パチンコホール業界における2023年の時流予測とM&A活用法
- ぱちんこ M&Aレポート
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M&A成約事例における「賃料相場」とは?
パチンコ業界特有の試算方法のひとつに、賃貸物件における「賃料」があります。一般的には売り場面積や敷地面積で試算される「賃料」ですが、パチンコ店の場合、「台あたり賃料」で試算されるのが一般的です。例えば「総台数500台のお店の場合、300万円/月が賃料の上限」となります。重ねてですが、売り場面積や敷地面積ではなく、1台あたりになるのが独特の商慣習といえます。そして、この「台あたり賃料」というのは、5,000円/台がひとつの目安になっている感があります。非常に魅力的な物件であったり、地価の高い立地の物件だと8,000~1万円/台前後となります。逆に、例えば過疎地では2,000~3,000円/台でも引き受け手が見つからず、M&Aが成立しないという譲渡案件もあります。
また、M&Aの経験豊富な企業様(以下M&A巧者)は、この「台あたり賃料」というのを上手に味方につけていると感じます。例えば、現在、500台クラスで賃料500万円/月の提示が所有者様よりあった物件があるとします。「台あたり賃料」では1万円/月です。一般的には割高な賃料と考えられますが、M&A巧者の場合、あらゆる角度で総台数増台の可能性を探ります。例えば500台→800台にする改装案が試算できるならば6,250円/台になります。そんな試算をすることで「台あたり賃料」を効率良くするのがM&A巧者に共通した店舗開発能力です。
M&A巧者の店舗開発能力は日々進化していることもあり、「台あたり賃料」は下がる傾向にあります。では、売主様が得られる「賃料」は日々条件が悪くなるだけなのか?というと、そうでもないです。それが今回お伝えしたい時流の一つになります。特に売主様におかれましては、「賃料」という視点も含めて、視野を広げていただければ・・というのが私からのご提案です。
同業他社よりも他業種転用が好条件になる時流が加速中
同業他社への事業譲渡では「造作」「営業権」が評価されます。売主様には魅力的と感じる要素と思いますが、ただ、それを放棄してでも好条件を提示いただける他業種法人があります。例えばですが、
同業他社への事業譲渡を「台あたり賃料1万円」で模索したが不成立。ただ、他業種法人より「台あたり賃料1万円」に相当する賃料で申し込みが入り成立
同業他社への事業譲渡を「3~4億円+遊技機」で模索したが不成立。ただ、他業種法人より「4.3億円」で申し込みが入り成立。建物解体費用は遊技機売却費用や造作の売却費用で賄うことができた(むしろおつりが来た)。
といった事例です。
特に現在、営業利益が出ていない物件の場合「営業権」の評価を得られることはまずないです。売主様からすれば「再投資すれば利益が出る物件なので・・」とおっしゃるのですが、買い手様は、現在の実績で「営業権」を評価されます。業績V字回復した後の「見込営業権」はまず評価されないです。そして、スマート遊技機に変更されていく時流の中、既存の「造作」も評価を得にくくなってきています。
そのため、特に好条件の経済条件を求める売主様としては、「まずは同業他社から。ダメならば他業種に」と発想せず、同業他社と他業種法人の経済条件を冷静に天秤にかけるべきです。既に、経済条件が同業他社<他業種法人となっている時流が加速しています。売主様としては、同業他社→他業種という発想が少し時代錯誤になっていると考えていただきながら、譲渡先を模索されるくらいがちょうどいいくらいです。
同業のパチンコ法人が羨むS級物件成立の舞台裏とは?
経済条件が「同業他社<他業種法人」となっている時流が加速する中、逆に、同業が羨むようなS級物件のM&Aが成立する事例が出始めています。そんなS級物件成立の背景ですが「売主様は、むしろ、事業拡大に成功している好調パチンコ法人です。積極的な事業拡大を進めたい方針があるため、様々な視点で非効率な店舗を売却案件にする」というのがS級物件の共通点です。
S級案件はそんな背景があることもあり、物件情報が出回ることはありません。弊社もS級案件を仲介させていただくことがありますが、そのような案件では買い手候補筆頭の2~3社程度しかお声がけをせずに粛々と成立するというのが一般的です。お声がけする買い手候補様を慎重にリストアップし、最小限のお声がけで成立を目指す。それがS級案件の共通点になります。いわゆる水面下で粛々と進行し、譲渡が成立するのがS級案件なのです。
ただ、S級案件は比較的高額の譲渡対価になるのも一般的です。それは物件の魅力度から考えても当然とも思います。売主様としては、その高額物件に踏み込める決断ができる企業なのか?を十二分に吟味いただいた中で、買い手候補様のリストアップをしていただければと思います。また、高額物件の決断ができる企業様の共通点は「スピード感」そして「誠実さ」です。不誠実な法人や回答に時間がかかるパチンコ法人はまずお声がけは避けるべきです。そして、そんな「誠実さ」「スピード感」に関しては、物件情報のやり取り以外でも把握できるものです。日々のコミュニケーションにおいても「誠実さ」「スピード感」を備えている企業様との付き合いを大事にしていくべきと思います。
S級案件M&A成立を目指す企業様の情報収集方法
では、「S級案件が回ってくるパチンコ法人の条件とは?」は、事業拡大を目指す法人様が知りたい情報とも思います。ただ、それは別の機会にお願いできればと思います。
また、下記のパチンコ業界2023年時流予測レポートも合わせてご覧ください。
1996年に新卒で船井総合研究所に入社。1998年よりパチンコ業界のコンサルティングに従事。2019年にパチンコ法人のM&A仲介案件に初めて関わり、その後、パチンコ法人向けM&Aコンサルティングに従事している。著書『マルハンはなぜトップ企業になったか』
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