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住宅・不動産・賃貸管理 M&Aコラム

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不動産仲介業界(売買)において成功するM&Aのポイント

不動産仲介業界(売買)において成功するM&Aのポイント

  • 住宅・不動産・賃貸管理 M&Aコラム

不動産仲介業(売買)を経営されているオーナー経営者向けの記事です。船井総研は不動産仲介業界(売買)において、長らくコンサルティング活動を実践してきました経験から、今回不動産仲介業界(売買)の動向や、M&Aのメリット・デメリット、そしてM&Aを考え始めた際にオーナー経営者が押さえておくべきポイントを、解説させて頂いています。M&Aが活発化している不動産仲介業界(売買)において、その背景はどうなっていて、成長する企業はどのようなM&A戦略を描き、実践しているのか、そのヒントを見つける機会になれば幸いです。

①不動産仲介業界の動向

不動産仲介業界(売買)は、コロナショックによる一時の取引件数の減少はあったが、金融取引システムへの直接のダメージが少ないことが特徴的で、大きくな減少は見られていません。しかし、コロナ禍での影響から、海外部材工場の閉鎖、ウッドショックの影響から、新築物件建築が減少し、売却件数も多少減少した関係で、市場に並ぶ不動産物件が減った状態になり、需要過多になると、価格が高騰するエリアも出てきています。
コロナ状況にもよるが、暮らし方の変化は、ますます意識があがり、テレワークスペースをもった郊外型住居への移住は続くとみられ、その需要も多様化していき、ニーズに合わせた不動産物件の供給を準備するべきと言えるでしょう。
結果的には、今まで以上に、新築・中古ともに、物件仕入れの強化、また物件の商品の差別化を求められる傾向があり、買い手主導での仲介では、取引件数を伸ばしきれない状況になります。売却物件受託の専門部門を構築し、より特化した販促・営業活動が必要とされる。もちろん、分譲・建売住宅の企画、中古物件の買取再生など、自社独自の売り物件ラインナップをそろえていく必要性が、益々増していきます。
そういった、業務の多様性、専門性を進めるにあたって、社内業務の効率化、デジタル化への推進も、必要不可欠になり、成熟化した不動産仲介業において、大都市圏からの大手企業や、地域ごとでの中堅一番店企業の台頭が顕著になり、業界再編の動きもみられています。

②不動産仲介業界のM&Aにおけるメリット・デメリット

不動産仲介業界の買い手企業は、基本的には不動産仲介業界、また関連業界の大手、また地域一番企業がメインです。基本的には組織化された企業のため、そこにグループインすることで下記のようなメリットが期待できます。

・事業戦略、環境の強化
⇒大手・中堅企業の場合、ガバナンスやコンプライアンスが徹底されているケースが多いため、独力では対応しきれない管理面のサポートを得られる可能性があります。当然、強い資本・ブランド力にて、今まで以上に不動産売却・購入顧客への販促・営業力の強化や、また人材の確保、効率化・デジタル化への対応も、新たな親会社主導で進められ事業戦略、事業環境の改善、ひいては企業収益力の改善にもつながっていきます。

・後継者問題の解決
⇒不動産仲介業において、もっとも深刻な問題が、後継者不在です。親族への承継、社員・従業員への承継者が不在の場合、第三者への承継(M&A)で株式の処理を行うことができます。昨今、動き始めるタイミングが遅くなり、価値下落の中での廃業となることも増えていますので、早めの判断での、後継者問題の解決は、メリットは大きいです。

一方、良い事だけではなく、下記のようなデメリットも想定されます。
・希望通りの譲受企業が見つからないリスクがあります。不動産仲介業の場合、固定客があるわけではなく、常に新規での不動産仲介取引による、売上計上となり、今までの事業戦略による強みが感じられない場合に、予想外での価値評価になって、譲渡条件が折り合わなかったりする事もあります。

・また経営ビジョンが異なったりするなど、自身の希望に沿う企業が出てこない場合や、M&Aの交渉において、様々なやり取りを通して、疲弊困憊することもあります。予想できることですが、意思の硬さと精神力が肝要です。

③不動産仲介業界のM&A手法

不動産仲介業における、M&Aの手法は複数ありますが、その中で多く(7~8割)を占めているのが株式譲渡です。これは不動産仲介業界のM&Aも、例外ではなく、株式譲渡スキームが大半を占めています。
株式譲渡とは、対象会社の法人格は原則変わらず、株式(及び付帯資産)を譲渡することで新たな株主に経営権を譲渡するスキームです。今までの株主が、経営者として一定期間残るケースもあり、今までの事業戦略はそのままにして、従業員の雇用形態や、取引先と契約関係などもそのままで、いわゆる株主の立場だけが変更となります。手続きが簡易というメリットがある一方、買い手にとっては簿外負債等のリスクも引き受けることになるデメリットもあります。
株式譲渡に次いで多いのが事業譲渡です。こちらは会社の資産、契約、従業員雇用等を一つ一つ譲渡するといったスキームです。株式譲渡とことなり、資産の所有権、契約関係、従業員雇用関係は当然には引き継がれず、一つ一つ確認して譲渡しなければならないため、手続きが煩雑です。一方で、買い手としては簿外債務等の引き受けリスクを軽減することができますし、売り手にとっても例えば他の事業がある場合などは、不動産仲介事業だけ譲渡するといった切り売りができるというメリットもあります。

④不動産仲介業界におけるM&Aの特徴

買い手企業の場合

⇒大きく2つに分かれます。
一つは、同業での大手、また地域の一番店企業です。新たな商圏拡大や、地域シェアを上げる事で、より自社の成長拡大を目指すシンプルな理由です。同じ事業戦略で、短期間で手間なく、不動産仲介件数・売上を拡大する事ができます。
もう一つは、関連業界にて、地域の中堅以上の住宅建築会社などが挙げられます。住宅建築会社にとって、土地、中古住宅・マンションの仲介を強化し、自社の総合住まい産業としての展望を実現させようとする狙いです。
いずれも、建築・不動産業界の再編禍の中での、成長戦略になります。企業成長には、その事業における市場拡大に合わせて、自社のシェア拡大が基本とされてきましたが、今の成熟した日本の経済状況禍では、手段としてM&Aが重要視されてきています。

売り手企業の場合

⇒不動産仲介業では、圧倒的に後継者問題です。順調に経営を続けていたが、次の適材の承継者がいない場合に、価値のある状態のうちに、希望する買い手企業に対して売却し、第二の人生設計を立てるというものです。業務の特性から、親族が今後の経営承継を受け入れない場合も出てきています。
昨今は、経営者ご自身が55歳を超えるあたりから次なる継承を考えはじめ、60歳を超えた辺りに何かしらのきっかけ(家族状況、経営状況、体調など)より、現実的にM&Aを選ばれるというケースが非常に多くなっています。
ただし、不動産仲介業における創業社長の傾向としては、営業バリバリで、会社を引っ張ってきた意識より、その時期が後手後手になってしまう方々も多くみられ、後々の企業価値に大きく影響を及ぼす場合もあります。
不動産仲介業での売却の実例を多くみてきましたが、今現在の状況にもよりますが、今すぐ売らないとしても、出来ることからすぐに何か行動を起こすことをお勧め致します。仮に売却しなくても、企業を永続させるうえで不可欠です。逆に、これが出来ないようでしたら、独力での企業経営が困難な状況にあるという一つの物差しにもなると思います。

⑤不動産仲介業界のM&A相場

中小企業M&Aにおける代表的な株価算定方法としては、「時価純資産法(年買法)」と「マルチプル法」という2つがございます。それぞれの計算方法や、不動産仲介業界における相場は以下です。

1)時価純資産法(年買法)。時価換算した総資産(簿外資産含む)から、時価換算した負債(簿外負債含む)を差し引き算出された時価純資産を株価とする考え方です。対象会社の業績によっては、そこに営業利益などの「のれん」を上乗せするケースもあり、この算出方法を「年買法」といいます。

2)マルチプル法。償却前営業利益の3~5倍から正味有利子負債(有利子負債-現預金等)を差し引き算出された額を株価とする考え方です。先述の時価純資産法が「資産」をベースとした算出方法に対し、「キャッシュ」をベースとした算出方法となります。「3~5倍」という数字については会社ごとに異なりますが、不動産仲介業界においては平均3~5倍程度となります。ここから、対象会社の強み(独自のビジネスモデル等)や弱み(反響集客・契約状況等)を踏まえ、倍率を増やしたり減らしたりし価額を交渉することとなります。

コロナ禍から、M&Aが活発化している不動産仲介業界において、その背景から、改めて買い手・売り手企業は、どのようなM&A戦略を描き、実践しているのか、考える機会にしてみてください。

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