店舗M&Aにおける2022年のM&A動向の振り返り
- 店舗 M&Aレポート
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店舗M&Aとは
店舗M&Aにおける2022年のM&A動向の振り返りについてお伝えさせていただく前に、そもそも店舗M&Aとは一体何なのか?について触れていきたいと思います。
すでに店舗M&Aをご検討中、もしくは店舗M&A経験がおありの方におかれましては「店舗M&Aの2022年市場動向」から読み進めていただけますと幸いです。
それではお話させていただきます。
店舗M&Aには大きく2つの種類があります。
①店舗事業譲渡
その名の通り、営業中の店舗事業を譲渡するスキームです。事業譲渡として、譲渡対象となるものは、従業員や取引先、ノウハウや店舗資産、賃貸借権や商標権、公式ホームページやリース契約などであり、まとめて買手企業に引継ぎし、買手企業がそのまま営業を引き継ぐパターンが多いスキームです。
②店舗資産譲渡
主に居抜き物件と呼ばれるものが本スキームに該当します。譲渡対象は限定的であり、店舗資産と賃貸借権を中心に、案件に応じて設定していくケースが多いです。
事業用の定期建物賃貸借契約などは通常数百万円から数千万円の原状回復義務や違約金などが発生するケースが多いです。単純閉店してしまうと店舗経営者様は大きな損失に繋がってしまいます。売主様にとって、店舗M&Aのメリットとしてはなんといっても、賃貸借契約に伴う原状回復義務の免除と、日々の営業赤字を止められることにあります。店舗M&Aで譲渡金を頂いて戦略的な撤退を行うことと、原状回復を行って賃貸借契約に伴う違約金を支払って店舗閉鎖するのとでは大きな違いがあり、経営者様の人生を大きく左右しかねません。
一方、店舗M&Aは買い手側にも大きなメリットがあります。設備などをそのまま使用することができるため初期コストが大きく抑えられ、開業までの時間を大幅に短縮することが可能です。特に飲食店では高価な調理設備や排気ダクト工事などが費用の多くを占めますが、これらの設備がそのまま使用できる状態であれば、大幅な初期費用削減となります。つまり、初期コストを抑えた上で時間を買うことができるのです。店舗M&Aは売り手にとっても買い手にとっても事業戦略上、非常に有効的な手段とご認識いただければ幸いです。
ご参考までに店舗M&Aにおいて、ほとんどの業種で採用される譲渡金額算出例をご紹介させていただきます。
・黒字店舗
①年倍法:固定資産額(簿価)+営業利益年2~4年
②EV/EBITDA法:EBITDA2年~4年
・赤字店舗
①無償譲渡or1円譲渡
②固定資産額(簿価)
③アドバイザリー手数料同等額
今後、事業業績の回復が見込まれるのであればそのまま続けることも重要ですが、黒字転換する可能性が低いとお考えであれば、1度企業価値診断をすることをお勧めします。
また、今は少しの赤字であっても数年後には会社全体を揺るがす事態にもなりかねません。そういった将来のお話や事例等についても当部署であればお話しさせていただくことが可能でございます。
店舗M&Aの2022年市場動向
「次の感染拡大に向けた安心確保のための取組の全体像」(令和3年11月12日、新型コロナウイルス感染症対策本部)において、
今後は、感染拡大を防止しながら、日常生活や経済社会活動を継続できるよう行動制限の緩和の取組を進めていくという方針が決定されました。
新型コロナウイルスによる行動規制緩和により飲食店の来店者数、売上も回復基調にあります。一方、小規模飲食店はコロナ渦においては給付金・補助金・助成金の効果があったものの、これらが減少傾向となっており業績好調な店舗と不採算店舗の2極化が進んでおります。積極的な事業拡大のための買収ニーズと戦略的な撤退のための売却ニーズがマッチし、2022年においても幅広く店舗M&Aが行われました。
また、比較的少額(1000万円未満)のM&Aが引き続き増加傾向となっております。
独立を考えた際、初期コストを抑えるために店舗M&Aを活用される経営者様が時代の流れとともに増えてきております。
今後成約件数増加が見込まれる業種3選
今後想定されるM&Aニーズとして、下記3つ挙げさせていただきます。
インバウンド向け店舗
訪日客数も回復してきており、今後のインバウンド需要を取り込むことが可能な業種を中心に活発化が見込まれます(例:観光地周辺の飲食店、観光旅館、リゾートホテル、薬局等)。
特に、観光地のホテルや旅館はコロナ渦において大きな打撃を受け廃業に追い込まれるという事例もありましたが、今後は一定の業績回復並びにホテル業界のストロングバイヤーによる攻めの買収ニーズが見込まれます。
葬儀社
感染予防として『3密』を避けるため、火葬のみの葬儀や家族葬が増加し、一件当たりの葬儀費の低下現象が起こっていましたが、行動制限の緩和により従来通り生前お付き合いのあった方を招待しての葬儀件数回復、それに伴う葬儀一件当たりの単価の上昇が見込まれます。回復を見込んだ買収検討のご相談を当社においても多くいただいております。
カーディーラー
人口減少に伴い、地方を中心にカーディーラーにおいても再編が行われております。M&A件数も中期的に増加が見込まれます。
今回、今後成約件数増加が見込まれる業種3選をご紹介させていただきました。店舗M&Aのメインどころはやはり飲食業界(特に焼肉店、寿司屋、テイクアウト対応飲食店)であり、その流れは今後も続くものと思われます。
首都圏駅近店舗、ロードサイド店舗、いずれも異なる買いニーズが存在し、営業赤字であっても成約確率は決して低くはない状況で推移しています。これは、建築費、部材コストの増加も一因と見られています。
店舗M&Aの2022年ピックアップ事例
具体的な事例として、3つご紹介します。
・2022年2月に外食計画ホールディングス(株)が、(株)山二より「プロント仙台国際空港店」を事業譲受。
・2022年10月に株式会社クスリのアオキホールディングスが、株式会社三崎ストアーよりスーパー事業を取得。
・2022年2月に株式会社なの花東日本が上溝薬局を事業譲受。
以上の様に、2022年は飲食、スーパー、薬局と幅広く店舗M&Aが行われました。withコロナの世の中となり久しいですが、ストロングバイヤーの積極的な事業買収は今後も拡大基調であり、他業種からの新規参入も引き続き多くみられると思われます。
おわりに
冒頭お伝えさせていただきましたとおり、店舗M&Aは事業戦略において非常に有効な方法です。しかし多くのM&Aアドバイザーは店舗M&Aに慣れていないということが現状です。店舗M&Aにおける知識が乏しいアドバイザーであっても、初回面談では専門用語を交えながらお話をさせていただくため、序盤では判断しづらく時間の経過とともに知識・ノウハウの不足が判ることも少なくありません。知見の乏しいアドバイザーが対応した場合、正確性にかける譲渡資産の価値算出を行い、成約確率が下がってしまうことや、買い手候補先に誤った情報をお伝えし、後々のトラブルとなる可能性もあります。
故に、M&Aアドバイザーと店舗M&Aのアドバイザーは異なる点にご注意下さい。その点、弊社には店舗M&Aに精通したアドバイザーが在籍しております。
閉店・廃業をする前に、戦略的撤退をお考えいただきますようお願いいたします。船井総研のM&Aコンサルタントにぜひご相談ください。
誠心誠意、最善の対応をさせていただきます。
大学卒業後、飲食FC本部事業を展開する上場会社に新卒入社。その後、FCビジネスに特化した経営コンサルティングを行う上場会社に転職し、M&A戦略による経営支援や資本提携、グループ再編に携わり、グループ上場会社の上席執行役員兼営業本部長として年商約50億円、従業員1,000名以上の営業部門を統括。
現在は株式会社船井総合研究所のM&A支援部にて年間10件のM&Aを成約に導く。過去M&Aに携わった件数としては100件を超える。
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