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電気・ガス・エネルギー M&Aレポート

M&Aの情報をコラム形式で発信してまいります。
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  • 電気・ガス・エネルギー M&Aレポート
エネルギー M&A

大手電力会社・大手ガス会社を中心とするエネルギー業界においては、様々な目的を持ったM&Aが進んできており、注目が集まっている業界となっています。
 例えば、大手エネルギー事業者においては、国内需要の縮小等を補うため、M&Aという手段を活用して、以下のような成長戦略を進めています。

I. 水平統合

事業エリアの拡大を企図した、一般的には水平統合と言われるM&Aの手法で、特にエネルギー業界では、LPガス業界において、M&Aが活発に行われています。
LPガスの国内需要は減少していくなかで、一定程度のシェアを獲得することで、配送効率の維持向上、価格競争力を確保することが出来るため、その目的に資するM&Aが多く行われています。

II. 垂直統合

業務プロセスを拡大していくための、一般的には垂直統合と言われるM&Aの手法で、特にエネルギー業界では、太陽光発電事業者によるパネル製造事業の買収等、いわゆる「川上」分野への進出が散見されています。

III. 周辺事業の拡大

既存事業エリアの周辺領域に進出することを目的としたM&Aの手法で、特にエネルギー業界では、これまでは太陽光発電等の再生可能エネルギー事業への進出などに際して、M&Aを活用する事例が散見されました。
再生可能エネルギー分野においては、太陽光発電だけではなく、洋上風力、バイオマス、水素、アンモニア等の次世代クリーンエネルギーや、蓄電池・電気自動車等の周辺商材への先行投資を行うような事例も増えてくるものと思われます。

IV. 新規事業への進出

 安定的な顧客基盤を有する大手エネルギー事業者においては、顧客層に対してのアプローチが可能という強みを梃子にし、非エネルギー分野への進出を企図した、M&Aも多く行われています。
 特にエネルギー業界においては、住宅事業を中心とする不動産事業や建設事業等とは親和性が高く、業界を横断したM&A・提携は、今後も増加するものと考えられます。
 さらには、1の事業エリア拡大(水平統合)とも重複はするのですが、エネルギー業界においては、海外進出・海外シェア拡大を企図したM&Aというのも、多く行われています。

 それでは、本コラムのお題目である「同業者M&A」と「異業種M&A」について、当該業界の特性も含めて記載させて頂きます。

1、 同業者M&Aの注意点

まず、「同業者M&A」につきましては、前述の「Ⅰ、水平統合」「Ⅱ、垂直統合」「Ⅲ、周辺事業の拡大」が、基本的には該当し、M&Aの中でも多くの事例が存在します。
 その理由としては、譲渡側・譲受側のいずれにおいても、業界知識や業界慣習等を理解していることで、M&Aのプロセスも円滑に進むことが多く、また、M&A後の引継ぎや統合が想像しやすく、相互の強み弱みを理解することで、シナジー効果を創出しやすいことが挙げられます。

M&Aによるシナジー効果としては、以下のようなものが想定され、エネルギー業界でも業種によって、その違いはあるものの、M&Aの目的には含まれるものと想定されます。

A) 販売シナジー

譲渡側・譲受側の相互が有する販路や、ブランドを活用することで、クロスセル等、売上高増加を期待。

B) 原価・コスト改善シナジー


スケールメリットによる仕入単価や各種費用の削減が期待できる。また、これまで外注等に依存していた業務を内製化することによる原価改善等も期待。


C) 研究開発シナジー

技術・ノウハウ等を共有することによる研究開発の進捗スピードの早期化を期待。


D) マネジメントシナジー

優秀な経営者・管理者のノウハウ等を活用することによる、戦略的な経営ならびに組織マネジメントの効率化を期待。


E) 財務シナジー

スケールメリットによる資金調達力の向上、調達コストや担保等の条件交渉力向上も期待。

但し、これらシナジー効果については、以下のようなリスクがあります。

 M&Aの検討プロセスにおいては、M&Aを成約させることに注力してしまい過ぎることで、これらシナジー効果について、過度に楽観視してしまい、実現することが難しい事業計画をもとに、バリュエーションをしてしまうリスク。

 M&A成立後、実際の統合業務(PMI Post Merger Integration)において、譲受側の強制的・支配的な、過剰なまでの関与による混乱や内部対立発生による、キーマンの離職等でのアナジー効果。

 信頼関係が構築されないまま、自走・経営委任という、いわゆる「放置」により、譲渡側・譲受側、それぞれ独自単体での経営となってしまい、期待していたシナジー効果創出に至らないリスク。

同業者M&Aだからとはいえ、やはり長年に亘り、異なる文化のものと経営されてきた2つの企業がM&Aで統合するということは、様々なハレーションリスクがあり、シナジー効果は、M&Aの検討プロセスにおいては保守的に算段し、PMIにおいては細部に亘る配慮をしながら、慎重に進める必要があるものと思われます。

2、 異業種M&Aの注意点

次に、「異業種M&A」について、前述では「Ⅳ、新規事業への進出」が該当し、M&Aのなかでは決して多いものではないかもしれませんが、エネルギー業界においては、以下のような事例が挙げられます。

(ア) 株式会社シーラホールディングスによる、日本太陽光発電株式会社のM&A事例

2022年、投資用マンション販売事業、不動産クラウドファンディング事業等を運営する株式会社シーラの親会社である株式会社シーラホールディングス(本社:東京都渋谷区)が、太陽光発電の設計・施工・運用・保守・管理等を行う日本太陽光発電株式会社(本社:愛知県一宮市)の全株式を取得し、完全子会社化することを発表。
土地の仕入から、太陽光発電システムの設計、施工、運用、保守メンテナンス、管理等を一気通貫で行う日本太陽光発電と、高い不動産開発力を持つシーラのノウハウを融合することで、遊休地の有効活用や、投資用マンション購入のお客様に対して、太陽光発電施設を投資商品として提供することで、相互シナジーの創出、また中期的には、シーラのマンション開発における、自家発電設備の整備を図るなどの付加価値提供を想定されているものと思われます。

(イ) サンフロンティア不動産株式会社による、ノータスソーラージャパン株式会社のM&A事例

2023年、都心オフィスビル事業を中核に据え、ホテル事業、海外事業等を展開するサンフロンティア不動産株式会社(本社:東京都千代田区)が、営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)の企画・コンサルティング・架台システムの提供を行うノータスソーラージャパン株式会社(本社:大阪府大阪市)と、資本業務提携に関する基本合意を締結したことを発表。
太陽光発電設備の設置に適した土地が徐々に減少しているなかで、全国の耕地を有効活用する営農型太陽光発電は、これからの再生可能エネルギーによる脱炭素への取組みを更に推進することに加え、農業とその地域の活性化にもつながる取組みとして、両社の提携の中で促進していくことを想定されています。

このようにエネルギー業界以外からの参入を企図したM&Aというのも、近年は多く見られています。その際に、同業者のM&Aでは見られない以下のようなリスクもあり、十分な留意が必要となって参ります。

 業界知識・業界慣習等の把握が難しく、M&Aプロセスだけでなく、M&A成立後の引継ぎや統合においても、ハレーションが起きやすい。

 M&Aプロセスにおいて、事業の強み・弱み、将来性等について、誤った見立て(予測)をしてしまい、バリュエーションにおいても、過度に楽観思考で高値掴みをしてしまうリスクや、逆に過剰にリスクを取り過ぎることで、低い金額提示しか出来ず、M&Aが破談となる可能性が高い。

 同業者M&Aでは、比較的創出しやすいシナジー効果についても、ひとつ一つ慎重に考慮し、手続きを進めないと、想定していたシナジー創出に至らないケースが多い。

但し、このような異業種M&Aの最大のメリットは、ゼロから新規事業を立ち上げることに比べて、圧倒的に「時間」を短縮することができ、新たな事業に必要な、インフラ・ノウハウ、人材を早期に獲得できることが挙げられます。
よく、「M&Aにはリスクが多い」という表現をされることもありますが、新規事業を立ち上げることに対してのリスクとの比較をきっちりと行うことが重要であります。
「M&Aを良く見聞きするから」、「仲介会社から話があったかた」、「周りでもM&Aをした人がいるから」というようなことから、M&Aを検討し、お買い物思考・ギャンブル的思考で、M&Aを行うことのリスクは非常に大きいものと思われます。
「なぜ、このM&Aをするのか」という問いに、明確な答えが出来ないM&Aは、本来避けるべきであり、それが、異業種M&Aであれば尚更であります。
しかし、異業種M&Aは、シナジー効果が生まれないというものではなく、固定観念を打破した先には、新たなビジネスモデルのチャンスや、イノベーションを起こすきっかけにもなり得るものであります。

3,まとめ

近年、地域に根差したコングロマリット企業が増加しています。
以前は、「コングロマリット・ディスカウント」という表現で、多角化が上手くいかず、シナジー効果が生まれない状態、また、ガバナンスが機能せず、外観的にもどのような企業なのか認識されにくいなど、マイナスのイメージを持たれることが多いのが現実でした。
しかし、コロナ禍を経て、リスクヘッジ型のポートフォリオ経営、都市部に流れた経営資源(ヒト・モノ・カネ)が地方へ回帰し、存在感ある事業が、統一感あるテーマで括られ、経営資源が有効活用出来ている「地域コングロマリット戦略」を進めることで、地域内需要を「点」ではなく、「面」で獲得し、「顧客獲得」「人材採用」「リスクヘッジ」等々の相乗効果を目指すケースが増えています。
エネルギー業界は、この「地域に根差した」という点でビジネスを行っているケースが多く、今後、この「地域コングロマリット戦略」を目指す手段として、「M&A」を活用するケースは、ますます増えるものと思われ、重要な手段としてご検討頂ければと思います。
船井総合研究所では、単にマッチングだけを考えたM&Aではなく、企業戦略のあくまでも一部分であるということで、持続的な成長に繋げていくことを目指していますので、是非、お気軽にご相談ください。 

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