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食品製造業界M&Aに関するメリットとデメリット

  • 食品製造・食品卸 M&Aレポート

食品製造業界のM&Aにおけるメリット及びデメリットを、譲渡側・譲受側双方の観点からお伝えしたいと思います。

食品製造業界M&Aの現況

まずは、食品製造業界におけるM&A市場の現況ですが、国内市場縮小に伴う競争激化や、アフターコロナを見据えた経営基盤の強化、新興国の経済発展を背景とした原材料価格の高騰、また後継者不足等を背景に、業界再編が進行しています。2021年においても件数は前年から4割強増加し、その形態も、近隣同業による買収から飛び地の同業買収、異分野の食品製造会社による買収から、全くの異業種による買収、さらに金融投資家による買収まで、多様なプレイヤーによるM&A事例が見られます(レコフデータ参照)。

そのような業界マーケットの環境下で、譲渡側がM&Aを通じて得られるメリットには、例えば下記のようなものがあります。

食品製造業界M&A【譲渡】:売主のメリット

【売主のメリット】

①創業者(家)利益の享受

食品製造業界のバリュエーション(譲渡価格条件)は全産業の平均並みで、実質収益力を備えた事業であれば、平均的な株価/キャッシュフロー倍率や暖簾を享受されている事例が多く見られます。

②後継者問題の解消/地場産業の継承/雇用の維持

食品製造業は装置産業でもあるため、比較的業歴の長い会社が多くありますが、後継者不在の問題は他の業界と同様に深刻さを増しています。会社清算には多大な労力がかかるうえ、残余財産の分配も税制上恵まれておらず、創業時からの内部留保を享受できないケースが見られます。また、食品製造業には地域産業の「顔」的存在の会社もあり、その消失は地域経済の活力をそぐことも多く、M&Aによる継承はそれらの懸念解決の一助となり得ます。

③個人保証や担保の解除

親族内承継や社内承継では、新社長の経営能力や与信力への信認が乏しい場合に保証や担保を求められる場合もありますが、M&Aによる第三者承継では、大半のケースで新オーナーの与信力や資金によって、個人保証や担保は解除されます。

食品製造業界M&A【譲渡】:対象会社のメリット

【対象会社のメリット】

④販売先の拡充

譲渡対象会社単独では販売先開拓に限界があるものの、提携相手先のネットワーク/販路を活用することで、売上が安定的に伸長するケースがよく有ります。

⑤仕入先への交渉力向上、購買・物流のコストダウン

提携相手先とのグループ化で「規模の経済」が働き、共同での仕入・購買や物流の共通化でコストダウンが為されるケースを多く見受けられます。

⑥生産効率の向上、商品開発力の強化

提携相手先の製造・開発ノウハウを活用することで、新商品の開発や生産性の向上を果たしているケースも多く見られます。

⑦信用力の補完

提携相手先から信用力を補完してもらうことで、対象会社単独よりも資金調達を容易にし、設備投資機会を積極的に活かすことを可能にします。

食品製造業界M&A【譲渡】:売主のデメリット

【売主のデメリット】

①経営の自由度の喪失

M&Aでは対価を受け取る代わりに、通常は相手方に経営権(または事業)をお渡しします。譲渡後に売主がそのまま代表取締役に残られるケースも少なからず有りますが、オーナーシップは提携相手先に渡っている為、完全に自由に事業運営をすることは出来ません。そのことに留意し、譲渡に際して、引き続き対象会社の経営に携わることを希望される場合は、相手方の経営方針や譲渡後の青写真をしっかり正確に把握し、信頼関係を築いて同じ目標に進めることを腹落ち出来るまで確認する必要があります。

食品製造業界M&A【譲渡】:対象会社のデメリット

【対象会社のデメリット】

①従業員/取引先の離反やブランド毀損のリスク

M&Aは、緩やかか濃密かの違いはあれど、異なる組織体同士の統合/グループ化が起きる経済行為であるため、対象会社に一定程度の摩擦や動揺は生じます。その過程で、新たな取り組み方針に付いていけない従業員や、新オーナーとなる企業グループとの取引を敬遠する先が現れるリスクは否定できず、そのリスクが顕在化した時、企業価値が毀損する可能性があります。そのようなリスクを僅少化させるため、少なくとも対象会社のキーマンだけは譲渡実行前に提携相手先と面談させる、或いは代え難い重要な取引先とはM&Aを理由にした取引解除はしないことを事前確認しておく、などの手立てを用意しておくべきケースもあります。

また一方で、譲受側に立ってM&Aによるメリット・デメリットを考えてみますと、例えば下記のような事項が挙げられます。

食品製造業界M&A【譲受】:買主のメリット

【買主のメリット】

①取り扱い商品群やブランド力の拡充

②新しい販売チャネルの獲得

③新しい製造・物流拠点の獲得による商圏拡大

④事業基盤の拡大によるスケールメリット

⑤譲渡対価以上に事業価値創出が出来た場合の企業価値(EV)向上

食品製造業界M&A【譲受】:買主のデメリット

【買主のデメリット】

①スタンドアローンの企業/事業価値に比して譲渡対価を支払い過ぎた場合、減損損失を通じた企業価値低減のリスク

②特に譲渡対象会社で衛生管理の不備や品質安全管理に問題が生じた場合、グループ全体としてレピュテーションやブランド力を落とすリスク

食品製造業界M&Aのまとめ

いかがでしたでしょうか。M&Aは売り買い当事者双方の中枢的経営戦略が絡んでくるため、いいとこ取りは出来ませんが、自社だけでなく相手側の立場にも立ってメリット・デメリットを整理しておくことで、自社にとって何が正しい選択かが見えてくることに繋がります。

今回は食品製造業の一般的ケースでの、M&Aにおけるメリットとデメリットをお伝えさせて頂きましたが、事業会社様毎に内容は多少変わりますので、もしご関心を持たれた場合には、是非弊社までご連絡頂ければ幸いに存じます。今や身近な経営戦略となったM&Aも駆使して、皆様が経営される企業が更なる飛躍を遂げられることを願って止みません。

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