部屋数150室以上」)においては、150万円/月程度の人件費で運営されています。「部屋数150室以上」のビジネスホテルにおいて、この人件費で運営するのは非常に難しいのでは?人手不足という慢性的な経営課題においても、その一助となるのがカプセルホテル業態です。
3.2023年以降、伸び代しかない宿泊業界のビジネスチャンスを獲得するために
コロナ禍からアフターコロナに。出張やスポーツ観戦、コンサートなどの活動が元通りとなり、加えてインバウンドの大幅増加が見込める中、宿泊業界は伸び代しかないとも言われています。もちろん、経営ですから、誰もが簡単に成功する訳ではないのですが、追い風が吹く業界であるのは間違いないでしょう。その追い風を上手く獲得するには、下記の二点が有効と思います。
その1→休業中のカプセルホテル物件をM&Aで取得
アフターコロナになっても休業が続くカプセルホテル物件はいくつもあります。コロナ禍の悲惨な業績を経験した事業社が慎重になる経営判断であったり、人手不足もその要因です。ただ、もしも、皆様が、休業中のカプセルホテルをM&Aで取得できる機会があれば、非常にチャンスと思います。
その2→収益不動産ビルを事業譲渡した後、空きフロアをカプセルホテル業態にリノベーション
また、収益不動産ビル事業において、テナントが埋まりにくい上位階層などをカプセルホテル業態にリノベーションする案も有効です。単純な賃料ビジネスのみでは収益性が見込みにくい案件であっても、一部をカプセルホテル業態にすることで収益性を高めることが可能になります。収益不動産ビルの物件獲得において、ライバルの他社よりも有利な経済条件を提示できるようになるかと思います。
また、カプセルホテル業態は工夫次第でローコストに仕上げることができることのできる業態です。私が新規開発から関わったご支援先とは「1億円以上は総工費を下げることができた」と振り返っています。撤退の経営判断も比較的選択し易い業態です。
4.世の中に求められている業種・業態とは?
船井総研では、古今東西、「誰もやりたがらない」業態こそ、次の時代の先頭集団を走るビジネスになる可能性が高いと注目しています。カプセルホテル業態のような簡易宿泊業態ビジネスは、特に高額所得者には宿泊経験も利用する用事もない業態で、積極的に参入する気持ちにはなりにくいかもしれません。ただ、これからの円安時流、インバウンド。宿泊需要の回復といった時流に適応する業態としてご注目いただければとも思います。
1996年に新卒で船井総合研究所に入社。1998年よりパチンコ業界のコンサルティングに従事。2019年にパチンコ法人のM&A仲介案件に初めて関わり、その後、パチンコ法人向けM&Aコンサルティングに従事している。著書『マルハンはなぜトップ企業になったか』
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