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写真館のM&A事例から学ぶ分割型分割を用いたM&A

  • サービス業 M&Aレポート
写真館 M&A

今回は弊社でM&Aの支援をさせていただいた、写真館の事例について、触れていきます。

1.分割型分割とは

写真館を複数拠点展開している会社から、株式売却のご相談をいただいたのがきっかけでした。
特に今回のタイトルにあります通り、事業承継にも活用できる分割型分割(会社分割の一種)にフォーカスを当てていきたいと思います。

今回は譲渡希望経営者の年齢が30代と若く、別の新しい事業に取り組むための資金確保と時間確保が大きな目的でした。
お話しを聞く中で、既に新しい事業を今の会社の中である程度資金をかけて動かしているようだったので、新設分割で会社を作った後に、旧会社(写真館事業)の株式を売却するというスキームに至りました。

平成29年度に税制改正が行われ、使用できるようになった分割型分割を用いて実施しました。
分割型分割とは、今の会社(分割法人)から新設分割会社(分割承継法人)に事業に必要な資産や人材を承継させ、
その分割法人株主が最終的に分割承継法人の株式を取得するという方法です。

2.分割型分割のメリット

今回の事例でのメリットは大きく2つです。

1.買収資金が不要

通常ですと新設分割会社の株式を買い取る必要があるのですが、現物配当という形でオーナーへ100%株式を渡すことができるので買収資金が不要になります。さらに、ある一定の基準を満たせば不動産取得税もかかりません。

2.税負担の軽減

今回の事例においては、分割自体には特別大きな税金がかかることがなく、株式を譲渡した後にかかる株式譲渡税(20.315%)のみで、税務メリットがありました。

さらに、本事例の譲受企業と譲受後の税務面を考慮しても、分割型分割で実施する方がよかったのです。

本当に双方にとってよい条件・スキームは何なのかを考え、双方に納得をしてもらう必要があり、それを提示するのがアドバイザリーとしての責務であるとも考えております。

ただこのスキームは、会社法で定められている債権者保護手続きを取る必要があり、一定の時間を要するので前もっての計画が必要になってきます。

今回ご紹介させていただいたのは、M&Aだけではなく事業承継にも活用できる側面があり、みなさまのお近くで活用できる機会がありましたら幸いでございます。

写真館M&Aの事例を通じて、買い手として譲受企業を、売り手として譲渡企業を検討する際のポイントについてお伝えしていきたいと思います。

日本でのM&A件数が年々増加していますが、全てのM&Aの目的は大きく下記3つに集約できると考えております。

1.シェアの拡大

自社のコア事業(既存事業)と近しい事業を譲受することでその業界でのシェアを拡大する目的です。
ポイントは買収サイドに独自のノウハウがあるのかどうかという点と、そのノウハウを譲渡企業に適応し、更に伸ばすことのできる余地があるのかどうかという点です。

2.垂直統合(水平統合)

既存事業のサプライチェーンにある企業を譲受することで、今外に出している業務を内製化し、結果的にコストダウンを実現する目的、もしくは周辺産業を譲受して、明確に自社の強みを活かして譲渡企業を伸ばす込みがある際に実施します。

3.新規事業

自社の既存事業とは全く別の事業を買収し、会社と収益の第2の柱とする目的です。
多くのM&Aの事例を見ていると、ここの目的で実施したM&Aは、今まで自社になかったものをどう扱って、どう伸ばしていくべきなのかがわからず、残念ながら振るわない結果になることが少なくないように感じています。

今回の写真館M&Aの事例では、1と2を合わせたような目的でM&Aを行いました。譲受企業は子どもに関連するEC事業を展開しており、写真館企業が展開する事業と顧客特性(年齢、性別、所得水準など)に共通する部分が多々あり、既存事業のシェア拡大が大いに見込めるとともに、ECだけではなく実店舗を持って事業活動を行い、譲受企業の商品やサービスを写真館に来るお客様にも告知・販売できる見込みが大いにありました。

とはいえ、譲渡企業オーナーの引継ぎサポートはこの事例だけではなく、どの業種・業界のM&Aでも重要になってきます。
この事例では、分割型分割スキームを用いて新設分割した会社と譲受企業の間で継続的にやり取りをし、サポートする約束をしました。

M&Aというのはあくまでも手段のひとつです。なんのためにM&Aをするのか、M&Aをして本当に成し遂げたいことは何か。もしM&Aをご検討いただいている経営者の参考になりましたら幸いでございます。

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