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不動産仲介業界(売買)の2022年のM&A動向の振り返りとピックアップ3選

  • 住宅・リフォーム M&Aレポート
住宅 M&A

不動産仲介業(売買)を経営されているオーナー経営者向けの記事です。不動産仲介業界(売買)において、長らくコンサルティング活動を実践してきました経験から、今回不動産仲介業界(売買)における2022年のM&A動向の振り返りについて解説させて頂いています。M&Aが活発化している不動産仲介業界(売買)において、昨今の時流を踏まえて、その背景はどうなっていて、成長する企業はどのようなM&A戦略を描き、実践しているのか、そのヒントを見つける機会になれば幸いです。

不動産仲介業界(売買)の2022年市場動向

令和4年地価公示地価は全国全用途平均で0.6%のプラスと2年ぶりに上昇し、新型コロナウイルスの影響が徐々に緩和される中で、全体的に昨年からは回復傾向が見られました。

住宅地は、低金利継続、住宅取得支援施策の効果から、住宅需要は回復傾向にて、結果地価は上昇に転じていました。都市部の利便性の高い住宅地ではより上昇が継続し、コロナ禍をきっかけにした生活スタイル変化や、顧客ニーズの多様化などにより、その周辺部にも上昇範囲が拡大していました。

商業地については、都心部において店舗・マンションなど事業用地に対する需要が高まり、上昇に転じた地点が多く繁華性のある商業地や地方圏の路線商業地など、上昇地点が増加しています。外国人訪日客が回復していない地域や飲食店舗等が集積する地域では、下落が継続している地域もありました。

開発・流通・賃貸ともに上昇傾向にあります。M&A情勢では、不動産仲介業は売上減少・事業承継から売り増加傾向にあります。

なお、2022年12月20日に、日銀総裁による事実上、長期金利の値上げが発表され、2023年4月以降、住宅ローンなどの固定金利が上がっていく方向化で、2023年の市場は大きく変動を迎えると思われます。

不動産仲介業界(売買)の2022年M&A件数

不動産仲介業界(売買)における、M&A件数は、レコフM&Aデータベースによると2022年は146件(データ種別をM&A、検索期間を2022年1月1日~2022年12月31日と設定し、業界を不動産と設定した際の件数データ)、ここ2018年から2022年直近5年間では、平均年間145件で横ばいとはいえ、その前過去10年間で遡ると、約10%以上の増加をしています。なお、全国では、東京だけが突出して多くなっています。企業数の割合が地方に比べて多くなっている基本はありますが、それ以上の割合で、東京でのM&A件数は増加しています。これは譲渡企業の増加もありますが、それ以上に譲受、つまり大手企業含め、買い手企業が複数の件数を実施している事によります。また前項にもありますが、業界では、後継者問題など、譲渡する企業の件数が増えていく中で、譲受企業も増えて、M&A件数が増加傾向にあると思われます。

不動産仲介業界(売買)の2022年ピックアップ事例3選

【事例 1】 不動産売買仲介業 → 注文住宅・請負建築会社 

不動産売買仲介・建設を営む、福屋ホールディングス(大阪府)は、注文住宅・建築請負を営むジェネシス(東京都)の全株式を取得した。ジェネシスは都内でデザイン性の高い注文住宅を取り扱っている。一方福屋ホールディングスは、関西を中心に、東京、福岡においても、不動産売買仲介、建設事業を展開している。福屋ホールディングスは、注文住宅の建築やリノベーションなどの建設部門を強化し、さらには東京での拡大展開を目指す意図で、買収を進めた。

【事例 2】 不動産賃貸仲介業 → 不動産賃貸仲介・管理業の不動産賃貸仲介店舗

全国で、不動産賃貸仲介業の運営を行う、ハウスコムは、不動産賃貸仲介、管理業を営む、宅都ホールディングスから、不動産賃貸仲介店舗23店舗を運営する事業を約10億円にて買収する。宅都ホールディングスは、これに先立ち、不動産賃貸仲介事業以外の事業を、宅都ホールディングスのグループ会社に分割移管する。ハウスコムは、関西圏での不動産賃貸仲介店舗23店舗を取得することで、関西圏での事業拡大を図る。また宅都ホールディングスと業務提携し、不動産テックを含む両者間の持続的な関係を維持し、情報の共有など協力関係に基づき新分野への発展を目指す

【事例 3】 不動産売買仲介業 → 不動産売買仲介業

ハウスフリーダム(大阪府)は、シティーホーム(愛知県岡崎市)の株式を取得(子会社化)した。大阪府全域、福岡市街地域で住宅を提供していたが、中長期的な成長に向け、更なるエリア、シェアの拡大を目指した。愛知県岡崎市を中心に不動産の売買仲介を中核事業として、地域に根差した事業活動を行うシティーホームをグループに迎えることで、新たな中部地方への進出を果たし、東日本進出に向けた足掛かりとなった

【不動産仲介業界における譲受(買い手)企業の特徴】

 不動産仲介業を営む企業にとって、さらなる商圏・シェア拡大を狙うため、同業を買収するケースが増加しています。また不動産仲介業が、より生産性を出せる企業体へ成長するために、自社の足りない事業として、建築業、リフォーム業などの、関連業種企業を買収するケースも増加しています。

 不動産仲介業が、DXを推進する企業が増加しているが、グループ内にシステム会社などを直接取り入れ、DXを加速したり、そのノウハウを同業の不動産仲介業に売り込む動向もあります。

 今回の事例には入っていないが、建築業、不動産開発業の企業が、自社の直接販売網を確立する為、不動産仲介業(店舗展開)を買収するケースも出てきています。

 いずれにせよ、成熟した業界事情の中で、買い手側、売り手側ともに、より成長・シナジー効果を目指したM&A戦略が基本となります。

【不動産仲介業界における譲渡(売り手)企業の特徴】

 圧倒的に多いのは、事業承継者の問題があります。親族、従業員への承継予定者が固まらず、第三者M&Aをすすめています。また昨今では、まだ経営者自身がより成長に向けて事業経営を進めて行ける状態にあっても、経営者自身のセカンドキャリア(ハッピーリタイア、別事業などへの挑戦)を考えた上での譲渡が出てきています。

 またコロナ禍をきっかけに、新規客数拡大などの施策がとりにくくなり、今後の売上向上が見込みにくくなる予想があったり、既にその状態に陥り、譲渡へ進める場合もあります。

 上記の中で、買い手企業は、自社よりも売上規模の大きなグループに入る事により、成長へつなぐ動きもある。売り手の経営者自身は、経営者として残る場合、また社員を継続雇用する場合などになっています。

 決して、マイナスの理由での譲渡だけでなく、より成長を目指して譲渡という手段を選択する場合も増えてきています

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