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北海道苫小牧の葬儀社が山形の葬儀社を譲り受け、グループ経営を加速させた理由

  • 葬祭業

右:めもりあるグループホールディングス株式会社 代表取締役 沖本善昭様

左:株式会社船井総合研究所 M&A支援部 マネージング・ディレクター光田 卓司

インタビュアーは、株式会社船井総合研究所 M&A支援部 チーフコンサルタントの谷口が務めさせていただきます。

<譲り受け企業概要> 

 企業概要:めもりあるグループホールディングス株式会社

 所在地:〒053-0045 北海道苫小牧市双葉町3-25-13

 代表者:代表取締役 沖本 善昭

 企業URL:https://www.memorial-gr.com/

<譲り渡し企業概要>

 企業概要:株式会社 博善社 

 所在地:〒990-2323 山形県桜田東2-13-18

 企業URL:https://4000.co.jp/

まずはじめに、沖本社長とめもりあるグループホールディングス株式会社の歴史について教えてください。

沖本社長:事業を始めたのは祖父であり、父が2代目、私が3代目になる創業88年の会社です。祖父が仏壇製造の会社に丁稚奉公しており、その後室蘭で仏壇製造業で独立したのが始まりでした。当時は戦時中であり、室蘭は鉄鋼の町であったため、町が大きな被害に遭っていたようです。

戦争が終わると、仏壇製造から、仕入れて売るという業態に転換をしたようです。北海道で5店舗ほど展開し、その後札幌にも進出しております。その後、2代目である父が事業を引き継ぎ、葬儀場の経営も始めました。当時には珍しく葬儀場経営にサービス業の考えを導入しており、早くからサービス品質に気を付けていました。

M&Aについては、2代目の父が経営者である時に、株式譲渡で債務超過の会社を買収していました。昭和の時代でしたので、M&Aは比較的珍しかったのかと思います。

「安く買っても失敗したら高い買い物であるし、高く買っても成功したら安い買い物だ」と父は言っていました。

その後、私が3代目に就任しました。2代目である父が法人を9つ作っており、そのうちの一つの代表に就任したのが始まりです。財務について詳しい方が社内におらず、財務の勉強から始めました。その後、土地や建物とで約4億円程を投資した新たなコンセプトの葬儀場をオープンしました。

船井総研とのお付き合いの経緯からお聞かせ願えますと幸いです。

沖本社長:葬儀場の建築設計を多く手掛けられているインタージャンク様(https://inter-junc.com/)から、今度、経営の勉強会するから来ない?と誘われて参加した勉強会でたまたま船井総研さんに出会いました。

財務のことはかなり勉強してきましたが、これからはマーケティングの勉強も必要だ!とその時実感しましたし、世の中には、勉強好きの社長はたくさんいるんだなということが分かりました。勉強会の後の懇親会の席で、他の社長やコンサルタントの話を聞き、すぐに船井総研さんの葬儀の研究会に入会しコンサルティング契約をしました。

船井総研光田:確か2018年からのお付き合いだったと思うのですが、当時からステキな会社でしたが、年々ステキな組織になってきており、本当に従業員様がイキイキと働かれている会社ですよね。

沖本社長:企業理念の浸透作業も、船井総研さんの指導を受けながらやっています。そうした結果、お客様が何をされると嬉しいか、ということを従業員自らが考え行動してくれるようになったと思います。

譲り受け企業の経営者が語るM&Aについて

M&Aの話はどういった経緯で舞い込んできたのでしょうか?

沖本社長:船井総研さんと立てた5か年計画の中で、本州に上陸するという計画はしておりました。そこで、条件が合う案件を船井総研さんが持ってきてくれて、実際の検討をはじめました。M&Aの条件としては、その都市の商圏人口、業績面、前経営者の影響力等3点ほどを事前に考えておりました。

船井総研光田:実際に譲渡企業である博善社様も船井総研の会員さまでした。前オーナーとお話ししている中で、会社を譲りたいという話が出てきまして、沖本社長にご相談させていただいた、というのが今回のM&Aの始まりでした。初めてその話が出たのが2021年の夏頃でして、その後紆余曲折があって2022年8月にM&Aの成約となりました。

沖本社長:5年間の経営計画の中に「M&Aをする」という項目を立てていたところ、5か年計画の中で実行できました。やはり口に出して、発信するということが大事なのかと思います。まさに言霊です。

M&Aアドバイザーが語る、良いM&Aの秘訣とは?成功要因とは?

船井総研光田:安く買っても失敗したら高い買い物となるし、高く買っても成功したら安い買い物となるという、沖本社長の考えはM&Aで成功する大きな要因だと思います。

また、めもりあるグループホールディングス様の経営は非常に順調なのですが、自社の経営がうまくいっていない会社が譲り受け先になった場合は、当然ですがその後の投資回収は厳しくなります。

今回のM&Aは、飛び地であるというマネジメント的に難しい点もあったと思います。その中で成功したポイントは3点あると思います。

1つめは、同業種の譲り受け、かつ、めもりあるグループホールディングス様が成長企業であったこと

2つ目は、M&A後、PMI(M&A後の統合)にマネジメント層が十分な時間をかけることができたこと

3つ目は、法人を買ったというスタンスではなく、グループの中に入っていただき、お互いの良い点を尊重して伸ばしていこう、という意識が沖本社長はじめめもりあるグループホールディングス様全体の意識としてあったこと

だと思っています。

そういうスタンスでいらっしゃったからこそ、売主様も、沖本社長なら安心できる、売りたいという話がありました。


逆に、M&Aで一番失敗するパターンとしては、経営が上手くいっていない異業種を、安く買った場合なのかと考えております。

最後に、今回M&Aをしてよかったですか?

沖本社長:M&A後に1年が経ちますが、この一年間を振り返ると、良かったと思います。

業績については、譲渡企業自身の業績がもともと良かったことから、業績の細かい数字は追っていませんでした。しかし、結局は業績は伸びています。企業統合のフェーズはひと段落しそうですので、今後は細かい数字も追っていこうと思います。

M&A後の統合作業としては、役員が週替わりの交代制で北海道から山形に来ており、北海道のメンバーが山形に常駐するようにしています。また、北海道の従業員から7名選抜して、同様に週替わりで山形に常駐するようにしています。そのように、北海道メンバーが常駐することで、めもりあるグループホールディングスとしての働き方や考え方、コミュニケーション手法を伝えるようにしています。

M&Aの翌日に山形の従業員の方々と初めて顔を合わせ、その後ひと月ほど一緒に働いていたところ、社章を私も付けたい、と従業員から言い出してくれたことがありました。社章の着用を義務付けると、押しつけがましいのかな、と考えていたこともあり、特に社章については話していなかったのですが、従業員から社章についての話をしてくれたのは、本当に嬉しかったです。その後、理念研修等も実施しております。


船井総研光田:M&A後に、何を実施するか社長は事前に考えていましたか?

沖本社長:100ケ日計画のような計画を立てようと、M&Aのクロージング前から考えていて、何冊も本を呼んで準備はしていましたが、結局は週替わりで山形に常駐してくれた役員と社員のおかげで首尾よく進められたのかと思います。

M&Aでは譲受企業と譲渡企業の2者が存在しますので、ともすれば従業員間で変な上下関係のようなものが生まれることがあると思いますが、そういうのは絶対に避けたかったので、「鉄の掟」のようなものを発信していました。

・マウントを取ってはいけない

・コミュニケーションを良くとる

・北海道での当たり前を押し付けない

・勉強させてもらっているというスタンスで伺う

船井総研光田:めもりあるグループホールディングスさまでは、もともと理念や中期経営計画が従業員様に浸透しておられるので、従業員様を山形に常駐させる件でも反論が出なかったのだと思います。

沖本社長:君は、7人のうちに選ばれたよ、と伝えたところ、「ありがとうございます」「それは光栄に思います」という反応でした。そういった前向きな考えの従業員ばかりに、北海道から山形へ行っていただいていますので、とても良い影響を及ぼせたのかと思います。やはりM&Aでは、会社一丸となって譲渡企業を受け入れていこう、という考えが大事なのかと思います。

今回のM&Aを通して、博善社の発展に寄与でき地域貢献ができているという実感もとてもありますし、何よりも譲り受けさせていただいた私どもの従業員の成長にも繋がっています。

そういう面も踏まえて、博善社様をグループに迎え入れることができて本当に良かったと思っております。

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