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住宅工務店における2022年のM&A動向の振り返り

  • 住宅・リフォーム M&Aレポート
不動産 M&A

住宅工務店の2022年市場動向

住宅工務店業界は成熟期を超え、衰退期にあると言えます。

令和3年度の新築住宅着工戸数は866千戸となり、前年の812千戸よりは増加しているものの、平成24年度から令和元年度の数値に比べると減少傾向にあります。(住宅着工統計:国土交通省)今後も少子高齢化に伴う人口減少により、市場の縮小ないし停滞の状況は続いていくものと考えられます。

一方、近年ではコロナ禍の影響を受け、テレワークの普及やZoom等のITツールを活用した新しい働き方に注目が集まっており、都市部に居住する必要性に疑問を持った層が、一定数存在すると考えられます。彼らの一部には、既に郊外に住宅を購入したケースも散見され、住宅工務店業界においては、コロナ禍はマイナスな側面だけではなかったと考えられます。郊外住宅の場合には、新築住宅にこだわることもなく、空き家を活用したリフォームやリノベーションをして住むケースも見受けられるため、新たな需要が顕在化したと言えます。

また国土交通省、経済産業省、環境省の3省連携による「住宅の省エネリフォーム支援」や、国土交通省による「ZEH住宅の取得への支援」が始まっています。

上記政策には、2050年カーボンニュートラルの実現に向けて家庭部門の省エネを強力に推進するため、住宅の断熱性の向上に改修や高効率給湯器の導入などの住宅省エネ化への支援を強化する目的があり、年間のエネルギー消費量0を目指したZEH住宅の支援からも、政府は環境に配慮した持続的な住宅への支援を進めていることがわかります。

以上を踏まえると、今後の住宅建設業界としては、最先端技術を導入しつつ、持続可能的に対応した住宅を、いかに提供できるかが課題となると言えます。

一方、住宅工務店業界は以下の問題を抱えていることは2022年を通しても顕著であると言えます。

廃業・倒産の増加

人材不足による問題

住宅着工率の減少

2022年の建設業の倒産件数は3年ぶりに前年より増加し、1,194件(前年1,065件)となっています。(東京商工リサーチ)また帝国データバンクによると、2022年の物価高倒産(=法的整理企業のうち、原油や燃料、原材料等の「仕入れ価格上昇」、取引先からの値下げ圧力等で価格転嫁できなかった「値上げ難」等により、収益が維持できずに倒産した企業)の件数は、全業種で320件(前年比2.3倍)となり、建設業はそのうちの70件を占めています。

物価高はロシアのウクライナ侵攻が主な原因と考えられ、足元では、エネルギーや食料品コスト、為替相場の上昇速度は落ち着きつつありますが、依然高止まりの状況が続いています。価格転嫁が十分に進まない状況が続く中、今後も「物価高倒産」は引き続き増加傾向で推移すると考えられます

また、住宅工務店業界には資格が求められる業務が多く、人材難も大きな課題となっています。採用力、教育力に長けているいわゆる大企業であっても有資格者の確保は経営活動にとって重要な課題であり、中小企業であればその課題はより顕著に現れています。

社長を除けば従業員1人だけが業務に必要な資格を保有しているケースも少なくありません。仮に有資格者従業員が退職されたことを考えると、やはり廃業という選択を検討せざるを得ません。

住宅工務店の2022年M&A件数

レコフデータによれば、2022 年において「注文住宅」に関する M&A は 14 件あります。中でも同業種もしくは近隣業種による買収が目立っています。(データ種別をM&A、検索期間を 2022 年 1 月 1 日~2022 年 12 月 31 日と設定し、フリーワードで注文住宅と入力した際の件数データ)。また、同エリアの企業による同業種もしくは近隣業種による買収が目立っています。また、同エリアの企業によるM&Aが多く、地域1番店と言われる会社にグループインするケースが散見されます。土地の仕入難が続く業界においては、新たに土地を仕入れるために営業を行うより、土地を既に保有している会社をM&Aする方がより効果的であると考える買い手が多数存在します。

また、売り手側の特徴としては、従業員を多数確保していることが前提ではありますが、仕入れ力や住宅のデザインに強みがあることが見られます。

住宅工務店の2022年M&Aのピックアップ事例2選

  • 株式会社髙翔-株式会社サンオリエント

兵庫県芦屋市に拠点を置く住宅メーカー株式会社髙翔は、株式会社サンオリエント(岡山市)を 2 月 8 日付で買収しています。株式会社サンオリエントは 2003 年に設立し、売上高約 4 億円、従業員 3 人の会社ではありますが、鉄筋コンクリート造の RC 住宅の設計と施工に強みを持っています。株式会社髙翔は、大手住宅メーカーとの競争での差別化を図るため、本件を実行したと考えられます

静岡ガスリビング-株式会社甲静ハウジング

リフォーム事業等の静岡ガスリビング(静岡市)は、建築・ 不動産業の甲静ハウジング゙(静岡市)を2月24日付で買収しています。株式会社甲静ハウジングは1990年設立、従業員13人の静岡市清水区を中心に地域に根ざした注文住宅販売や不動産売買事業などを展開している会社です。

地域に密着した営業体制、不動産仕入れチャネル、技術力を持つ専属職人などに強みを持ち、静岡ガスリビング゙は住まいに関する幅広いニーズに応える体制を強化するため、本件を実行したと考えられます。

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