製菓・製パン販売店をM&Aで売却、開店するメリット
- 飲食 M&Aレポート
コンテンツ
■製菓・製パン業界の動向
現在、製菓・製パン業界におけるM&A(合併・買収)のご相談が多くございます。パン屋やケーキ屋などの洋菓子店、和菓子店が対象となっています。特に、高級食パン店からのご相談が目立っており、この流れは数年前から続いています。日本全国で高級食パン専門店が増加しましたが、最近では市場の成長が鈍化し、競争環境が厳しくなっています。
多くの店舗が直面している主な問題は、人件費や原価の上昇、そして競争の激化です。この結果、1店舗あたりの運営環境は厳しくなっており、一部エリアではまだ出店の余地も残っているかもしれませんが、既存店舗との競争が激しくなっています。開業当初は順調だった店舗でも、予想より早く市場が飽和し、売上の減少に悩むケースが増えているといったところです。これにより、フランチャイズ加盟店や自社オリジナルの高級食パン店からのM&A相談が増加しています。
また、洋菓子店や和菓子店に関しても、地方ブランドの広域展開やデジタルマーケティング、製造プロセスの効率化が進んでいますが、これらの取り組みによっても競争が激化し、経営環境は厳しさを増しています。売上が好調な企業は、M&A市場で買い手として良い案件を探しており、一方で歴史ある洋菓子店や和菓子店では、経営者の高齢化や後継者不在、原価の上昇が経営を圧迫し、譲渡(売り手)側としての相談が増加しています。また、譲受(買い手)側には、高額な既存設備を有効活用しながら、新たに事業を始められる点がM&A市場での魅力となっており、製菓・製パン業界はM&Aの対象として人気の高い分野となっています。
■製菓・製パン販売店のM&A手法
製菓・製パン販売店のM&Aで最も一般的な手法は、店舗を現状のまま譲渡・売却する方法です。これは、運営中の店舗に紐づく資産・契約等のみをそのまま譲渡・引継ぎ、買い手が引き続き営業を行う形式です。この手法の主なメリットは、譲渡側(売り手)が本業に集中できることです。特に、製菓・製パン事業を主業務から切り離し、事業譲渡によって運営の負担を軽減するケースが多く見られます。
もう一つの手法は株式譲渡です。株式譲渡では、譲渡対象の企業の株式を売却することにより、その企業の全体を譲渡します。株式譲渡では、借入金や店舗に関連しない負債、労働問題なども含まれます。譲受(買い手)側の経営者にとっては手続きが不慣れなため不安に感じられることもあり、メリット・事業影響度が見合わないと判断される事がございます。特に製菓・製パン販売店のような年商数千万円~1億円程度のスモールM&Aでは、事業譲渡が適していることが多いです。
船井総合研究所のM&Aコンサルティングでは、1店舗からのM&A譲渡・譲受を取り扱っています。これは、他のM&Aブティックではあまり対応していないサービスです。さらに、月間で数千社以上の支援先企業を抱えており、その中には成長が著しい企業も含まれています。これにより、比較的短期間での売却が可能となり、スムーズな取引が期待できます。
■製菓・製パン販売店のM&Aにおけるメリット・デメリット
製菓・製パン販売店を含む店舗事業者が閉店する際には、多くの費用が発生することが一般的です。具体的には、賃貸借契約の残存期間に関わる違約金、原状回復費用などが挙げられます。これにより、通常の閉店では数百万円から数千万円のキャッシュアウトが生じるケースが多いです。以下に、閉店にかかる主な費用を説明します。
●閉店にかかる費用
1.契約期間満了前の解約による敷金・保証金の没収
賃貸契約を途中で解約する場合、契約内容によりますが敷金や保証金が返還されないことが多くございます。
2.空家賃や違約金の発生
賃貸契約を解除すると、空家賃や違約金が発生することがあります。これらの費用は契約の内容により異なりますが、大きな財務負担を与えます。
3.原状回復義務に伴う解体工事費用
店舗の内装や設備を元の状態に戻すための解体工事費用が必要です。これには店舗内の設備の撤去や修復が含まれ、場合によっては高額になることがあります。
4.リース品の買い取り・契約残存期間分の支払い
リース契約が残っている場合、リース品の買い取りや契約残存期間の一括支払いが求められます。これにより、追加の財務負担が発生します。
5.固定資産除去損の計上
固定資産を除去する際には、その除去に伴う損失を計上する必要があります。これも財務面での大きな負担となります。
6.食材消耗品や備品等の一括廃棄費用
食材や備品の廃棄にはコストがかかります。特に消耗品や短期間での廃棄が必要な場合には、追加の経費が発生します。
これらの費用を合計すると、閉店にかかる総額は数百万円から数千万円に達することが一般的です。このような大きなキャッシュアウトは、企業にとって深刻な財務的影響を及ぼすこともございます。
■製菓・製パン販売店のM&Aにおけるメリットとデメリット
製菓・製パン販売店の閉店には、多くのコストが伴うため、M&A(企業の合併・買収)を利用することで、これらの課題を解決することができます。船井総合研究所では、製菓・製パン販売店のM&Aに関して豊富な経験と専門知識を持つコンサルタントが在籍しており、賃貸店舗から不動産付きの店舗、フランチャイズ店舗、赤字の不採算店舗、ショッピングセンター内の店舗など、さまざまなケースに対応しています。以下では、製菓・製パン販売店のM&Aのメリットとデメリットを説明します
<製菓・製パン販売店のM&Aのメリット>
●売手側のメリット
1.現金収入の獲得
M&Aによって、閉店する代わりに現金収入を得ることができます。これにより、事業を売却することで即座に資金を確保し、財務面の負担を軽減できます。
2.撤退費用の最小化
事業譲渡を行うことで、原状回復費用や空家賃、賃貸借契約やリース解約に伴う違約金を回避または軽減することが可能です。これにより、閉店時の大規模な支出を防ぐことができます。
3.敷金・保証金の返還
適切な契約条件や家主との協議によって、敷金や保証金が返還される可能性があります。これにより、現金の回収が実現できます。
4.雇用の維持
譲渡先に従業員の雇用を引き継いでもらうことで、雇用問題を最小限に抑えることができます。これにより、従業員の生活安定を図ることができます。
5.屋号や店舗の想いの承継
店舗の屋号や理念を引き継いでもらえることがあります。これにより、ブランド価値や顧客との関係を維持することができます。
●買手側のメリット
1.開業費用の抑制
内外装の造作や厨房設備などの初期投資を抑えることができます。これにより、新規出店にかかるコストを大幅に削減できます。
2.新規出店の障害が少ない
既存の店舗を引き継ぐことで、近隣とのダクトや営業許可などの問題が少なくなります。これにより、新規出店に伴う手間やリスクを低減できます。
3.出店までのスピードが早い
出店準備が迅速に進むため、空家賃の支払いを最小限に抑えることができます。これにより、ビジネスを早期に立ち上げることが可能です。
4.採用費の抑制
従業員を引き継ぐことで、採用費用を削減できます。これにより、開業にかかる初期コストをさらに軽減できます。
5.ノウハウの引き継ぎ
既存のノウハウ、取引先、マニュアルなどが引き継がれるため、一からノウハウを構築する必要がありません。これにより、スムーズに運営が開始できます。
<製菓・製パン販売店のM&Aのデメリット>
●売手側のデメリット
1.契約調整の時間
経済条件や家主との契約調整には時間がかかることがあります。このため、売却プロセスがに時間がかかる可能性があり、計画通りに進まないことがあります。
2.撤退決定までの負担
譲渡が決まるまでの期間には、精神的な負担や赤字事業での金銭的な負担が続くことがあります。これにより、閉店までのプロセスがストレスになる可能性があります。
●買手側のデメリット
1.中古設備や造作のメンテナンス
中古の設備や内装を引き継ぐため、メンテナンスが必要な場合があります。これにより、追加の修理費用や調整コストが発生する可能性があります。
製菓・製パン販売店のM&Aは、売手側と買手側の双方に大きなメリットがあります。売手側は、閉店による多大なコストを回避し、現金収入を得ることで財務面のリスクを軽減できます。買手側は、初期投資を抑え、迅速な出店が可能となります。デメリットも存在しますが、それを凌駕するメリットがあるため、M&Aは積極的に活用すべき手法であるといえます。船井総研の専門コンサルタントによるサポートを受けることで、さまざまなケースに対応し、成功するM&Aの実現ができます。
■製菓・製パン業界のM&Aで気を付けておくべきこと
製菓・製パン業界のM&Aで気を付けなければいけないことでは、従業員や第3者へ情報が漏れないように進めることが非常に重要です。万が一、従業員に情報が洩れてしまった場合は、今後の不安から退職者が増加したり、良からぬ噂が出回ったりするケースがあります。また、店舗の譲渡対象物を明確にしておくことも必要です。店舗設備や造作物以外にも、リースやレンタル品の取り扱いはどうするのか、従業員の処遇はどうするのかなど、電気ガス水道などのライフラインの契約、クレジット契約やその他仕入先情報、マニュアルレシピなど、様々な譲渡対象物・引継ぎ内容の整理をしておくことが重要です。
■製菓・製パン販売店のM&A相場
製菓・製パン販売店に限らず、店舗M&Aの場合は、ほとんどの業種で下記の算出例にて譲渡代金の試算を実施します。
●黒字店舗の価格算出
1.年倍法
固定資産の簿価に営業利益の年数倍(通常2〜4年)を加算する方法です。例えば、固定資産が1000万円で、営業利益が年間500万円の場合、2年分の営業利益を加算して2000万円〜3000万円が目安となります。
2.EV/EBITDA法
EBITDA(利払い前・税引き前・減価償却前利益)を基に評価します。EBITDAの2年〜4年分を算出して、価格を決定します。EBITDAが1000万円であれば、2~4年分で2000万円〜4000万円の範囲となります。
●赤字店舗の価格算出
1.無償譲渡
赤字店舗の場合、譲渡価格が0円であることもあります。
損失を最小限に抑えるための手段で、出血を早期に止めるように、譲渡価格の高望みはをして、もたつくべきではないでしょう。
2.固定資産額(簿価)
赤字であっても、固定資産の魅力があれば簿価を基に価格を設定することがあります。
3.アドバイザリー手数料同等額
M&Aのアドバイザリー手数料を譲渡価格の基準にする場合もあります。
■製菓・製パン販売店のM&A事例と検討ステップ
当社が取り組んだケースの一例として、大手フランチャイズの高級食パン店のFC加盟権付き店舗の譲渡があります。この店舗はFC加盟からわずか2年未満で、当初のFC本部が示した事業シミュレーション通りの売上は上がらず、オープン後から赤字運営が続いていました。オーナー様からのご相談を受け、設備機器が最新で高額だったにもかかわらず、早期に売却を希望されました。これに応じて、固定資産額を下回る価格設定で売却活動を行った結果、数社の買手候補が検討に入ることとなりました。FC本部も、加盟店が閉店するとロイヤリティ収入がなくなるため、FC加盟金を無償で後継企業に譲渡するという非常に良い条件で協力をいただけました。
別の事例として、和菓子店の譲渡があります。この店舗はブランド力の高い複数の店舗を展開しており、和菓子製造と店舗運営が中心でした。買手としては、全国の催事販売に強い企業が選ばれた結果、譲渡後すぐに売上が倍増しました。歴史あるブランドや実店舗の信用力を活かしつつ、買手のビジネスルートに乗せることで商いが加速するというM&Aの典型例です。このように、製菓・製パン販売店のM&Aは買手次第で可能性が大いに広がることが特徴です。
■製菓・製パン販売店のM&Aを検討し始めたら最初に行うべきこと
製菓・製パン販売店のM&Aを検討し始めた場合、まず最初に行うべきは、M&Aコンサルタントに相談することです。船井総研では、製菓・製パン販売店をはじめとする店舗専門のコンサルタントが在籍しており、パン屋さん、ケーキ屋さん、和菓子屋さんなど、様々な店舗経営者様に対して親身にサポートを行っています。コンサルタントは、最善のスキームと売却価格の試算を行い、現実的な取引相場例を基に、適切な売却価格の提案を行います。
初期相談は無料であり、これにより経営者はリスクを負わずに専門的なアドバイスを受けることができます。また、船井総研の支援先には成長意欲が高い企業が多く、製菓・製パン販売店に精通したコンサルタントが揃っていることも大きな強みです。店舗の方向性や売却戦略を考えた際には、ぜひ閉店を決定する前に船井総研のM&Aコンサルタントにご相談ください。きっと、明るい未来が見えてくることでしょう。
2008年銀行に新卒で入行。与信管理・調査部門を4年半程度経験後、21012年頃より、銀行にてM&Aアドバイザリー業務に従事。その後、2019年船井総研に参画後も、引き続きM&Aアドバイザリー業務に従事。
岩倉 拓哉の紹介ページはこちら 船井総研のM&Aの特徴とM&Aに関する解説ページはこちら