物流業界M&Aの事例
- 物流・倉庫業 M&Aレポート
今回は物流業界におけるM&Aの事例をご案内したいと思います。
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物流業界M&A:最近の事例
①東部ネットワークによる東北三光の株式譲受(2022年3月25日開示)
【譲受企業】
企業名:東部ネットワーク、本社:横浜市神奈川区、
上場区分:東証スタンダード(9036)
事業内容(連結):貨物自動車運送66%、商品販売20%、不動産賃貸12%、他2%
特色:横浜市東部の運送会社13社統合で発祥。関東圏が地盤。石油、瓶、飲料(コカ・コーラ等)、及びセメントを軸に拡充。
2021年3月期業績(連結):売上高10,573百万円、営業利益629百万円(5.9%)
【譲渡企業】
企業名:東北三光、本社:宮城県塩竈市、
上場区分:非上場業績:売上高1,420百万円、営業利益13百万円、純資産124百万円
【M&A内容】
東部ネットワークは、セメント輸送の東北三光の全株式を取得し子会社化することを決定。東北地区での営業拡大が狙い。東北三光は50年の業歴を持つ。取得価額は非公表。取得予定日は2022年4月15日。
②トナミホールディングスによるサンライズトランスポートの株式譲受(2022年3月1日開示)
【譲受企業】
企業名:トナミホールディングス、本社:富山県高岡市、
上場区分:東証プライム(9070)事業内容(連結):物流関連92%、情報処理2%、販売4%、他1%
特色:富山県拠点の路線トラック大手。3PL育成、M&Aに積極的。
2021年3月期業績(連結):売上高134,695百万円、営業利益6,455百万円(4.8%)
【譲渡企業】
企業名:サンライズトランスポート、本社:岩手県一関市、
上場区分:非上場業績:売上高1,460百万円
【M&A内容】
トナミホールディングスは、自動車運送事業のサンライズトランスポートの全株式を取得し子会社化。東北エリアでの配車力を強みとするサンライズトランスポートを傘下に収めることで、同エリアでの業容を拡大するのが狙い。今後、情報システムの共有化などを進め、生産性を高める。取得価額は非公表。取得日は2022年3月1日。
③ヒガシトゥエンティワンによる山神運輸工業の株式譲受(2022年2月18日開示)
【譲受企業】
企業名:ヒガシトゥエンティワン、本社:大阪市中央区、
上場区分:東証スタンダード(9029)
事業内容(連結):運送67%、倉庫26%、商品販売2%、ウェルフェア4%、他1%
特色:大阪市の運送13社統合で設立。株主の日本生命保険、や関西電力等が大口顧客。福祉分野に進出。
2021年3月期業績(連結):売上高24,436百万円、営業利益1,022百万円(4.2%)
【譲渡企業】
企業名:山神運輸工業、本社:横浜市、上場区分:非上場
業績:売上高2,080百万円、営業利益67百万円、純資産191百万円
【M&A内容】
ヒガシトゥエンティワンは山神運輸工業の全株式を取得し子会社化することを決定。山神運輸は1952年に設立し、鋼材や機械などの重量物輸送を中心に海上コンテナ輸送を含めた一般貨物輸送事業と、機械据え付け・メンテナンスを手がけるエンジニアリング事業を二本柱とする。取得価額は非公表。取得予定日は2022年2月24日。ヒガシトゥエンティワンは鋼材メーカーを主要顧客とする。山神運輸が得意とする重量物輸送との相乗効果を見込むほか、海上コンテナ輸送やエンジニアリング事業など新たな分野での事業展開につなげる。
④カンダホールディングスによる堀切運輸の株式譲受(2022年2月4日開示)
【譲受企業】企業名:カンダホールディングス、本社:東京都千代田区、
上場区分:東証スタンダード(9059)
事業内容(連結):貨物自動車運送76%、国際物流21%、不動産賃貸2%
特色:東京・神田の運送会社統合で発祥、出版物共配に特色。医薬品等3PL、物流センター業務代行。
2021年3月期業績(連結):売上高44,035百万円、営業利益2,364百万円(6.0%)
【譲渡企業】
企業名:堀切運輸、本社:埼玉県八潮市、
上場区分:非上場業績:売上高1,240百万円
【M&A内容】
カンダホールディングスは堀切運輸の全株式を取得し子会社化することを決定。新たな得意先の獲得や運送網の発展につなげる。堀切運輸は1965年設立で、ダンボール用巻き取り原紙を中心に重量物の配送に特化。取得価額は非公表。取得予定日は2022年2月7日。
参考情報源:四季報参考サイト:https://maonline.jp/
物流業界M&A:事例の考察
以下、最近のM&Aのなかでも株式譲渡の公開情報をベースに、私の推察や見解も織り込んで事例をご案内差し上げたいと存じます。予めお含みおきください。全体感として、斯業界におけるM&Aは、株式譲渡だけでも今年に入り既に10件以上の適時開示がなされております。適時開示されないもの(非上場企業同士など)や、株式譲渡以外のM&A(事業譲渡など)も含めると、まだまだありそうです。業界におけるM&Aが引き続き盛んであることが伺えます。
M&Aの目的に関しては、一般的には「事業拡大」が多いようです。細分化すると「エリア拡大」、「取引先拡大」、及び「ドライバーの獲得」等々、いくつか手法はありますが、大きな目的としては事業拡大に収束していることが伺えます。こちらは業界的に規模の経済が働きやすいということが背景にあるのではないかと推察しております。譲受対象企業(譲渡対象企業)の規模間としては、おおむね譲受企業の連結売上高の5%~10%くらいの売上高規模、という水準のようです。
上記4事例を平均しても近しい数字になります。裏を返せば、例えば売上高3億円の運送会社を譲り受ける場合、譲受企業としては連結ベースで売上高30億円~60億円くらいは欲しいということになります。これより少ない場合、企業規模・体力的に譲り受けることが可能なのかといった議論が生じるでしょうし、逆にこれより大きい場合は、譲受対象企業(譲渡対象企業)の規模が小さくメリットあるのかといった議論が生じるかもしれません(もちろん、全てがこれに当てはまるわけではございませんので、最終的にはケースバイケースにはなります。)。
以上、最近の事例からトレンドを考察いたしました。ただ、M&Aのトレンドは日々変遷いたしますので身近な事例にアンテナを高くすることが何より肝要と思います。
船井総研では、50年以上にわたる業種別コンサルティングの経験を活かした、M&A 成立後の業績向上・企業の発展にコミットするM&Aを目指しております。業種専門の経営コンサルタントとM&A専門のコンサルタントがタッグを組み、最適な成長戦略を描きます。