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人材ビジネス業のM&A時流

  • 人材派遣・アウトソーシング M&Aレポート

人材ビジネス業の時流

人材ビジネス(人材派遣・人材紹介)の市場規模は拡大傾向となっております。一時期はコロナ禍の影響で成長が鈍化しましたが、人材採用ニーズは回復基調にあり、今後も市場の拡大が予想されています。ポイントは、人材ビジネス業へ新規参入する企業の増加と、企業から求められる人材ニーズの多様性・専門性になります。

人材紹介は求職者とクライアント企業を引き合わせる業となりますが、法令上は営業許可を取得して行われます。このため従前では、一定の参入障壁がありました。

しかし、近年では人材紹介プラットフォームや求人メディア、アプリ―ケーションの台頭が著しく、人材ビジネス業内部での競争が激しくなっております。こうしたテクノロジーの進歩により、求職者と企業のマッチングや仕事の紹介がより効率的に行われています。

また、AIやデータ分析技術などのテクノロジーが活用される局面が増えています。人材のスキルや能力を的確に評価し、採用プロセスを効率化するといった技術革新がみられるようになりました。こうした領域からも人材マーケットへの新規参入が進んでいる状況です。

近年の特徴のもう一つは、企業から求められる人材が多様になっている点もです。ダイバーシティーインクルージョンという語が流布していますが、多様性・包摂がビジネスにおいて重要視されるようになっています。その趣旨は、多様性を取り入れることで、企業の競争力を高める狙い、といったところにあるでしょう。人材ビジネス業界もその流れに乗り、多様な人材の紹介を行っています。

専門特化した紹介媒体も増えてきており、例えばエンジニア専用、飲食店専用といった、職種や業界別の専門媒体も数多く見受けられるようになりました。雇用形態の点からも多様性は進んでいます。例えば、フリーランスや働く人々の数が増加しています。企業はプロジェクトベースでの人材の雇用やアウトソーシングを積極的に活用し、柔軟な労働力を確保するニーズが増えてきました。人材ビジネスでは、こうしたフリーランスやコントラクターのニーズに応えるためのサービスやプラットフォームの提供が重要になっています。

また、人材ビジネス業に限ったことではないですが、今後いずれの業界においても業界再編が進行します。国内マーケットは、長期的にみて人口減少の影響を受けて縮小するためです。ヒト・モノ・カネといった資産が有力企業に集中していくなかで、自社の存続をかけた競争が進行していきます。

ほかにも、事業承継ニーズもポイントになっております。。国内の中小企業約 300 万社のうち、オーナー経営者様の平均年齢は 66 歳で事業承継のニーズが増加しております。なかでもオーナー経営者様のご年齢が 60 歳以上の会社のうち、後継者が不在とされる企業数は 48%を超えています。人材ビジネス業界でもオーナー様の高齢化、そして後継者がいないというケースは例外ではありません。子息・ご令嬢が不在、もしくは、いるけれども違う職業についており戻ってこないというお話を伺います。

人材ビジネス業におけるM&Aのポイント

上記に触れた人材ビジネス業のトレンドの中で、自社が存続していくためにはM&Aを利用することも一案と言えます。M&Aのメリットは、譲受主からすれば人材ブランド経営ノウハウネットワーク、そして不動産といった有形資産を時間をかけずに取得できる点にあります。譲渡主の立場からすると、競争力のある大手と手を組むことで、自社の成長が期待できる、といった点にあります。

経営資源やブランドM&Aの手法には株式譲渡事業譲渡、等いくつかの手法があります。中小企業のM&Aでよく使われる手法の一つに株式譲渡があります。これは、会社の株式を第三者へ売買する方法です。特に、経営権の取得を目的とし発行済株式100%の譲渡の場合、会社の権利義務も含めて包括的に引継ぐことになるので、許認可を引継ぐことになります。上記で触れたように人材ビジネス業は許認可取得によるビジネスへの影響が大きい業となります。M&Aの手法選択は詳細に検討すべきポイントとなります。

さて、第三者への譲渡を検討する際に、どのような点に留意すべきでしょうか。なるべく納得できる譲渡条件に近づけるためには、以下の準備があると比較的スムーズになります。

譲渡対価の希望額と業界相場の乖離防止

中小企業で比較的利用される企業価値評価(バリュエーション)の方法として、EBITDAマルチプルがあげられます。これは下記2つの要素の合計額をもって企業価値とするものです。

ⅰ)会社の現預金及び生命保険積立金などの現金同等物から有利子負債(借入金・リース債務等)を比較考慮し、正味の現預金の額(あるいは有利子負債の額)を計算

ⅱ)EBITDAという会社が一年間に事業を通じて稼ぐ金額を試算し、業界相場の倍率を掛けて計算します。損益計算書の営業利益に減価償却費や生命保険料といった勘定科目を足し戻した額をEBITDAとすることが多く、これに葬儀業界相場となる3倍~5倍程度のEBITDA倍率を乗じる

ポイントは希望譲渡価格が相場価格からあまりにも乖離した場合、そもそも候補先との交渉がスタートしない点です。

今後長期的に見た場合、業界の先行きの不透明感が増すなかで、譲受ニーズと比較し、譲渡ニーズが増加すると予測されます。結果的に、買手市場の傾向が強まります。すると企業価値の相場(つまりEBITDA倍率)は低下傾向になると予測されます。

当社では無料で簡易的な企業価値算定を行っておりますので、ご興味がある場合はお問合せください。

会社の基礎資料・財務・労務関連の資料

M&Aの検討には、いわゆる決算書以外の財務資料も必要となります。顧問税理士から毎年決算が締まった後に決算資料一式を受け取られると思いますが、過去3カ年分と進行期の試算表をスムーズに提出できるかが重要です。(一式とは、貸借対照表・損益計算書・株主資本等変動計算書・個別注記表のほか、勘定科目別内訳明細書・法人税申告書(及び別表)、法人事業概況説明書、消費税及び地方消費税申告書、固定資産台帳・減価償却費明細書、総勘定元帳が該当します。)

また、事業計画や拠点別のPL、日頃の経営会議のKPI管理資料も事業の収益性を検証するうえで必要資料になります

財務面以外の資料としては、株主名簿や会社定款やといった基礎的な資料も必須です。歴史ある企業様では過去に株式を贈与や相続している場合もありますが、会社設立以来の株式の移転について、一通り疎明できることが望ましいです。M&A後に予期せぬ第三者が株式を持っていると大きなトラブルになるため、デューデリジェンス時に株式移転関連の確認は重点的に行います。定款ですが定款変更を行った場合は最新の定款に加えて、定款変更決議の株主総会議事録も必要となります。

労務面では、就業規則、給与台帳やタイムカードも必須となります。労働時間の管理方法次第では未払い残業代、つまり簿外債務が認められる可能性があります。

所有不動産関係資料(証明書・権利書)

不動産関連の資料としては、建築基準法に基づく建物検査済証・消防法に基づく建物検査済証、登記権利証明書を保管しておくことが求められます。当社の過去の案件では建物を自前で立てず売買購入するケースや、平成初期までの建築物の場合、書類が見当たらないというケースもありました。こうした書類がないことは法的なリスクとなり、M&A検討が危ぶまれるほど重要なポイントとなります。

なお、ご自身の所有する不動産について会社から賃料を得ている場合は、M&A後の扱いも整理事項となります。M&A後も引き続き会社との賃貸借継続するのか、不動産を買主に売却するのかという選択肢があります。一般的には斎場跡地は不動産としての転用が効きづらいため、賃貸借契約の継続を好まれる譲受企業が多い印象となります。

ご自身と会社の取引の場合、一般的な相場価格よりも高い賃料を設定しているケースも見られますが、M&A後は市場相場価格を前提とした賃貸借のまき直しや、事業継続に不要な場合は契約解除となる場合もあります。

経営者の役割(権限委譲)と引継ぎイメージ

事業承継の一環でM&Aを検討する場合、代表様引退後の会社や事業の運営方法も主要な論点です。新たに役員を派遣する、会社の若手のホープを幹部に引き上げる、親会社のマネジメントと統一するなど様々な方法がありますが、現オーナー様の業務の権限移譲が進んでいない場合、案件検討が進まない・あるいは売主様の希望する引継ぎ期間に収まらない、という可能性が生じます。現オーナー様が現場に出ていないと運営が回らない場合は注意が必要です。奥様が経理担当というケースも頻繁にありますが、こちらのバトンタッチも重要な検討事項となります。

人材ビジネス業のM&A事例

人材ビジネス業では、大手・中堅企業を問わず数多くのM&Aが行われています。以下では、大手企業によるM&A事例の一部をご紹介します。

コプロ・ホールディングスは高砂熱学工業の子会社となるヒューコス株式会社を譲受(2021年)

コプロの中核企業の一社であるコプロ・エンジニアードは建設業界を中心とした労働者派遣などを行っています。建設業界では2025 年開催予定の大阪・ 関西万博、2027 年開業予定のリニア中央新幹線(品川・名古屋間)関連のプロジェクトをはじめとした、堅調な建設需要が見込まれている、とされています。 一方で、国内の労働人口減少や、安全強化や労働時間規制といった法令強化をうけて、業務が細分化といった、人材不足が顕著になっている背景がある、とされます。高砂熱化学工業では、子会社となるヒューコス(年商13億円程度)にて人材サービスを展開していましたが、本件M&Aにより高スキルまたは資格を保持する技術者を多数受け入れ、更なる成長を目指すとされています。

ワールドホールディングスが人材サービス子会社のディンプル(大阪市)を譲受(2022年)

ワールドホールディングスは総合人材派遣・請負、コンサルティング業務の大手企業となります。フロントリテイリングの子会社で人材サービス事業を手がけるディンプルの株式90%を37億8000万円で取得しました。同社の年商は96億円程度となりますが、小売業・百貨店業界に主要顧客を抱えてた同社は、接客スキル・経験を備えた人材を豊富に有する点が特色です。ワールドホールディングスは接客販売やコンタクトセンターといったサービス業の人材事業を強化する狙いとなります。

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