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地域一番の整骨院がM&Aに成功した企業と人との向き合い方~M&Aは経営者の新たなステージへの挑戦~

  • 整骨院

神奈川県横浜市を中心に31店舗(2023年2月時点)の整骨院を展開しているさくらメディカル株式会社。「すべての患者様は自分の家族」というコンセプトのもと、患者様第一を貫き、地域から多大な支持を得ている整骨院です。そんな同社は2017年の9月にM&Aという手法を知ります。企業同士の結婚ともいえるM&Aに挑戦し、経営者として新たな一歩を踏み出した同社に迫りました。

中野:横浜を中心に31店舗(2023年2月時点)まで拡大されていますが、M&Aに至ったきっかけはなんだったのでしょうか。

鈴木:M&Aは、船井総合研究所の担当コンサルタントから話を受けたのが、元々のきっかけです。実はその時はM&Aに対して全く興味がなかったですね。

ただ話を進めていく中で、機密保持契約を締結後、売り案件として紹介いただいた企業が、過去にベンチマークをしていた整骨院であることを知ったのです。創業当初、現在のような多店舗化は考えておらず、目の前の患者様に向き合い続けました。院の入り口で診察をしていたぐらいです。おかげさまで患者様が年々増えていく状態を鑑みて、多店舗化に踏み出し、その時に目標としていたのが、今回の譲渡企業だったのです。本当に偶然でしたし、不思議な縁を感じましたね。

中野:それはすごい偶然ですね。実際話を進めていく中で、M&Aに対する不安な点などはありましたか?

鈴木:とにかくM&Aする前に実際の姿が見えなかったのが一番の不安でしたね。「表向きの数字がすべてを表していない」と聞いていましたが、実際そうでしたね。企業名を伏せたノンネームシートでは社名もわからない状態で、直近の会社概要や財務諸表の概要のみでしたし、数値への信用は半信半疑でした。

経営者としては当然だと思うのですが、M&Aは会社の資金を使いますし、社員への影響も少なからずあります。今ではM&Aしてよかったと思っていますが、実はM&Aの調印式を控えた1週間前まで決断に悩みましたね。そんなときに「相互にとってWINWINの関係を築けなければM&Aをしない選択肢もあります」という中野さんのひと言は私を楽にしてくれましたね。

中野:そのように悩まれていた中で不安を解消できたのはなぜでしょうか。

鈴木:デューデリジェンスを進めていく中で、譲渡企業にはいくつか懸念に思う点がありました。しかし、当社の財務状況と照らし合わし、何度もシミュレーションを重ねる中で、その部分はカバーできる金額の範囲であることがわかってきたんです。普通であれば、懸念と思う情報が出てくれば不安を助長することになりますが、私は違いました。表面的な情報ではなく、良い悪いも含め当初見えなかった数値情報が明らかになっていくことで、徐々に不安が解消されていきましたね。例えば、1人の患者様に対して施術する部位の数や月別のリピート数など、現場に近い数値や収益性を把握するための情報です。もちろんその時は社員の方の顔は見えていませんが、譲渡企業の等身大の数値が見えてきたんです。

中野:なるほど。数値情報が明らかになっていく中で、M&Aに対してメリットと思えることはありましたか?

鈴木:M&Aを通じてなにより私自身が大きく変わりましたね。例えば譲渡企業に関して経営計画を立てた際に、まずはM&A後1年で、人員と店舗数をそのまま維持した状態で売上を2倍にすることを決めました。非常識といわれるかもしれませんが、計画しながらとてもワクワクする自分がいたんです。M&Aによって、必然的に新しいことへの挑戦ができました。過去にとらわれず、次のステージへ挑戦することの喜びを得られたのはM&Aならではの大きなメリットの一つであると感じています。そしてM&A後にはなりますが、過去に自分が学んできた経験や知見を総動員して譲渡企業の社員と対話をし、あらためて経営者としての原点に帰れたことも有益でした。

中野:譲渡企業を含め社員の方との対話というのはどのようなものだったのでしょうか。M&Aでは社員への伝え方も難しいと思います。

鈴木:自社の社員には率直に会議で伝えました。みんな驚いていましたが、理解してくれましたね。その一方で譲渡される側の社員は、新しい社長に代わることになるので当然不安です。そこで私は「安心・安全の場所」を提供することを目標に対話しました。そのためにも社長としてではなく、「鈴木拓」という人間の自己開示をしました。人との対話で相手を知るためには、まず自分を知ってもらうことが基本中の基本です。自分がどんな人間かを限られた時間の中で赤裸々に伝えていきました。

中野:とても素晴らしいですね。社員の方と向き合うために自ら歩みよっていったんですね。

鈴木:そうですね。M&Aに限らず人としてまずは距離を縮めることを自分から行動しました。そして鈴木拓という人間を知ってもらった上で、当社の取り組みについて話しました。我々はマイナスをゼロにする治療にとどまらず、ゼロからプラスにする健康的な体づくりを目指し、治療家として患者様と向き合っています。実はこのコンセプトは、1日に200名前後の施術をしていた頃に、「本当に治せているのか」という治療家の在り方への疑問に対する一つの答えでした。過去の歴史からどのようにして当社が今に至ったのか。どういう思いで患者様に向き合っているのかを丁寧に説明をしていきました。 

中野:それを聞いた譲渡企業社員の方々の反応はいかがでしたか?

鈴木:「見学をしに行きたい」「勉強したい」「自分もこんなことをしたい」と言ってくれていたそうです。それを聞いて学びに対する意思を強く感じました。そして当たり前かもしれませんが、私が院に訪問した際に挨拶をしてくれたんです。その時に我々のノウハウをもってすれば、今後飛躍的に成長できるポテンシャルがあると確信しましたね。

中野:不安から確信に変わり、今回のM&Aによって14店舗から18店舗に拡大をされました。今後、どのような成長を目指されているのでしょうか。

鈴木:M&Aは企業にとって、1+1が3にも4にもなる可能性を秘めていると考えています。その上で、今後は整骨院をはじめ医療や介護といった異業種のサービスが有機的に連動しあえる事業構想を見据えています。地域の人の安心を多角的にサポートできる環境を目指していきたいと考えています。

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