2020年の中小企業M&Aのポイントは「労務・人事」~時流を予測する~
- M&Aの時流
年々増え続けているM&A、レコフデータ社の発表によりますと、2018年のM&A件数は3,850件、2019年はさらに伸び続け11月末で3,705件とほぼ確実に昨年を上回ります。
とはいえ、日本企業の休廃業数は概ね28,000社であり、M&A件数と比較してみるとまだまだ増えることは容易に想像がつきます。
このコラムをご覧の皆様にも取引先から、
「長年お世話になっている御社にウチの会社を譲り受けてもらえないか?」
とか、弊社のようなM&Aを取り扱う会社や金融機関から、
「この企業が譲渡希望で、御社とのシナジーが充分に見込めますが、いかがでしょうか?」
など、今やM&Aを身近に感じる機会も増えているのではないでしょうか。
2019年に入り、M&A(売り側)の相談が急増しているのが、
「自身はまだまだ現役だが、企業経営の存続を考えると力のある企業と一緒にやった方がいいのではないか」
または、
「後継者(子息等)はいるものの業界の先行きを考えると、自社だけではなく他社とともに力を合わせて成長を目指す方がイメージしやすいので、後継者は自社に残りつつ株式を譲渡できないか」
といった内容です。
つまり、後継者はいるものの成長するためには自社だけだと難しいと考えている方が急増しているという事です。
たしかに外部環境の変化が激しく、業界によっては、異業種の新規参入や業界の競争激化、材料単価の高騰、売上単価の減少など、ある程度の規模感にまで企業が成長しなければ環境の変化に耐えられない、ということも出てきており、いよいよ決断の時期がきているためでしょう。
その一方で、M&A(買い側)の目線にも2019年から顕著に次の2つの変化が現れています。
①M&A後に譲渡企業の経営者や経理担当者は残ってもらえるのか
②働き方改革関連法の順次施行により、確実に残業代を払っているか、既定の時間外以上に働かせていないか
つまり、人材不足かつ法令規制による、M&A後の人的なリスクが目に見えているため、クリアできるかどうか、最も買い手が気にするポイントになったと言っても過言ではないでしょう。
①の譲渡企業の経営陣の残留については、以前では人材が足りていたことで、
M&A後は売り手のオーナー兼社長にはご引退いただき、買い手のNo.2や外部招聘した経営者を送り込むといったことが通常でした。
ところが2019年以降では、プロ経営者の人材不足が多く、買い手としても可能であれば経営者に残ってほしいといった要望を聞くことが多くなっています。
また有資格者がどれだけ残るのか、などもM&Aにおいて大事な検討事項になりました。
この点、上手く売り手と買い手のニーズがマッチしてきており、M&Aが加速するものと思われます。
②の働き方改革関連法の順次施行による時間外賃金や年次有給休暇の確実な取得、正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間の不合理な待遇差の撤廃が求められることから、現状できていない場合は、M&A前に売り手オーナーが改善する必要が出てきております。
具体的には残業代が想定通り払われていないなどの労務リスクが改善できない場合に、外注などのコストが増えることで、譲渡対価が大きく目減りする可能性があります。
たとえば、夜勤や繁忙期と閑散期の差が激しい業種はそもそもの今までのビジネスモデルが維持できなくなるほどの影響を受けてしまう事も弊社が担当させていただいた事例でございました。
この労務管理の改善には最低半年程度の時間を要します。
2020年には、たとえすぐにM&Aをしていなくても、いつでも決断できるようにしっかりと上記の2点をクリアしておくことが大切です。
みなさまも改めて自社が今後あるべき姿を考える参考にしていただければ幸いです。
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船井総研入社後は専門サービス業の経営コンサルティング部門の統括責任者として多数のM&Aを経験。現在は、M&A部門の統括責任者をつとめる。買って終わり、売って終わりではなく、M&A後の企業成長を実現するマッチングに定評がある。過去経営支援を行ってきた企業は200を超える。
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