飲食業界M&A:飲食店は閉店するな!原状回復するな!現金化せよ!
- 飲食 M&Aレポート
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■飲食店業界の動向
コロナ禍の影響で飲食店経営が厳しかった時期を経て、人流は大きく回復し、ビジネス環境はコロナ前とはいかずとも活発になっています。人気の立地も、駅近や繁華街、住宅密集地、観光地など、平時と同様の傾向に戻ってきています。この回復の中で、多くの経営者がデジタル技術の活用を進め、運営の効率化を図るとともに、濃淡はあれども、より筋肉質な経営ノウハウを培ってきたと感じています。
しかし、依然として多くの課題が存在します。コストの増加や人手不足、経済の不安定さ、そして文化の変化による外食支出の抑制など、飲食業界は様々な問題に直面しています。全体として、コロナ前の環境水準に完全には戻っておらず、事業所数も減少しています。実際、私たちのところにも閉店相談が多数寄せられているのが現状です。
このような中で、経営者の方々には、強固な運営ノウハウを駆使しながら、再度の拡大を目指す譲受側(買い手)事業者様、または運営難易度が高くなるにつれて撤退を検討する譲渡側(売り手)事業者様にとって、店舗M&Aは有効な選択肢となります。弊社の店舗M&Aサービスをぜひ選択肢の一つとしてご覧いただき、適切な対応をご検討いただければと思います。
■飲食店のM&A手法
飲食店のM&Aには、主に株式譲渡と事業譲渡の2つの手法があります。株式譲渡は、企業全体を一括で譲渡する方法で、M&Aとしては一般的な方法のため、M&Aの話題の中で頻繁に登場しますし、関連する記事もWeb上でも多くございます。この手法は、企業の株式を買い手に譲渡することで、会社全体の権利や責任を移転するものです。
一方、事業譲渡は、企業の一部門や特定のエリア、ブランド、または1店舗だけを譲渡する方法です。この手法はM&Aという括りではございますが、株式譲渡とは実務が異なる部分が多く、実は多くのM&Aアドバイザーは苦手もしくは実際は未経験というスキームです。実際、M&Aアドバイザーの中で事業譲渡を1度でも経験したことがあるのは、感覚的には15人に1人程度です。ましてや、積極的に行おうという方は100人に一人どころではありません。事業譲渡は、実務の段取りや知見が異なるために慣れていないと苦労する上、最も大きな理由として手数料が小さくなる傾向があるため、積極的な実務経験が積まれにくいのです。
弊社はコンサルティング会社として、事業譲渡に豊富な経験があります。そのため、多くのM&Aアドバイザー会社とは異なり、無駄な手間や混乱を避け、スムーズな譲渡を実現することが可能です。ひいては最低手数料2000万円といった、高い手数料への固執もなく、効率的かつ適切なサポートを提供できます。
本コラムでは、飲食店の譲渡について特に重要な点として、事業譲渡・1店舗の譲渡・賃貸店舗の譲渡を主に想定して、解説します。飲食店の譲渡を検討する際には、これらの手法を理解し、適切な選択をすることが重要です。
事業譲渡には主に以下の3つのパターンがあります。
1.店舗造作譲渡
・店舗造作資産(設備・機器・内外装)
・土地建物賃貸借権(不動産契約)
2.店舗事業譲渡
・店舗造作資産に加え、営業権(従業員、マニュアル、取引先、のれんなど)
・土地建物賃貸借権
3.フランチャイズ店事業譲渡
・FC店舗事業営業権
・土地建物賃貸借権
・FC加盟権(加盟金や保証金など、FC本部との別途契約が必要)
なお、不動産が賃貸でなく所有の場合、土地建物は「所有権」となりますが、ここでは賃貸を前提にお話しします。
船井総研のM&Aコンサルティングでは、他のM&Aブティックが扱いにくい1店舗からのM&Aマッチングも得意としています。
■飲食店の閉店にかかる費用とM&Aのメリット・デメリット
飲食業を営む店舗事業者にとって、赤字や業績不振により「そろそろ閉店しようか」と考えることがあるかもしれません。しかし、閉店は簡単な決断ではなく、多くの財務的および業績的な影響を伴う重大な事態です。閉店には大きなキャッシュアウトが発生し、時には、企業の存続に関わる重要な決断となることもあるため、慎重に考える必要があります。
●閉店にかかる費用
店舗を賃貸契約で運営している場合、閉店に伴う費用等には以下のようなものがあります。
1.契約期間満了前の解約による敷金・保証金の没収
賃貸契約を途中で解除すると、敷金や保証金が返還されないことが多くございます。
2.空家賃や違約金の発生
賃貸契約解除に伴い、空家賃や違約金が発生することがあります。
3.原状回復義務に伴う解体工事費用
店舗の内装や設備を元の状態に戻すための解体工事費がかかります。
4.リース品の買い取り・契約残存期間分の支払い
リース契約が残っている場合、リース品の買い取りや残存期間の一括支払いが必要です。
5.固定資産除去損の計上
固定資産の除去に伴う損失を計上する必要があります。
6.食材消耗品や備品等の一括廃棄費用
食材や備品の廃棄にはコストがかかります。
これらの費用を合計すると、閉店にかかる費用は数百万円から数千万円になることが一般的です。このように、閉店は大きなキャッシュアウトを伴い、企業にとって小さくない(時には深刻な)財務的影響を及ぼすことが多いです。
■M&Aを活用するメリット
しかし、悲観的にならないでください。船井総研では、飲食業などの店舗M&Aに精通した専門コンサルタントが多数在籍しており、さまざまなケースの売却実績があります。M&Aを活用することで、閉店にかかる費用を抑えつつ、現金収入を得ることができます。以下にM&Aのメリットをまとめます。
●売手側のメリット
1.現金収入が得られる
閉店する代わりに現金収入を得ることができます。
2.撤退費用の最小化
原状回復費用や空家賃、賃貸借契約やリース解約に伴う違約金を回避・軽減できます。
3.敷金・保証金の返還
適切な契約条件や家主との協議にもよりますが、敷金や保証金が返還される可能性があります。
4.雇用の維持
個人の意思にはよりますが、従業員の雇用が守られる事が多いです。
5.屋号や想いの承継
屋号や店舗の想いを引き継いでもらえることがあります。
上記は成功確率とのバーターで条件とすることもできます。自身にとって重要な場合は、条件として明確にしておくのが良いでしょう。
●買手側のメリット
1.開業費用の抑制
内外装造作や厨房設備などの初期投資を抑えることができます。
2.新規出店の障害が少ない
近隣とのダクトや排煙調整、営業許可などの問題が少なくなります。
3.出店までのスピードが早い
出店準備が早く、空家賃が少ない場合があります。
4.採用費の抑制
従業員が引き継げるため、採用費用が抑えられます。
5.ノウハウの引き継ぎ
既存のノウハウ、取引先、マニュアルなどが引き継げます。
■M&Aのデメリット
●売手側のデメリット
1.契約調整の時間
経済条件や家主との契約調整に時間がかかることがあります。
2.撤退決定までの負担
譲渡が決まらない期間には、精神的な負担は大なり小なりございますし、赤字事業であれば金銭的な負担が継続します。
●買手側のデメリット
1.中古設備や造作のメンテナンス
中古設備や中古造作を引き継ぐため、メンテナンスが必要な場合がございます。
飲食店の閉店にかかる費用は高額になることが多く、慎重な対応が求められます。しかし、M&Aを活用することで、多くのデメリットを回避しながら現金収入を得ることが可能です。売手側と買手側双方にとって、大きなメリットがあるため、また、多くの場合はメリットの方が明らかに大きいため、積極的にM&Aを検討することをお勧めします。
■飲食店のM&Aで気を付けておくべきこと
飲食店の経営者にとって、店舗の譲渡は大きな決断です。その際には、適切な手続きと計画が求められます。ここでは、飲食店のM&Aで気を付けておくべき主要な点について詳しく解説します。
●情報管理の重要性
飲食店の譲渡で最も重要なのは情報管理です。譲渡プロセス中に情報が漏れると、特に譲渡主(売り手)側に、さまざまな問題が発生する可能性があります。例えば、従業員にM&Aの話が漏れると、先行き不安から退職者が増加する可能性があります。また、外部に情報が漏れることで、良からぬ噂が広がり、ビジネスに悪影響を及ぼすこともあります。そのため、情報漏洩を防ぐために、関係者との情報共有を厳格に管理することが必要です。
●譲渡対象物の明確化
次に、譲渡対象物を明確にすることが重要です。店舗譲渡には、以下のような項目が含まれます
1.店舗設備や造作物
店舗内の設備や内装の状態を明確にし、譲渡範囲を確定させる必要があります。
2.リースやレンタル品
リース契約やレンタル品の取り扱いについても明確にしておくことが重要です。
リース品の買い取りや契約解除に関する費用も考慮する必要があります。
3.ライフラインの契約
電気、ガス、水道などのライフライン契約についても整理しておくべきです。
4.クレジット契約や仕入先情報
クレジットカードの契約や仕入先との契約も整理しておくべきです。
5.マニュアルやレシピ
店舗運営に必要なマニュアルやレシピも譲渡対象となることがあります。
6.従業員の処遇
従業員の処遇はどうするのか、最終的には個人の意思によりますが、
企業としての方針を固めておくことが重要です。
■飲食店M&Aの相場と算出方法
飲食店のM&Aでは、店舗の価格をどのように算出するかが重要です。一般的な価格算出方法には以下のようなものがあります。
●黒字店舗の価格算出
1.年倍法
固定資産の簿価に営業利益の年数倍(通常2〜4年)を加算する方法です。例えば、固定資産が1000万円で、営業利益が年間500万円の場合、2年分の営業利益を加算して2000万円〜3000万円が目安となります。但し、賃貸の場合は特に、もう少し辛い評価となる事が多いでしょう。
2.EV/EBITDA法
EBITDA(利払い前・税引き前・減価償却前利益)を基に評価します。EBITDAの2年〜4年分を算出して、価格を決定します。EBITDAが1000万円であれば、2~4年分で2000万円〜4000万円の範囲となります。
●赤字店舗の価格算出
1.無償譲渡
赤字店舗の場合、譲渡価格が0円であることもあります。
損失を最小限に抑えるための手段で、出血を早期に止めるように、譲渡価格の高望みを悪影響としてもたつくべきではないでしょう。
2.固定資産額(簿価)
赤字であっても、固定資産の魅力があれば簿価を基に価格を設定することがあります。
3.アドバイザリー手数料同等額
M&Aのアドバイザリー手数料を譲渡価格の基準にする場合もあります。
■成功事例の紹介
以下に、実際の成功事例をいくつか紹介します。
ケース1: 商業施設内の料理店
ある商業施設内の日本料理店を運営するオーナーから、閉店相談を受けました。この店舗は赤字であったため、閉店すれば解約違約金や敷金の没収、店舗のスケルトン化費用などで数千万円のキャッシュアウトをするとオーナーは試算されていました。しかし、船井総研のM&Aコンサルタントが迅速に買手企業を紹介し、1社目の店舗内見で意向表明を得ることができました。最終的には、残存簿価額の500万円(税別)で売却が成功しました。
さらに、解雇を予定していた従業員全員が新しい店舗で同条件の雇用契約に移籍できたこと、家主も現状の賃貸借契約の経済条件を引き継ぐことに喜んでいたことから、売手、買手、家主、従業員の全てがWIN-WINとなる結果となりました。ダメ元での依頼といった雰囲気の当初の譲渡主(売り手)からは考えられない程の笑顔での譲渡となりました。特に、店舗の立地が良好でVIP客が利用しやすい環境が、譲受(買い手)側のニーズと合致したことが大きなポイントでした。
ケース2: フランチャイズ加盟の焼肉店
遠隔店舗のマネジメントが困難となり、スタッフ不足も見込まれていため、利益が出ているうちに売却したいとの相談を受けました。対象店舗は東日本を中心に展開するフランチャイズの焼肉店で、本社から5時間程度の移動時間がかかるものでした。しかし、直近の営業利益が1,000万円と堅調だったため、希望価格の4,000万円(税別)で売却が決まりました。売却価格は営業利益の4年分となり、タイミングが重要であったことがわかる成功事例となりました。
また、FC本部との交渉もスムーズに行われ、買手候補企業が新たにFC加盟金を支払う条件が事前に確認できたことで、チェンジオブコントロールの調整も順調に進みました。
■M&Aを検討し始めたら最初に行うべきこと
飲食店のM&Aを検討し始めた場合、最初に行うべきことはM&Aコンサルタントへの相談です。我々、船井総研の飲食業をはじめとする店舗専門のコンサルタントは、経営者に寄り添い、最適なスキームと売却価格を提案します。初期相談は無料であり、経営者にとって非常に有益だと自負しています。
また、船井総研の顧客には成長意欲の高い企業が多く、飲食業に精通したコンサルタントも在籍しているため、自店舗の方向性を考える際には、閉店や譲渡前に相談することが重要です。適切なアドバイスを受けることで、より良い結果が得られます。
飲食店のM&Aは、正しい手続き・計画が求められるプロセスですが、成功すれば売手・買手双方に大きなメリットがあります。是非、専門家のアドバイスを受けながら、明るい未来に向けて積極的に検討してみてください。
大学卒業後、飲食FC本部事業を展開する上場会社に新卒入社。その後、FCビジネスに特化した経営コンサルティングを行う上場会社に転職し、M&A戦略による経営支援や資本提携、グループ再編に携わり、グループ上場会社の上席執行役員兼営業本部長として年商約50億円、従業員1,000名以上の営業部門を統括。
現在は株式会社船井総合研究所のM&A支援部にて年間10件のM&Aを成約に導く。過去M&Aに携わった件数としては100件を超える。
山本瑛の紹介ページはこちら 船井総研のM&Aの特徴とM&Aに関する解説ページはこちら