パチンコホールのM&A
- ぱちんこ M&Aレポート
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パチンコホールを取り巻く環境
風営法の規制対象となるパチンコホールは、規制業種特有の特徴があります。風営法の目的が、産業の発展や自由競争を促すのではなく事業者の規制である事から、射幸心の恐れのある広告宣伝の禁止や、販売価格(貸玉料金)の上限規制、取締役の誓約書(身上書)提出など、風営法で細かく定められた規制の元、警察からの許可営業の形態となります。
また、仕入商品となる遊技機は、メーカーのカルテルに近い商取引が存在し、年々上昇する販売価格が経営を圧迫する傾向にあります。現金商売で、“誰もが儲かった時代”は過去になりつつあり、近年の大型化や規制強化により、年間1割程の閉店が続いています。
パチンコホールのM&A市場
パチンコホールのM&Aは2015年前後から見られる様になりましたが、黎明期より関与した私から振り返ると、売主主導のM&Aが成立した時期は2018年頃がピークの印象を持ちます。現在は、同業以外の候補先として、ドラッグストアや中古車ディーラーなどの異業種が賃貸や売却の候補となりますが、設備は当然不要となることから、異業種の場合はのれん(営業権)を得る事は出来ません。
他方、同業他社の売却が実現出来る物件は、立地、規模、競合等に恵まれ、設備の状態も良いといった“商品性”の高い物件が中心となります。これらの店舗は、固定資産の償却残や賃料負担は高めとなりますが、営業のポテンシャルが見込める場合は売主優位の交渉が可能な店舗となります。“売れる店を持っている”事がその会社の強さとも言えるのですが、これらの評価基準はこれからも変わらないと思われます。
パチンコホールには“かつて良かった店”が存在しますが、M&Aの場合も営業継続の場合も難易度が最も高い店舗となります。これらの店舗で多く見られる傾向として、
①賃料が高い(良かった時代の賃料設定)
②規模が中途半端(以前の基準で作られた店舗規模)
③現状赤字
以上の3点が挙げられます。
他方、売主にとって“かつて良かった店”の印象が残っている事から、“状況が変われば復活するのではないか?”といった淡い気持ちがあり、結果的にずるずると続けてしまう傾向があります。その結果、他店のしわ寄せや効果の見込めない中途半端な投資が続き、キャッシュフローで赤字に陥る店舗がとなります。最も悩ましい店舗と言えるでしょう。
まとめ
これらの店舗は先ずは“黒字の状態”であることが重要となります。同業者であれば、“かつて良かった店が何故ダメになったのか?”を理解することが出来ますが、ダメになった理由を伝えた上で、“今は最低の状態だが黒字である”と認識される事が重要です。
よほどの理由がない限り“赤字の店舗や企業を買う会社はない”ことを認識した上で、信頼出来るアドバイザーにお願いすることが望ましいと思います。現在までの経緯を伝えた上で、透明性の高い対応を続ければ、不思議と興味をもってくださる会社が現れるものです。やや精神論となりますが、M&Aは”お互いの信頼なしでは成立しない”ことをお伝えしたいと思います。
1996年に新卒で船井総合研究所に入社。1998年よりパチンコ業界のコンサルティングに従事。2019年にパチンコ法人のM&A仲介案件に初めて関わり、その後、パチンコ法人向けM&Aコンサルティングに従事している。著書『マルハンはなぜトップ企業になったか』
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