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物流業の2024年問題とは?2024年問題が会社やドライバーに与える影響と、その解決策としてのM&Aについて

  • 物流・倉庫業 M&Aレポート
物流 2024年問題

物流業界が現状抱えている慢性的な課題とは

物流業界では現状多数の課題が慢性的に存在しています。なかでも大きな課題となっているのが人材不足です。物流業界は私たち消費者の生活に欠かせない業界でありますが、ドライバーをはじめとした人手不足が深刻な問題となっています。国土交通省によるレポート(「最近の物流政策について」2021年1月22日)では、全日本トラック協会の調査において約7割の企業がドライバー不足を感じていると記されています。少子高齢化などを背景にした後継者不在や新入社員の採用がままならずドライバーの高齢化が進んでいる運送会社が増加しています。国土交通省によるレポート(「最近の物流政策の動向について」2023年2月9日)で2022年の有効求人倍率を見ると、貨物自動車運転手の有効求人倍率は全職業平均と比較して約2倍の数値となっています。従業員の年齢構成も全産業平均と比較して、若年層(20代)の割合が低くなっています。若年ドライバーの採用に苦戦する中で、ドライバーの高齢化や人手不足がますます進行している状況が見受けられます。

また物流業界において、長時間労働の常態化も大きな課題の一つです。他の業態と比較してもトラックドライバーの労働時間は長くなっているケースが多いです。国土交通省によるレポート(「最近の物流政策の動向について」2023年2月9日)では、トラック運送事業における労働時間は、全職業平均と比較して2割長いと記されています。長距離移動や荷待ち時間などで拘束時間が長くなる傾向にあるからです。結果として、時間外労働の増加やサービス残業が慢性的に発生しています。加えて年間賃金も全産業平均より5~10%低いというデータも記されています。このような労働環境もまた、若年層が就労しにくい要因の一つとも言われています。

そうした人手不足な状況にもかかわらず、物流量が増加していることもあります。経済産業省・国土交通省・農林水産省によるレポート(「我が国の物流を取り巻く現状と取組状況」2022年9月2日)では、コロナ禍による巣ごもり需要などの後押しもあり、EC市場が拡大してきたことに触れられています。それに伴い、宅配便の取扱実績は右肩上がりで増加しています。

増加する需要(物流量)に対し、不足する供給(ドライバー不足)という構図が構築されつつあり、早期の対応や解決策の実行が求められています。

2024年問題とは

2024年問題とは、「働き方改革関連法」に基づき、2024年4月1日から労働時間の上限規制が開始されることにより生じる諸問題のことを言います。働き方改革関連法に伴う規制は、大企業では2019年4月1日~、中小企業でも2020年4月1日~順次施行されていました。しかし、その影響が大きいであろう一部の業種については5年間の猶予期間が設けられており、「自動車運転業務」はその中の一つでした。この法律の施行により、2024年4月1日以降は、年間時間外労働時間の上限が960時間(特別条項付き36協定を締結する場合)と定められました。この制限に違反した場合、6か⽉以下の懲役または30万円以下の罰⾦が罰則として科される可能性があります。ただし、他業種においては年間残業時間の上限が720時間と定められており、それと比べると自動車運転業務では240時間も多く残業することが可能になっています。また、「月100時間未満」、「2〜6ヶ月平均80時間以内」、「月45時間を超える月は6ヶ月まで」という規制も適用されていません。これらの点で、自動車運転業務に従事するトラックドライバーらへの時間外労働に関する上限規制は、他の業種と比較すると緩く設定されており、今後更なる制限の余地を残しているとも言えます。

時間外労働時間の上限規制以外にも、働き方改革関連法によって変更された点があります。「時間外労働に対する割増賃金」と「同一労働・同一賃金」の導入です。

2023年4月1日より時間外労働に対する割増賃金率の引き上げが開始されました。

(2023年3月31日まで)

・月60時間超の残業割増賃金率:大企業50%、中小企業25%

(2023年4月1日から)

・月60時間超の残業割増賃金率:大企業、中小企業ともに50%

これにより時間外労働が慢性化していた企業においては、人件費の増大が発生しています。物流企業では長時間労働の慢性化が課題にもあった通りで、大きな影響を受けています。

また、同一企業内における正規雇用と非正規雇用の間で生じる不合理な待遇差を解消するため、正社員と非正規雇用労働者との間で、基本給や賞与などの待遇を同一にするよう定められました。これにより、非正規雇用労働者から要求があった場合、企業側は待遇の差について理由を説明する必要が生じています。物流業界では、非正規雇用で働くドライバーの数も少なくありません。給与体系や評価基準などで不合理が生じていないか、改めて確認をする必要があります。

2024年問題が物流業に与える影響

2024年問題は物流業界に多大な影響を与えることが予想されます。

まず、運送会社における売上や利益が低下する可能性が挙げられます。運送会社のビジネスモデルは労働集約型です。労働者の労働時間に応じて業績は連動します。自動車運転業務に対しても働き方改革関連法が施行されることに伴い、ドライバーの労働時間は減少させざるを得ず、その結果、ドライバー一人当たりの売上は減少することが予想されます。また、時間外労働に対する割増賃金や、同一労働・同一賃金の影響もあり、これまで以上に人件費が発生する可能性もあります。これにより利益も逼迫される可能性があります。

次に、ドライバーの収入減少や離職が加速する可能性も挙げられます。給与体系として歩合制が採用されている企業では、労働量の減少に伴い支払われる給与も減少します。これに伴い、より報酬のいい仕事を求めて、ドライバーの離職が加速してしまうことも予想されます。

こうした背景から、荷主企業においても物流コストが増加する可能性があります。運送会社側から考えると、これまで通りの働き方や売上、利益が見込めない状況になっています。従業員の生活を守る為にも、ドライバーへの給与を減少させなくてもいいように、運賃の増加を求める必要があります。運賃を上げることで、運送会社の収益を守り、ドライバー個人の報酬や生活を守る必要性が高まることが予想されます。

2024年問題を解決するには

2024年問題が物流業界に与える影響は多大であり、様々な点で解決策を講じる必要があります。

まずは労働環境の改善からです。働き方改革関連法の施行に伴い、労働時間が減少することは避けられません。これまでと同じ働き方の場合、1人当たりの売上も同様に減少します。そして企業の売上も利益も減少してしまいます。それを避けるためには、より多くのドライバーを確保するか、より効率的に収益力をあげることが求められます。給与体系(基本給と歩合給の割合など)、評価制度(安全確保など)、労働効率(時短制度など)、福利厚生(育児休暇や住宅・資格補助制度など)などの見直し・改善を行うことで、より働きやすい環境づくりが不可欠です。そうすることで求職者からのイメージを向上させ、ドライバー採用の増加に繋げていくことが求められます。

またAIやロボットを活用したDX化も必要です。物流業界に蔓延する長時間労働の慢性化を改善するには、業務効率化が不可欠です。長時間労働の背景には、荷待ち時間やトラックの稼働率が課題として挙げられます。システムを活用することで、無駄な待機時間を発生させないような効率的な荷待ちの実現や、車両管理の徹底によるトラック稼働率向上を期待することができます。また、倉庫内でのピッキング作業や荷物の積み下ろし作業にロボットなどを活用することにより自動化、省力化を進めることも可能になります。パレットの統一化なども、これらの導入に欠かせない要素でもあります。さらには、トラックの自動運転システムやドローンの活用も将来的に大いに期待されています。これらはすでに導入が為されている事例もあり、更なる推進が待ち望まれます。

3PL(Third Party Logistics)の推進も一つの策として挙げられます。3PLとは、物流業務を専門に請け負う企業のことで、貨物の輸送や保管、配送などの業務を代行することができます。これにより、物流企業は自社で車両を所有する必要がなくなり、労働力の確保やコスト削減につなげることができます。

そしてM&Aも有効な策の一つとして挙げられます。M&Aとは企業の合併や買収・売却の事を指します。これまでそれぞれに独立して運営してきた別の企業同士がM&Aを実行することにより、様々なシナジーを創出しともに発展・拡大していくことを目指しています。

譲渡企業側のメリットとしては、大手企業の傘下に入ることによる経営基盤の安定が挙げられます。またドライバーの確保、労務問題の改善、ネットワークの拡大や業務効率化による収益力向上が期待されます。

買収企業側のメリットとしても、ドライバーの確保、ネットワークの拡大や業務効率化による収益力向上が期待されます。

2024年問題に直面する物流業界は、多くの課題と改革を迫られています。労働環境の改善、DXの推進、3PLの活用、M&Aの検討といった解決策の選択と実行が早期に求められています。これらの取り組みによって、効率的で持続可能な物流サービスの提供を行い、業績の向上を目指していくことが求められています。

2024年問題に向けては、既に様々な対応や改革への取り組みを始められている物流企業様も多数いらっしゃるかと存じます。私ども船井総研グループでは、船井総研ロジを中心とした「物流事業コンサルティング」や船井総研M&A支援部による「M&Aコンサルティングサービス」などを展開しております。まずは無料の個別相談から行っておりますので、お気軽にお問い合わせいただければと存じます。

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