不動産仲介業界(売買)におけるM&Aのメリット・デメリット
- 住宅・リフォーム M&Aレポート
不動産仲介業界は、IT化の進展、競争の激化、顧客ニーズの多様化など、かつてない変化の波に晒されています。こうした環境下において、M&Aは企業の成長戦略、あるいは事業承継の有効な手段として、ますます重要性を増しているといえるでしょう。
本コラムでは、不動産仲介業界(売買)におけるM&Aのメリット・リスクを、譲渡(売り主)側と譲受(買い主)側の両方の視点から解説し、M&Aを成功に導くためのポイントをお伝えしていきます。
コンテンツ
1. 不動産仲介業界におけるM&Aの現状と背景
不動産仲介業界では、近年、中小企業を中心にM&Aが活発化しており、その背景には以下の要因が挙げられます。
・後継者不足
経営者の高齢化や後継者不足により、事業承継を目的としたM&Aが増加しています。少子高齢化の影響は不動産仲介業界にも及んでおり、後継者問題を抱える企業は少なくありません。一般的に事業承継先としては①親族承継、②従業員承継、③第三者承継(M&A)が挙げられますが、親族・従業員への承継は、相続税や贈与税に配慮した承継が求められます。そのため、現株主が譲渡の対価として得る金額は第三者承継(M&A)と比較して、低くなる可能性が高くなります。また、承継先の相手も対価を準備する必要があるため、個人で対応できる額には限界があるといえます。後継者問題を抱え、事業承継をご検討の方は、一度専門家へご相談されることをお勧めします。船井総合研究所では、無料で経営相談を行っており、企業価値査定や、後継先別のメリット・デメリット等をお伝えさせていただきます。
後継者不足は、不動産仲介業界に限った話ではありません。しかし、不動産仲介業は、地域密着型のビジネスモデルであることが多く、長年培ってきた顧客との信頼関係や地域における評判が、事業の成功に大きく影響します。そのため、後継者不足によって事業が中断してしまうと、顧客や地域社会に大きな損失を与える可能性があります。このような状況下で、M&Aは、事業を継続し、顧客や地域社会への影響を最小限に抑えるための有効な手段として注目されています。M&Aによって、後継者問題を抱える企業は、事業をスムーズに承継し、既存の顧客や従業員を守りながら、新たな成長を追求することができます。
以下、株式の承継先として一般的に考えられる3つ方法を簡単にまとめています。
①親族(特にご子息、ご子女)への承継は後継者として第一に検討されるかと思われますが、昨今では親族(特にご子息、ご子女)自身が既に別の会社・事業で活躍され、承継を考えていないケースや、まだ幼いために承継を考えられないケースが増えています。
②従業員への承継は、株式の対価を従業員が準備しなければならないため、従業員自身やそのご家族が反対されるケースが考えられます。いずれにしても承継を検討している相手方とよく話し合っておかなければなりません。
③第三者承継(M&A)は、後継者不足を解消し、円滑な事業承継を実現するための有効な手段となります。不動産仲介業界において、M&Aによる事業承継は、企業の存続と発展を担保する上で、重要な選択肢の一つとなっています。親族承継、従業員承継と比較すると、M&A後に関係者から理解を得にくい選択ではありますが、譲渡先との事前協議、譲渡先の雰囲気・スタンス等によっては、関係者から喜ばれる企業成長・制度改善等が見受けられることもあります。そのため、M&Aを選択される際は譲渡先の選定を慎重に行うことが重要となります。
・競争激化
大手企業や異業種からの参入により、競争が激化し、生き残りをかけてM&Aを選択する企業も増えています。従来、不動産仲介業界は、地域密着型の企業が多く、事業対象エリアの中においては比較的競争が穏やかな業界といえました。しかし、近年では、大手企業や異業種からの参入が相次ぎ、競争環境は激化しています。
例えば、IT企業は、AIやビッグデータなどを活用した不動産テックサービスを展開することで、顧客体験の向上や業務効率化を図っています。また、金融機関は、住宅ローンや不動産投資などの金融サービスと連携することで、顧客基盤の拡大を図っています。このような競争の激化の中で、中小企業が生き残っていくためには、規模の拡大や経営基盤の強化が不可欠です。M&Aによって、中小企業は、大手企業の資本や経営ノウハウを活用することで、競争力を強化することができます。また、異業種とのM&Aによって、新たなビジネスモデルを創出し、市場における優位性を確立することも可能となります。不動産仲介業界におけるM&Aは、競争の激化を生き抜くための有効な手段として、その重要性を増しています。
・IT化への対応
不動産テックの進化に対応するため、IT投資やシステム導入を目的としたM&Aが増加しています。AI、VR、ビッグデータなどを活用した不動産テックサービスが次々と登場し、顧客体験の向上や業務効率化が求められています。不動産仲介業界におけるIT化は、顧客サービスの向上、業務効率化、競争力強化のために不可欠です。しかし、IT投資には多額の費用がかかり、中小企業にとっては大きな負担となります。また、IT人材の確保も容易ではありません。そこで、M&Aによって、IT企業を買収したり、ITに強い企業と提携したりすることで、必要な技術やノウハウを迅速に獲得し、IT化・業務効率化を推進する企業が増えています。M&Aにより大手・地域一番店のグループに入り、必要な技術やノウハウを迅速に獲得し、IT化・効率化に対応していくことが生き残っていくポイントとなります。
2. 売り手側のメリット・リスク
M&Aは、譲渡企業にとっても、買い手企業にとっても、メリットとリスクが存在します。M&Aを検討する際には、それぞれのメリット・リスクを理解しておくことが重要です。
メリット
・事業承継
前述の通り、後継者不足を解消し、円滑な事業承継を実現することができます。M&Aによって、長年培ってきた事業を存続させることができ、従業員の雇用も維持することができます。これは、不動産仲介業界において、譲渡を検討する企業にとって、大きなメリットと言えるでしょう。不動産仲介業は、地域社会に密着した事業であるため、事業承継によって、地域経済への貢献を継続することができます。また、従業員の雇用を維持することで、地域社会の安定にも貢献することができます。
・従業員の雇用維持
M&Aによって、従業員の雇用を維持することができます。特に、後継者不足で廃業を検討している企業にとって、従業員の雇用維持は大きなメリットとなります。雇用の維持だけでなく、大手・地域一番店のブランド・採用力の活用による人材確保、さらには給与水準の改善等も考えられます。不動産仲介業界は人材が重要な資産であるため、譲渡によって従業員の雇用が維持されることは、企業にとって大きな安心材料となります。また、従業員の雇用が維持されることは、従業員にとっても、生活の安定やキャリアの継続という点で大きなメリットとなります。
・経営資源の活用
買い手企業の経営資源を活用することで、事業の成長を加速させることができます。資金力、人材、ノウハウ、ブランド力など、買い手企業の経営資源を活用することで、既存事業の拡大や効率化、新規事業展開も可能となります。M&Aによって、譲渡企業は、これまで自社だけでは実現できなかった事業成長を追求することができます。例えば、資金力のある買い手企業の支援を受けることで、新たな店舗展開やIT投資を行うことができます。また、人材やノウハウの共有によって、業務効率化や顧客サービスの向上を図ることもできます。
・創業者利益の確保
創業者は、M&Aによって株式を売却することで、創業者利益を確保することができます。長年の経営努力の成果を、M&Aによって現金化することができるため、大きなメリットといえるでしょう。親族承継や従業員承継の場合は、相手方が捻出できる金額まで株価を落とす必要があるため、譲渡対価という点では第三者承継(M&A)が最もメリットを感じられるといえます。
・個人保証の解消
中小企業においては、企業の負債(借入)を株主個人が保証しているケースが多くみられます。第三者承継(M&A)により、個人保証を外すことができるため、保証リスクを抱えている株主にとって大きなメリットとなります。特に不動産会社の場合は、物件購入のため大きな借り入れをしている会社も多く、個人保証がついている場合は、第三者承継(M&A)を検討されることをお勧めします。
リスク
・経営権の喪失
M&Aにより株主が変わるため、経営権を失う可能性があります。これは、譲渡企業の経営者にとって、大きなリスクと言えるでしょう。しかし、譲受側も社長職を務める人員を即座に用意するのは困難であるため、売主にそのまま経営を継続してほしいと希望することがよく見受けられます。当然ご引退を前提にM&Aを行う売主もいらっしゃいますが、その場合でも1年~3年程度は引継ぎとして経営に関わることが多く、譲渡と同時に関係を完全に断つことは現実出来ではないといえます。譲渡相手先と事前によく話し合い、M&Aを実行することが重要といえるでしょう。経営者として継続する場合には、前述したように個人保証が外れるため、精神的負担を軽減した上で経営を継続できるのは、メリットともいえるでしょう。
M&A後の経営体制については、事前に買い手企業と十分に協議し、合意しておくことが重要です。また、M&A契約書に、経営権の維持に関する条項を盛り込むことも有効です。
・従業員の反発
M&Aに対する従業員の反発や不安が生じる可能性があります。2つの会社が資本提携を行う以上、全関係者から完全に理解を得ることは難しいと言わざるを得ません。企業文化の違いや雇用不安などから、従業員のモチベーションが低下する可能性が考えられます。しかし、譲渡側と譲受側が協力して説明をし、理解を得ようとすることはM&A後の円滑な事業継続においてポイントとなるため、事前に双方でよく話し合うことが重要です。譲渡企業は、M&Aによって従業員に不安や不満が生じないよう、丁寧な説明とコミュニケーションを心がける必要があります。また、従業員の意見を聞き取り、不安や不満を解消するための対策を講じることも重要です。
・時間と費用の発生
M&Aには、時間と費用がかかります。交渉、デューデリジェンスの対応、契約締結、PMIなど、M&Aのプロセスには、多くの時間と費用を要します。当事者同士でM&Aを進めてしまうと情報漏洩のリスクや交渉の過程でのリスク等が発生する可能性が高くなります。M&Aをご検討する際には、専門家へご相談されることをお勧めします。
3. 買い手側のメリット・リスク
メリット
・事業拡大
買い手はM&Aにより、営業地域や顧客基盤の拡大、自社グループサービスの拡充が実現されます。また新たな地域への進出や、売り手が抱えている顧客への自社サービスの提供により、事業規模を拡大することができます。M&Aをした場合と、自ら新規出店・事業進出をした場合とをコスト面・手続き面等で比較検討し、普段からグループ戦略の一つとしてM&Aを選択肢に入れておくことが重要となり、グループ内の事業ポートフォリオの構成を検討する際には、M&Aを視野に入れておくべきだといえます。特に不動産仲介業界では、地域密着型の事業展開を行う企業が多いため、M&Aによる事業拡大は、効率的な成長戦略となります。
M&Aによって、買い手企業は、短期間で事業規模を拡大することができます。また、譲渡企業の顧客基盤やノウハウを活用することで、新規事業の立ち上げや既存事業の強化を図ることもできます。
・人材獲得
優秀な人材を獲得し、組織力を強化することができます。特に、不動産仲介業では、人材が重要な経営資源となるため、M&Aによって経験豊富な人材や特異なスキルを持つ人材を獲得することができます。自社で採用・組織構築を進めるよりも、既に組織として成り立っている会社をグループに入れた方が、コスト面で優位に立つ可能性が高いことは言うまでもありません。不動産仲介業においては、顧客との信頼関係が重要な要素となるため、優秀な人材の確保は、事業の成功に不可欠です。M&Aによって、経験豊富な従業員や地域に精通した従業員を獲得することで、顧客満足度を高め、競争力を強化することができます。
・ノウハウ・技術の取得
M&Aにより、新たなノウハウや技術を取得することができます。例えば、不動産テック企業を買収することで、最新のIT技術やノウハウを導入することができます。中小企業の中には、特別なノウハウやスキル、仕入・販売ルート等を持つ会社があるため、M&Aによってグループ全体の事業優位性を高めることができます。また、M&Aによるシナジー効果も期待することができます。両社の強みを組み合わせることで、新たな顧客層の開拓や新サービスの開発など、自社単体では参入・進出が困難だった分野への事業展開が可能となります。
リスク
・買収コストの負担
M&Aには、多額の買収コストが発生します。買収価格、デューデリジェンス費用、統合費用など、M&Aには多額の資金が必要となります。特に不動産仲介業は毎年の収益が見込みにくい側面があるため、買収価格の評価は慎重に行う必要があります。買収コストを抑制するためには、M&Aの目的を明確化し、買収対象企業を慎重に選定することが重要です。また、デューデリジェンスを徹底することで、買収後のリスクを最小限に抑えることも重要です。
・PMIの難しさ
買収後の統合プロセス(PMI)がスムーズに進まない可能性は否定できません。企業文化の違う会社がグループに入るため、企業風土や社内の雰囲気、人事評価制度や社内システムの運用方法等、PMIには様々な課題が伴います。買い手として高圧的な態度や上から目線での対応をしてしまうと、売り手従業員から強い反感を受ける可能性が高く、M&A後の収益にまで影響を及ぼす可能性が高くなります。そのため、M&Aおいて売り手と買い手に優劣がないことを理解し、共に売り手企業の収益を安定・成長させていくことを意識しなければなりません。PMIを成功させるためには、譲渡企業と買い手企業の双方が、文化や価値観の違いを理解し、尊重することが重要です。また、従業員間のコミュニケーションを促進し、一体感を醸成するための取り組みも重要です。
・隠れた負債のリスク
買収先企業に隠れた負債があるリスクがあります。特に中小企業においては簿外債務の可能性が高くなりやすい傾向にあります。そういったリスクを回避するためには、デューデリジェンスを徹底することで、隠れた負債のリスクを顕在化させ、株式譲渡契約書等で明示しておくことが重要です。デューデリジェンスは費用はかかりますが、M&Aに慣れた専門家へ依頼することをお勧めします。
4. 不動産仲介業界特有のM&Aのポイント
・顧客情報の取り扱い
不動産仲介業は、顧客の個人情報や取引情報を多く保有しています。M&Aにおいては、個人情報保護法を遵守し、顧客情報の安全管理を徹底する必要があります。M&Aの過程で、顧客情報は適切に管理されなければならないため、買い手企業は、譲渡企業から顧客情報を受け取る際には、個人情報保護法に基づいた手続きを踏む必要があります。また、M&A後も、顧客情報の安全管理体制を維持することが重要です。
・従業員の引き止め・維持
優秀な従業員の引き止め・維持は、M&A後の事業継続において重要な課題です。不動産仲介業において従業員(営業マン)は、売上構成を支える重要な要素となるのが一般的です。離職や業務意欲の低下を防止するために、給与や福利厚生などの処遇を改善したり、M&A後のキャリアパスを明確に示したりすることで、従業員のモチベーションを維持する必要があります。また、企業理念やビジョンを共有し、一体感を醸成することも重要です。特に、従業員はM&A後の処遇に不安を抱えることが多いため、人事評価制度・キャリアパスの提示、従業員の能力開発やキャリアアップの支援を明確にすることが重要となります。またM&A後すぐに処遇を変更するのは得策とはいえません。
M&Aによって、従業員の雇用環境や待遇が変わる可能性があります。従業員の不安を解消し、優秀な人材の流出を防ぐためには、M&A前に、従業員に対してM&Aの目的や今後の展望について丁寧に説明することが重要です。また、M&A後も、従業員とのコミュニケーションを密に取り、不安や不満を解消するための対策を講じる必要があります。
・地域特性への配慮
不動産仲介業は、地域密着型のビジネスのため、M&Aにおいては、地域特性への配慮が重要となります。対象地域の不動産市場や顧客ニーズを把握し、地域社会との連携を強化することが、円滑な事業統合を進めることができます。そのためにも前述したように、地域特性に精通している従業員の確保、モチベーションの維持は重要なポイントとなります。
具体的には、以下の点に注意する必要があります。
・地域特有の商習慣や慣習を尊重する。
・地域住民との良好な関係を構築する。
・地域貢献活動に積極的に参加する。
これらの点に配慮することで、M&A後の地域社会における信頼関係を維持し、円滑な事業統合を進めることができます。
・デューデリジェンスの重要性
不動産仲介業に限らず、M&Aではデューデリジェンスが重要となります。デューデリジェンスとは、買収対象企業の財務状況、法務状況、事業状況などを調査し、リスクを洗い出す作業を指します。不動産仲介業界では、特に以下の項目について、デューデリジェンスを徹底する必要があります。
・財務デューデリジェンス:財務諸表の分析、収益性・安全性・成長性の評価、簿外債務の有無などを調査する。
・法務デューデリジェンス:契約書の確認、許認可の状況、訴訟リスクなどを調査する。
・事業デューデリジェンス:事業計画の妥当性、競争環境、市場動向などを調査する。
・労務デューデリジェンス:従業員のスキル、人材構成、労務管理などを調査する。
・不動産デューデリジェンス:取引物件の権利関係、法令上の制限、環境リスクなどを調査する。
・ITデューデリジェンス:ITシステムのセキュリティ対策、データ管理体制などを調査する。
デューデリジェンスを徹底することで、M&A後のトラブルを未然に防ぎ、M&Aを成功に導くことができます。
5. M&Aを成功に導くためのポイント
・明確なM&A戦略の策定
M&Aを成功させるためには、まず、M&Aの目的を明確化し、それに基づいた戦略を策定することが重要です。目標とする市場規模、顧客層、事業領域などを明確に定義し、M&Aを通じてどのようなシナジー効果を生み出すのかを具体的に検討する必要があります。自社の強みと弱みを分析し、M&Aによってどのような課題を解決したいのかを明確にしたうえで、不動産市場の動向、競合状況、顧客ニーズなどを分析し、M&Aの必要性を検討することがM&Aを成功に導くためには重要となります。
M&Aは、企業の成長戦略において重要な役割を果たしますが、目的や戦略が明確でなければ、成功は困難といえます。M&Aを検討する際には、以下の点を明確にする必要があります。
・M&Aの目的(事業拡大、事業承継、競争力強化など)
・買収対象企業の条件(規模、業種、地域など)
・M&A後の事業計画
・M&A後の対象会社への介入度合い、制度等
・M&Aに要する費用と資金調達方法
これらの点を明確にすることで、M&Aを成功に導くための道筋が見えてきます。
・PMIの綿密な計画と実行
M&A後の統合プロセス(PMI)をスムーズに進めるためには、綿密な計画と実行が不可欠です。組織体制、人事制度、業務プロセス、ITシステムなどを統合し、従業員間のコミュニケーションを促進することで、一体感を醸成する必要があるため、M&Aの過程で相手方とよく話し合っておかなければなりません。M&A後の業績悪化は買い手・売り手双方にとって避けるべきものとなるため、協力してPMIを行うことが重要なポイントとなります。
PMIは、M&A後の成否を左右する重要なプロセスです。PMIを成功させるためには、以下の点を考慮する必要があります。
・M&A後の組織体制、人事制度、業務プロセスなどを明確にする。
・ITシステムの統合やデータ移行をスムーズに行う。
・従業員間のコミュニケーションを促進し、一体感を醸成する。
・文化や価値観の違いを尊重し、相互理解を深める。
PMIを綿密に計画し、実行することで、M&Aによるシナジー効果を最大限に発揮することができます。
・専門家を活用
M&Aは、複雑な手続きや法的問題を伴うため、専門家の活用が不可欠といえるでしょう。買い手・売り手の当事者だけではM&A交渉段階で決裂することも多くみられます。また前述したリスクを回避するためにも、業界に精通したM&Aアドバイザー、弁護士、会計士、税理士などの専門家へご相談されることをお勧めいたします。
船井総合研究所では、全国の不動産会社へコンサルティングを実施してきた実績があり、業界に精通したM&Aアドバイザーとして、ご提案をさせていただきます。
6. 不動産仲介業界のM&Aの将来展望とまとめ
不動産仲介業界では、今後もM&Aが活発化すると予想されます。少子高齢化による後継者不足、競争激化、IT化の進展、不動産市場のグローバル化など、M&Aを促進する要因は数多く存在します。今後、不動産仲介業界では、M&Aを通じて、規模の拡大、事業の多角化、IT化への対応などを進める企業が増えていくと考えられます。
不動産仲介業界におけるM&Aは、企業の成長戦略、あるいは事業承継の有効な手段となります。しかし、M&Aにはメリットだけでなく、リスクも存在するため、M&Aを成功させるためには、売り手と買い手の双方が、メリット・リスクを理解し、適切なパートナーを選び、PMIを綿密に計画・実行することが重要となります。特に、不動産仲介業界特有の顧客情報の取り扱い、従業員の引き止め、地域特性への配慮、法規制の遵守などを考慮する必要があるため、専門家であるM&Aアドバイザーの活用を積極的に行うことをお勧めします。
7. 不動産仲介業界におけるM&Aの類型
不動産仲介業界におけるM&Aは、様々な類型が存在します。それぞれの類型の特徴を理解することで、自社にとって最適なM&A戦略を策定することができます。
・水平型M&A
水平型M&Aとは、同業種・同事業を営む企業同士のM&Aを指します。不動産仲介業界では、地域密着型の企業が多いため、近隣地域で営業する企業を買収することで、営業エリアの拡大や顧客基盤の強化を図ることができます。また、規模の経済を活かして、コスト削減や業務効率化を推進することも可能です。
水平型M&Aのメリットは、事業のシナジー効果が期待しやすい点にあります。同業種・同事業であるため、企業文化や業務内容が類似しており、統合プロセス(PMI)も比較的スムーズに進めやすい傾向があります。例えば、都心部で営業する大手不動産仲介会社が、郊外で営業する中小不動産仲介会社を買収するといったケースや、賃貸仲介を専門とする企業が、売買仲介を専門とする企業を買収するケースが考えられます。
・垂直型M&A
垂直型M&Aとは、バリューチェーンの上流または下流にある企業を買収するM&Aを指します。不動産仲介業界では、例えば、不動産開発会社や建設会社を買収することで、上流への進出を図り、物件の仕入れを強化することができます。また、不動産管理会社やリフォーム会社を買収することで、下流への進出を図り、顧客にワンストップサービスを提供することも可能です。
垂直型M&Aのメリットは、事業の多角化やバリューチェーンの強化を図ることができる点にあります。
・コングロマリット型M&A
コングロマリット型M&Aとは、異業種・異事業を営む企業を買収するM&Aを指します。不動産仲介業界では、例えば、IT企業や金融機関を買収することで、新たな技術やノウハウを獲得し、事業の競争力を強化することができます。
コングロマリット型M&Aのメリットは、事業リスクの分散や新たな事業機会の創出を図ることができる点にあります。
8. 不動産仲介業界のM&Aの将来展望
不動産仲介業界では、今後もM&Aが活発化すると予想されます。少子高齢化による後継者不足、競争激化、IT化の進展、不動産市場のグローバル化など、M&Aを促進する要因は数多く存在します。今後、不動産仲介業界では、M&Aを通じて、規模の拡大、事業の多角化、IT化への対応などを進める企業が増えていくと考えられます。
また、M&Aの形態も多様化していくと予想されます。従来の水平型M&Aや垂直型M&Aに加えて、コングロマリット型M&AやクロスボーダーM&Aなども増加していくと考えられます。
9. まとめ
不動産仲介業界におけるM&Aは、企業の成長戦略、あるいは事業承継の有効な手段となります。しかし、M&Aにはメリットだけでなく、リスクも存在します。M&Aを成功させるためには、売り手と買い手の双方が、メリット・リスクを理解し、適切なパートナーを選び、PMIを綿密に計画・実行することが重要となります。
特に、不動産仲介業界特有の顧客情報の取り扱い、従業員の引き止め、地域特性への配慮、法規制の遵守などを考慮する必要があるため、専門家であるM&Aアドバイザーの活用を積極的に行うことをお勧めします。
2002年船井総合研究所に中途入社。以降、不動産業(賃貸・売買仲介、管理)を中心として、全国にご支援先をもち、業績向上コンサルティングを手掛ける。特に賃貸管理業界においてはトップコンサルタントとして、全国の一番店賃貸管理会社の勉強会(賃貸管理ビジネス研究会・現在170社)を立ち上げ、管理戸数拡大、資産コンサルティングなどを手掛け、成功実績を誇る。2022年より、現在のM&A支援部において、不動産業界に専門特化し、事業承継、M&Aを含めた出口成長戦略のコンサルティング活動に従事している。
松井 哲也の紹介ページはこちら 船井総研のM&Aの特徴とM&Aに関する解説ページはこちら