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M&Aにおけるのれん代とは

  • M&Aコンサルティングレポート

今、巷を賑わしている「のれん代」の算定と償却方法に関してです。

東芝を皮切りに、富士ゼロックス、日本郵政と続けざまに「のれん代償却」に伴う決算発表延期や赤字というように大きなダメージになっています。

それも全て、海外企業のM&Aに伴う「のれん代」が高すぎた・・・という話。

これは大手企業だけの話ではなく、中小のM&Aにおいても「のれん代」を高く付けて買収してしまい、後で苦労する・・・というケースは多々、発生しています。

ざっくりと、分かりやすく言えば、

M&Aで買収価格を設定する際には2つの観点から見る必要があり、

・現在価値=資産(純資産)

・将来価値=のれん代

を合わせた金額になります。

現在価値である資産は、その会社の持つ現金や土地・建物といった「目に見える」ものであり、そこからその会社の借金である長期借入金や短期借入金を引いたもの。つまり、「その会社を買って、即、売り払えば、いくら残るのか?」という非常に分かりやすいものです。

決算書に書いている数値が全て正しいのであれば、決算書から簡単に分かります。(当然、資産内容は詳細に査定する必要がありますが)。

一方、のれん代は「その会社が将来、どれだけの収益を生むか?」というある意味、漠然とした『期待値』であり、算定する根拠が曖昧になりがちです。

例えば、利益が出ていない会社であっても、将来、大化けする可能性のある、今であればAIやバイオといったジャンルは「のれん代」が高くつきますし、保育等の新規参入のための許認可がなかなか取りにくい業種・業界は高い「のれん代」が付きます。

売り手側は、「資産」は目に見えるものでどこが査定してもほぼ同じ金額になりますので「のれん代」を高く評価してもらおうと、そこを高く見せるための説明をしてきます。

特に今回の東芝や富士ゼロックス、日本郵政の買収先は海外企業なので、実態も分かりづらくなっていますし、高く見せることにも長けています。

買い手側にも「買わなければならない理由

=企業の成長スピードアップや資金の有効活用や内部での昇格競争等々・・・」もあり、

それを「買い手側内部」で納得性を得るために、「今の利益は低いけれども、自社と一緒になることで高い相乗効果を生み、利益は大幅に上がる」という「絵」を描きます。

(デューデリジェンスの仕事をするとファンド等から「これくらいで買収したいので、これくらいの利益の出る絵を描いて欲しい」という話が出たりもします・・・。こちらとしては「無理なものは無理!」とハッキリと言いますが)。

「描いた絵」の通りの利益が出ないことが、数年後に分かったりすると、それを見越してつけた「のれん代」が価値のないということになりますので、今回のような、「のれん代の減損」ということで、それがマイナスで処理されるため、当初の想定していた黒字から、一気に大赤字・・・ということになります。

上場企業は監査法人がこの辺りのルールに沿って監査しますので、今回の東芝の監査法人であるPwCのような「うちは監査法人としてこの償却をしない決算は認めません」ということになります。

船井総研ではM&Aの際の買収価格査定の際には可能な限り「恣意的要素」を入れないように算定するようにしています。

船井総研はあくまで総合経営コンサルティング会社であり、その1つの方法論としてM&Aがありますので、高い価格で他社をM&Aを行ってしまうと、その後のコンサルティングに大きな影響が出てしまいます。

「買ったらおしまい、売ったらおしまい」にはできません。あくまで全て、売り手企業は「現在価値」で見るべきと考えていますので買収価格の設定は

資産価値=「時価換算での純資産(資産の中で回収のできないものを見極めて)」

              +

のれん代=「直近3ヶ年の平均年間キャッシュフロー(当期純利益+減価償却費)の5年分」

を一つの基準にしています。

これであれば、M&Aの将来リスクを抑えつつ、ある程度の納得性もあります。

(当然、売り手はもっと高く売ろうとしますが)。

ちなみに上場会社は「時価総額」という形で企業価値は表に出ていますが、上場会社は「上場」というプレミアムがついているので概ね、上記で算定される額の2倍が「時価総額」になっていたりします。

(上場企業100社以上をサンプルにルール化しました)。

2倍以上の株価が付いている会社は「高く評価されている」と考えられます。

皆様も「自社を評価して欲しい」「買収候補先があり、そこの適正価値を知りたい」というご相談があれば、船井総研までお問い合わせ下さい。

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