PEファンドならではの事業承継とは?活用術をご紹介
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【1】PEファンドのイメージの転換期
PEファンドはここ数年で認知度が高まり、そのイメージは今が転換期と言えるのではないでしょうか。「PEファンドによる株式の取得」について「買収」という言葉がメディアで使用されるケースがあるため、抵抗感を持つ方が多いのも事実ですが、積極的にPEファンドを活用する動きが活発になっています。
数年前から政府でもPEファンドを活用して国内の中小企業を活性化する仕組みについて検討を進めてきました。この背景には、成長ポテンシャルがあるにもかかわらず、なかなか成長できない企業や、優れたビジネスモデルでも後継者の不在により消えていってしまう企業を少しでも減らしたいという意図があります。
PEファンドは投資とリターンの差額で利益を得るビジネスモデルであるため、自らの利益のみを優先するように映るかもしれません。しかし、PEファンドは事業の継続と成長を、資金面、人材面などのサポート通じ、投資先となる中小企業の経営に積極的に参画することで企業価値を上げるという機能があります。この機能に注目すれば、PEファンドに対する抵抗感を払拭できると思います。
【2】PEファンドの活用例
「ベビースターラーメン」で有名な、おやつカンパニーは2014年に米国系PEファンドであるカーライル・グループと戦略的業務資本提携を行いました。このケースは「事業承継」でPEファンドを活用した例です。おやつカンパニーは創業家で経営することも可能だったと思いますが、PEファンドに事業を引き継ぐことを選んだのです。
事業承継の際に、譲渡先を事業会社ではなくPEファンドをパートナーとして選ぶメリットとしては一般的に以下の要素があると考えられます。
(1)事業会社には無い情報ネットワーク(グローバルネットワーク)を活用できる
(2)譲渡先の事業会社の方針に左右されず、ダイナミックな変革を図れる
(3)事業会社ではできないスピード感で企業価値を高めることができる
もともと海外展開を見据えていたおやつカンパニーとしては、類似企業の傘下で制約を受けながら事業を継続するのではなく、スピード感のある事業展開を可能にするPEファンドと手を組むことを選択しました。
おやつカンパニーの場合は、バイアウト系(51%以上の出資比率を目指す)PEファンドがパートナーとなったので、経営権はPEファンド側に移りましたが、経営陣を丸ごと入れ替えることはPEファンドにとってもリスクが高く、新たなメンバーを揃えるにも手間と時間を要するため、旧経営陣が主体となり経営を続投しました。
経営権の維持を優先する場合には、グロース系のPEファンドを活用したり、バイアウト系PEファンドの中でも成長性が高い事業の場合は必ずしもマジョリティをとる訳ではなく柔軟に売り手側の要望に応じて出資比率を調整するケースもあるので自社のニーズに合ったPEファンドを選ぶと良いでしょう。
税務監査・財務コンサルティングの業務経験に加え、事業承継・事業再生コンサルティングの成功経験を多く持つ。2017年10月に船井総研中途入社後、M&Aコンサルティングにより22件の案件成約を担当。 現在、船井総研における事業承継・M&Aコンサルティングの中核的な役割を担う。
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