地域一番の整骨院がM&Aに成功した企業と人との向き合い方
- 整骨院
神奈川県横浜市を中心に31店舗(2023年2月時点)の整骨院を展開しているさくらメディカル株式会社。「すべての患者様は自分の家族」というコンセプトのもと、患者様第一を貫き、地域から多大な支持を得ている整骨院です。
―早速ですが、今回のM&Aに至った経緯を教えてください。
鈴木氏:M&Aは、船井総合研究所の担当コンサルタントから話を受けたのがきっかけです。実は、その時まではM&Aを全く考えていませんでした(笑)。ところが、話を進めていく中で、売り案件として紹介いただいた企業が、過去にベンチマークをしていた整骨院であることを知ったのです。創業当初はただただ目の前の患者様に向き合い続ける日々でしたが、おかげさまで患者様が年々増えていき、その時に目標としていたのが今回の譲渡企業だったのです。本当に偶然でしたし、不思議な縁を感じましたね。
―それは凄いご縁でしたね。話を進める中で、M&Aに対する不安な点などはありましたか?
鈴木氏:それはもう、M&Aをする前は実際の姿が見えませんから不安でしたね。今はM&Aをして良かったと思っていますが、実はM&Aの調印式を控えた1週間前まで決断に悩みました。お金もかかりますし、社員への影響も少なからずありますから。そんな時に「相互にとってWIN-WINの関係を築けなければ、M&Aをしない選択肢もあります」という中野さんの言葉は、私を楽にしてくれましたね。
―そのように悩まれていた中で、不安を解消できたのはなぜでしょうか。
鈴木氏:デューデリジェンスを進めていく中で、譲渡企業にはいくつか懸念に思う点がありました。しかし、当社の財務状況と照らし合わせてシミュレーションを重ねる中で、その部分はカバーできる金額の範囲であることが分かってきたのです。
―普通であれば、懸念と思う情報が出てくれば不安になりますよね?
鈴木氏:そうかもしれませんが、私はむしろ、表面的な情報ではなく、良い悪いも含めて当初見えなかった数値情報が明らかになっていくことで、徐々に不安が解消されていきましたね。例えば、1人の患者様に対して施術する部位の数や月別のリピート数など、現場に近い数値や収益性を把握するための情報です。もちろん、その時は社員の顔は見えていませんが、譲渡企業の等身大の数値が見えてきたのです。
―なるほど。悪い部分を含めて実情が見えてきたことで、改善できると確信されたわけですね。
鈴木氏:はい。譲渡企業の経営計画を立てた際、M&A後1年で人員と店舗数をそのまま維持した状態で売上を2倍にすることを決めました。非常識と思われるかもしれませんが、計画しながらとてもワクワクする自分がいたんです。M&Aによって必然的に新しいことへの挑戦ができました。
―譲渡企業の社員への接し方、対話はどのようなものでしたか?M&Aでは社員への伝え方も難しいと思います。
鈴木氏:自社の社員には率直に会議で伝えました。みんな驚いていましたが、理解してくれましたね。その一方で譲渡される側の社員は、新しい社長に代わることになるので当然不安です。そこで私は「安心・安全の場所」を提供することを目標に対話しました。そのためにも社長としてではなく、「鈴木拓」という人間の自己開示をしました。人との対話で相手を知るためには、まず自分を知ってもらうことが基本中の基本です。自分がどんな人間かを限られた時間の中で赤裸々に伝えていきました。
―とても素晴らしいですね。社員と向き合うために、自ら歩み寄られましたよね。
鈴木氏:そうですね。まず、鈴木拓という人間を知ってもらった上で、当社の取り組みについて話しました。我々はマイナスをゼロにする治療にとどまらず、ゼロからプラスにする健康的な体づくりを目指し、治療家として患者様と向き合っています。このコンセプトは、1日に200名前後の施術をしていた頃に「本当に治せているのか」という治療家の在り方に対する一つの答えでした。過去の歴史から、どのようにして当社が今に至ったのか、どういう思いで患者様に向き合っているのかを丁寧に説明していきました。
―それを聞いた譲渡企業社員の反応はいかがでしたか?
鈴木氏:それが、想定以上に「見学に行きたい」「勉強したい」「自分もこんなことをしたい」という前向きな反応だったのですよね。それを聞いて、学びに対する意思を強く感じました。その時に、我々のノウハウをもってすれば今後飛躍的に成長できるポテンシャルがあると確信しましたね。
―今回のM&Aによって14店舗から18店舗に拡大されました。最後に、今後のビジョンを教えていただけますか?
鈴木氏:今後は、M&Aも含めて整骨院をはじめ、医療や介護といった異業種のサービスが有機的に連動し合える事業構想を見据えています。それで地域の人々の安心を多角的にサポートできる環境を創っていければと考えています。
―それは素晴らしいですね。本日はありがとうございました。