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不動産仲介業界におけるM&A事例

  • 住宅・リフォーム M&Aレポート

株式会社船井総合研究所の吉川です。不動産仲介業を経営されているオーナー経営者向けの記事です。今回は、昨今の不動産仲介業界においてのM&A事例についてお届けします。そこから不動産仲介業界における、買い手・売り手の特徴について整理します。

活発化している不動産仲介業界において、M&Aの背景には何があり、どのような戦略を描き、実践しているのか、そのヒントを見つける機会になれば幸いです。

不動産仲介業界におけるM&A事例

まず不動産仲介業界におけるM&Aの事例について、いくつかご紹介いたします。

・不動産仲介業→不動産開発・建築・管理

不動産開発、設計建築、資産管理等を手掛けるシーラテクノロジーズ(東京都渋谷区)は、不動産プロップテックのietty(東京都渋谷区)からAIを活用したサービスと不動産仲介業を譲り受けました。本M&Aにより、シーラテクノロジーズは不動産事業の強化・DX化を実現、不動産領域におけるAIの活用を促進する目的があります。シーラテクノロジーズは、「オンライン接客による不動産仲介機能」の導入により、入居者とオーナーに対してより効率的で付加価値の高いサービスを提供し、シーラテクノロジーズグループの収益機会拡大が期待されるでしょう。

・不動産業界向けシステム業→不動産プラットフォーム業

「不動産プラットフォーム事業」を展開し、不動産業界に特化したWEBマッチングサービスとDXクラウドサービスを手掛けるリビン・テクノロジーズ(東京都中央区)は、不動産業界に精通したシステム開発会社である仲介王(群馬県高崎市)の全株式を取得しました。仲介王は大手不動産フランチャイザーの基幹システムに採用され、多くのFC加盟店が使用する不動産営業支援システムを提供しており、リビン・テクノロジーズは本M&Aを通して不動産仲介業に特化したシステムの開発力の強化を狙っています。

・物件調査、企画・デザイン業→不動産買取・仲介業

不動産買取事業、不動産売買仲介および賃貸仲介業を展開するマークスライフ(東京都中央区)は、テナント物件の調査・企画・コンサルティング、デザイン・設計等を手掛けるVIDA Corporationに資本参加しました。VIDA Corporationは空間デザイン等、独自の強みを持ち、マークスライフは自身のサービスである事故物件専門「成仏不動産」と併せることで、事故物件の価値の最大化を目指しています。

【不動産仲介業界M&A】売り手企業の特徴

不動産仲介業界における売り手の特徴として、独自の強み・サービスを保有していることが挙げられます。上記事例では、AI等の最新技術の開発・運用力や、システム開発能力、物件価値向上力等が見受けられます。

昨今の不動産仲介業界では、単なるマッチングを超えたサービスの提供を度々目にすることがありますが、それは大手企業の力によるものではなく、中小・中堅企業ならではの発想力やスピード、一点突破力によるものであるケースが多いといえます。M&Aにおいては、その特異性・一点突破が重宝されることが良くみられるため、譲渡をお考えの方は自社の強みを整理しておくことが重要です。

不動産仲介業界のM&Aで実行される理由として、圧倒的に多いのが後継者問題です。順調に経営を続けてはいるものの、次の適材の承継者がいない場合、業績・財務状況が良く企業価値のあるうちに希望する買い手企業へ株を売却し、第二の人生設計を立てるというものです。

その中でも、現経営者がM&A後に引退するか、引退せずに雇われ社長として継続するかの2パターンに分かれます。1つ目のM&A後に経営者を引退するパターンですが、高齢の売り主だけでなく、一部若い売り主であっても、M&A後に別事業を行うことを希望する方等はご引退されることもあります。

このパターンで特に注意しなければならないのが、引退後の会社の経営についてです。前述のように、そもそもM&Aを選択されるに至った理由として後継者問題が多いのは、親族・従業員に適任な後継者がいないことがその背景にあると考えることもできます。そうすると、現経営者が引退することによって、会社は事業を回せなくなり、業績が著しく悪化する可能性が高いといえます。

会社が有していた特異性も現経営者一人で担っていた場合には、失われることになってしまいます。譲り受ける側としても、当初想定していた業績・特異性が持続できないとすると、投資に消極的にならざるを得ません。さらに、M&A後に経営者人材の派遣が必要であることも、譲り受け側の積極性を削ぐ要素となり得ます。

特に、不動産仲介業界(売買)においては、経営者の人脈や紹介からの売上が業績を支えていたり、会社の強み=経営者の特性であったりすることが散見されますので、現経営者が引退した後も、業績が下がることのないよう準備しておくことが重要です。具体的には組織的に売上を計上できる仕組みづくりや、会社の強みを維持できる組織づくり・システム構築等が考えられます。

このように、スムーズにM&Aを実施するためには、ある程度の準備期間が必要となることもあります。後継者問題をどう解決するのか検討するに至った際は、一度M&Aの専門家にご相談してみると選択肢の幅が広がり、十分な準備をもって問題に臨むことができます。

船井総合研究所では無料で経営相談・企業価値評価を行っています。一度ご相談されてみてはいかがでしょうか。

第二の人生設計の2つ目のパターンである、M&A後も役員(経営者)として継続するというものは、40代~50代の経営者が選択されることが多くみられます。不動産仲介業としてある程度事業拡大してきたものの、自社のみでの成長に限界・頭打ちを感じている経営者が、さらなる事業発展のために中堅・大手のグループに属し、自身も雇われ経営者として、次なるステップへ向かうというパターン(成長戦略型M&A)です。

会社の強みも中小・中堅規模以上にスケールできず、持て余してしまうこともありますが、大手グループに入ることで自社単独では実現できなかった規模へ拡大・成長させることが可能となります。

大手グループの傘下に入ることで得られるものは長所の成長・拡大だけではありません。現事業の中で不得意な分野、特に中小企業においてはDXによる生産性側面や、採用・教育、給与体系等の人事的側面等が考えられますが、大手グループのノウハウを享受できるため、大きな改善がなされる可能性があります。実際にM&Aした後に売り手側企業の従業員の意識が変わったと耳にすることもあります。

一方、どのような相手先に譲渡するか、は注意が必要であるため、M&Aの過程で相手先の考え方やM&A後の進め方等をよく確認しておくことが重要です。両者が「こんなはずではなかった」となってしまうのは、最も避けなければなりません。また現経営者は、相手方にもよりますが、雇われ経営者として業績にコミットした評価がなされることはある程度認識しておいた方がよいでしょう。

最後に、第二の人生設計を考える間もなくM&Aをされる経営者の方もいらっしゃいます。体調不良等の身体的要因から引退をせざるを得ない方や、資金繰りが難航し、自社だけでは業績回復ができないと判断される方は、人生設計をせずにM&Aを選択せざるを得なくなります。以前は会社の強みもあったが、持続できず、衰退してしまった会社も人生設計ができないままにM&Aを選択されるケースが多いように思われます。急いでM&Aを進めるのは得策とはいえませんし、相手方との交渉においても劣勢に立ってしまう可能性も高くなってしまうため、今すぐに売却を検討していない場合であっても、会社の業績が良いうちに、経営者が健康であるうちに、一度M&Aを踏まえた人生設計を検討しておくことが重要です。

事業承継問題はいずれ必ず発生します。親族内承継をするのか、従業員に承継するのか、又は第三者へ承継するのか、いざという時のため、前もって関係者と話しておくことをご検討いただければと思います。

船井総合研究所では無料の経営相談・企業価値評価を行っております。長年のコンサルティング経験を活かし、業界ならではの視点を踏まえて、売り主の意向にそったご提案をさせていただきます。一度ご相談されてみてはいかがでしょうか。

【不動産仲介業界M&A】買い手企業の特徴

一つ目の特徴としては、広範囲のエリアで同業(不動産仲介業)を展開する中堅・大手、または地域一番店の企業です。新たな商圏拡大や、地域シェアを上げ、より自社の成長拡大を目指すシンプルな理由です。上記会社がM&Aを検討する際には、自社出店と比べてどうか、が重要な指標の一つとなります。そのため、前述した現経営者が引退した後に業績が下がってしまう会社であっても、自社出店と比べると、従業員、顧客、店舗が既に揃っていれば前向きに検討する可能性も考えられます。

中堅・大手グループ、地域一番店であっても人材不足は否めず、現経営者の継続を望む買い手も多いですが、それでもグループイン後の仕組みづくり・業務改善には長けているため、上記会社を買収する可能性は比較的高いといえます。

また昨今増えている二つ目の特徴として、買い手が近隣業種であることです。例えば、売り手企業と同エリアで事業展開する中堅以上の住宅建築会社等や、不動産テック会社を買収する不動産仲介会社等挙げられます。自社グループ全体の成長展開のため、不足している要素を補う目的として行われることが多くみられます。このようなケースにおいては、M&A後も対象会社の強みを活用したと考えることが多く、現経営者の継続がより望まれるといえるでしょう。

企業成長には、その事業の市場規模拡大に合わせて、自社のシェアを拡大することが基本戦略とされてきましたが、今の成熟から衰退期へ向かう日本の不動産状況禍においては、近隣業種へのM&Aによる参入・事業拡大が重要視されてきています。

船井総合研究所では長年のコンサルティング経験により、業界に特化した視点から成長戦略のご提案をさせていただきます。一度ご相談されてみてはいかがでしょうか。

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