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売却時の従業員への不適切な伝え方とは?

  • M&Aコンサルティングレポート
M&A 伝え方

先日開催の弊社「M&A・事業承継セミナー」でも多くのご質疑を頂いた「会社を売る時の従業員への伝え方」について、触れてみたいと思います。

多くのご質疑を頂いた通り、会社を売ったご経験を持つ経営者はごく少数の方々となりますので、「どのタイミングでどの様に伝えれば良いか」、分からないのが一般的となります。

また、伝え方を間違えると、従業員の引き続きを予定する買手企業様にも多大な迷惑をかける事となり、最悪の場合ブレイクする可能性もあります。よって、売手企業の経営者による従業員への説明はM&Aクロージング前の最大のポイントと言っても過言ではないでしょう。

1.伝える順番を事前に決め、速やかに全員に伝える。

従業員は、正規と非正規の区分の他にも、正規社員における役職者と一般の区分、更に、役職者における営業系と管理系の区分などに分ける事が出来ます。

会社を売る時の「伝え方の順番」として重要なのは、全員一同に集めて突然伝えるのではなく、重要なグループ、すなわち幹部社員からまず伝える事が必要です。また、合わせて認識すべき事は、幹部社員に伝えた翌日には中堅社員の一部にも伝わるという事です。

翌日に中堅社員まで伝わるならば、いっそ、全員を集めて伝えても良いのでは?と思われる方もいると思いますが、階層別に分けて伝える事が重要なのです。その理由は、どんな幹部社員も、社長から会社を売ると突然言われると混乱するのが必至で、伝える相手が多くなれば「社長に裏切られた」とか「明日から仕事に来ない」などの感情的な意見が出やすくなります。

集団心理とも言えるこの手の発言をぶつけられると、混乱必死に陥り、円滑な買手企業への承継は困難となります。まずは、1度の伝える相手の頭数を減らしながら、最初に伝えた日から1週間以内には全従業員に伝える予定を組む必要があります。また、一般的には、各部署の部長クラスに伝えた後は、営業系の中堅社員、管理系の中堅社員、一般の従業員(正規・非正規)の順番が良いと思います。管理系よりも営業系から抑えるのがポイントとなります。

2.招集目的は事前に伝えず、「重要な経営方針の発表」とだけ伝える。

当然の事となりますが、会社を売る事を事前に伝えてはなりません。オーナー企業へあれば、オーナー一族とオーナーへの忠誠心の高い一部の幹部以外には決して事前に漏らさぬ事が必要です。

基本契約が完了するまでは、オーナー一族と口の堅い一部の幹部社員以外にはM&Aの話を伝える事が出来ません。他方、基本契約前には買手企業から様々な資料の要請や質疑、更には現地調査といったDD(デユーディリジェンス)が発生しますが、これらを秘密裏に進めなければならない事から、やはりM&Aの外部専門家の力を借りる事が必要と思います。

3.従業員説明は、売手企業と買手企業の共同作業である。

売手企業のオーナーから会社売却の説明が終わると、次に買手企業に対する質疑が噴出します。具体的には、勤務地の変更や転勤の有無の話から、時給、給与、昇級といった話まで多岐に渡りますが、突然伝えられた従業員にとってはいずれも切実な問題となります。

買手企業は、自社の魅力を伝えながら、これらの質疑に対して事前に答えを用意しておく必要があります。また、M&Aの経験がある買手企業では、過去買収した会社に在籍していた幹部社員に「自分も皆さんと同じ様に不安であったが、この会社に来て成長できる場面を多くもらっている」などの話をしてもらうのも良いでしょう。

事業を棄損せず円滑なM&Aを実行したければ、従業員説明は売手と買手の共同作業であると言えるでしょう。また、従業員説明は残念ながら私どもの様な外部の会社が代行するものでもなく、皆様からの本音の話を従業員たちは聞きたい場面です。しっかりと従業員に説明するための決意が必要となります。

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