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賃貸管理業界におけるM&Aの時流と今後

  • 不動産賃貸管理 M&Aレポート
不動産 M&A

賃貸管理業を経営されているオーナー経営者向けの記事です。賃貸管理業界において、長らくコンサルティング活動を実践してきました経験から、今回賃貸管理業の時流について、解説しています。

M&Aが活発化している賃貸管理業界において、その背景はどうなっていて、成長する企業はどのようなM&A戦略を描き、実践しているのか、そのヒントを見つける機会になれば幸いです。

賃貸管理業界におけるM&Aの時流

買い手の場合

一つは、賃貸管理業での中堅・大手、また地域の一番店企業です。新たな商圏拡大や、地域シェアを上げる事で、より自社の成長拡大を目指すシンプルな理由です。

同じ事業戦略で、短期間で手間なく、管路委委託戸数・資産コンサルティング売上を拡大する事ができます。もう一つは、関連業界にて、賃貸住宅におけるインフラ・サービスを扱う中堅・大手会社、さらに地域で中堅以上の不動産仲介・住宅建築会社などが挙げられます。

ともに売買、建築ではシェアを獲得し、自社の総合住まい産業として、また安定した事業展開を行う事を狙いとしています。いずれも、建築・不動産業界の再編禍の中での、成長戦略になります。企業成長には、その事業における市場拡大に合わせて、自社のシェア拡大が基本とされてきましたが、今の成熟した日本の経済状況禍では、手段としてM&Aが重要視されてきています。

売り手の場合

賃貸管理業では、圧倒的に後継者問題です。順調に経営を続けていたが、次の適材の承継者がいない場合に、価値のある状態のうちに、希望する買い手企業に対して売却し、第二の人生設計を立てるというものです。業務の特性から、親族が今後の経営承継を受け入れない場合もあります。

昨今は、経営者ご自身が55歳を超えるあたりから、次なる継承を考えはじめ、60歳前後辺りに何かしらのきっかけ(家族状況、経営状況、体調など)より、現実的にM&Aを選ばれるというケースが非常に多くなっています。

ただし、賃貸管理業における創業社長の傾向としては、営業バリバリで、会社を引っ張ってきた意識より、後を継げる人材がいないと、その時期が後手後手になってしまう方々も多くみられ、後々の企業価値に大きく影響を及ぼす場合もあります。

また昨今増えているのが、40代から、50代の経営者にて、ある程度賃貸管理業では管理戸数を伸ばし、売上も上げてきたが、さらなる事業への展開を考えるうえで、中堅・大手のグループに属し、自身も雇われ経営者として、次なるステップへ向かう方もいれば、逆にさっぱり現業の事業は譲渡し(株式分割や、事業譲渡など)、新たな事業を自身で立ち上げようとするケースもあります。

いずれも、成長の為の手段として、M&Aを活用されています。一方経営者の年代は限定しなくても、事業の停滞、管理戸数や売上ダウンから、このまま自力で続けていくのが厳しく会社株式譲渡を考える方も増えています。

ただし、この場合は、かなり厳しさが続いた後になってしまい、企業価値が大きく下がってしまっているケースもあります。早めの判断が必要といえるのでしょう。賃貸管理業での売却の実例を多くみてきましたが、今現在の状況にもよりますが、今すぐ売らないとしても、出来ることからすぐに何か行動を起こすことをお勧め致します。

仮に売却しなくても、企業を永続させるうえで不可欠です。逆に、これが出来ないようでしたら、独力での企業経営が困難な状況にあるという一つの物差しにもなると思います。

賃貸管理業界のM&A手法

賃貸管理業における、M&Aの手法は複数ありますが、その中で多く(7~8割)を占めているのが株式譲渡です。これは賃貸管理業界のM&Aも、例外ではなく、株式譲渡スキームが大半を占めています。株式譲渡とは、対象会社の法人格は原則変わらず、株式(及び付帯資産)を譲渡することで新たな株主に経営権を譲渡するスキームです。

>>株式譲渡についてはこちらのページもご覧ください

今までの株主が、経営者として一定期間残るケースもあり、今までの事業戦略はそのままにして、従業員の雇用形態や、取引先と契約関係などもそのままで、いわゆる株主の立場だけが変更となります。手続きが簡易というメリットがある一方、買い手にとっては簿外負債等のリスクも引き受けることになるデメリットもあります。

株式譲渡に次いで多いのが事業譲渡です。こちらは会社の資産、契約、従業員雇用等を一つ一つ譲渡するといったスキームです。株式譲渡とことなり、資産の所有権、契約関係、従業員雇用関係は当然には引き継がれず、一つ一つ確認して譲渡しなければならないため、手続きが煩雑です。

一方で、買い手としては簿外債務等の引き受けリスクを軽減することができますし、売り手にとっても例えば他の事業がある場合などは、不動産仲介事業だけ譲渡するといった切り売りができるというメリットもあります。

またメイン事業を譲渡する場合は、会社分割をして新たな会社に資産を残し、別事業を実践する場合もあります。売り手企業の方向性、また買い手企業の要望に合わせた手法を考える必要があります。

賃貸管理業界のM&A相場

中小企業M&Aにおける代表的な株価算定方法としては、「時価純資産法(年買法)」と「マルチプル法」という2つがございます。それぞれの計算方法や、賃貸管理業界における相場は以下です。

1)時価純資産法(年買法)

時価換算した総資産(簿外資産含む)から、時価換算した負債(簿外負債含む)を差し引き算出された時価純資産を株価とする考え方です。対象会社の業績によっては、そこに営業利益などの「のれん」を上乗せするケースもあり、この算出方法を「年買法」といいます。

2)マルチプル法

償却前営業利益の4~5倍から正味有利子負債(有利子負債-現預金等)を差し引き算出された額を株価とする考え方です。先述の時価純資産法が「資産」をベースとした算出方法に対し、「キャッシュ」をベースとした算出方法となります。

「4~5倍」という数字については会社ごとに異なりますが、ストックビジネスでの未来への利益予測も鑑みて、需要のある業種として、賃貸管理業界においては昨今5~7倍が許容範囲となっています。ここから、対象会社の強み(独自のビジネスモデル等)や弱み(管理増加戸数・入居率など)を踏まえ、倍率を増やしたり、減らしたりし価額を交渉することとなります。

そのほか、賃貸管理業では、管理委託戸数1戸で売上総利益が10~15万円、営業利益1~2万円ほど、ストックとして売上維持できると言われています。もちろん、業務内容、単価、エリア性から、一概には言えませんが、業界独自の目安として、管理委託戸数1戸あたり10万円~20万円というシンプルな算定方法も言われています。ここに、正式には、上記1)、2)の算定方法を加味し、ていくとも言われています。

コロナ禍から、M&Aが活発化し出してきている賃貸管理業界において、その背景から、改めて買い手・売り手企業は、どのようなM&A戦略を描き、実践しているのか、考える機会にしてみてください。

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