電気工事業のM&Aから学ぶMBOの有用性
- 建設業 M&Aレポート
今回は電気工事業の事例について、MBOの有用性についてお伝えさせていただきます。
昨今、後継者不足からくる事業承継が日本中で問題視されておりますが、大きく分けて事業承継に選択肢は3つあります。
ひとつは親族に経営権を承継する「親族内承継」、第三者に経営権を売却する「M&A」、そして親族ではない社内の経営陣に経営権を譲渡する「MBO(マネジメント・バイアウト)」です。
※従業員に譲渡する場合はEBO(エンプロイー・バイアウト)と言います。
今回事例としてご紹介させていただくのは、東日本で電気工事業を長年営まれてきた会社 様です。
後継者が不在で、当初第三者への経営権売却であるM&Aを考えておりました。
いくつか候補先が挙がり、売却金額も前オーナーが納得する金額だったのですが、これまで独立独歩で経営をやってこられ、会社の色をなくしたくないという想いを強くお持ちでした。
MBOのメリットにもなるのですが、現経営陣へ譲渡することでこれまでの会社の色や風土をそのまま継続して会社の経営を安心して任せられることが可能になります。
本事例では、今の経営陣の強い要望もあり、1億円ほど譲渡対価を下げながらもMBOで株式を全て譲渡しました。
ここで、引き受ける役員が株式を引き受けられるほどのキャッシュを持っていないのではないか、株式引き受けに係る資金はどのように調達したのか、ということが気になる方がいらっしゃるかもしれません。
いくつか資金手当の方法はあるのですが、今回は会社の資産を担保に株式を引き付ける役員に金融機関が貸し付けるという形でファイナンスの問題をクリアしました。
一見、荷が重いのではないかと思うかもしれませんが、経営や業績に対する責任感が上がり、これまでとは目を見張るほど違う動きになった、というケースが多い印象です。
幸いなことにこの会社様の決算状況が良く、このような結論に至りました。
MBOは様々な好要素が満たされないと実施できない選択肢ではありますが、創業者の想いや従業員、今の取引先様のことを最優先に考える場合には有効な手段になりえます。
長い経営者人生で一度あるかないかの決断です。考え始めるには早いに越したことはないでしょうし、
ぜひ会社に関係する様々な方にとって“最適な”選択となるよう、今から考え始めて準備されてはいかがでしょうか。
大学卒業後、ノンバンクへ入社。
営業・法務・管理部門を担当する中、当該ノンバンクが投資ファンドに買収されたことにより、その後、投資ファンド側でのM&A(企業買収・売却)や事業再生支援に従事、買収企業でのハンズオン支援などにも携わる。
2019年12月より、船井総合研究所M&A支援部に合流しM&A仲介業務に従事。
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