士業事務所(税理士以外)における2022年のM&A動向の振り返り
- 士業 M&Aレポート
船井総合研究所のM&A支援部では、士業事務所コンサルティンググループと協力し、士業事務所のM&Aをお手伝いさせていただいております。本稿では、税理士を除く士業業界の最新動向について解説をさせていただきます。税理士業界については別稿でお伝えさせていただきます。
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2022年の士業事務所のM&A
2022年も社会保険労務士事務所と、社会保険労務士法人の事業譲渡を、お手伝いさせていただきました。
実際に支援させていただいいた案件や、他の成約実績を見ていくと、士業事務所の成約傾向としては「年齢」「病気」といった理由からM&Aの検討、成約に至った案件が多いようです。
即ち、そうした理由や背景の案件については、正確で平等な事務所価値分析、スピーディー対応が必要です。
そして何よりも、事業譲渡後の経営統合がスムーズに行われ、事務所が分裂してしまうようなことがないように、PMIを実施していくことが求められます。
急な対応が求められる案件こそ、統合作業をしっかりと行うことが重要であり、それがなされていない案件については、統合後に解散しているケースも少なくありません。
また2022年については、士業事務所M&Aのご相談は、2019年以降では最も多くいただきました。
そうしたことからも、士業事務所のM&Aが浸透してきたことを実感しております。
そうした中で、様々な業種のM&Aをお手伝いさせて頂いている中で、士業事務所の特徴の一つになっていることがあります。
それは
所長先生の現在の年齢や、今後のことを考えると、第三者に承継した方が良いと考えられているのですが、
譲渡額を算定した時に、譲渡後の生活に必要な金額、想定していた金額と、
譲渡後の金額を考慮した時に「足りない」と感じることで、M&Aの検討が進めることができない、という傾向があります。
これは、職員様にとっても、顧問先企業様にとっても大きな問題です。
本来であれば、経営能力の高い第三者に譲渡した方が良いと所長先生、オーナー様自身がお考えであるのにもかからず、譲渡できないことにより、
譲渡のタイミングが後ろ倒しになり、タイミングを失うだけでなく、更に譲渡しづらい状況になってしまう、ということが大きな問題です。
こうした傾向は士業の中では、社労士事務所、社労士法人、司法書士事務所からのご相談に多い傾向にあります。
士業事務所がM&Aを考えるタイミング
それでは、そうしたタイミングを失わないように、事前に準備するためにはどうしたらいいのでしょうか。
それは、ご自身が考えるベストなタイミングで譲渡するために重要なことは、
ご自身の「ライフプラン」を作成し、譲渡後の生活に向けた資金を把握し、準備することです。
そして更に重要なことは、早い段階で事務所を譲渡した時の譲渡額、
すなわち譲渡時の事務所価値がどれくらいになるか、算出し、把握することが重要です。
この「譲渡後の資金計画=ライフプラン」と「事業譲渡事務所価値」を
早いタイミングで把握することで、適切なタイミングで事務所を事業譲渡することができます。
そして、適切な事業譲渡を実行しようとしたら、引退したい年齢の1年前には譲渡することが重要です。
すなわち、士業事務所のM&Aの場合、所長先生と関わりの強いお客様が多いという傾向があることから、譲渡後、少なくとも1年は残っていただきたい、という譲受側のニーズが強いです。
逆に、譲渡後残ることが難しい案件については、
1年間残ることができないことが理由となり、譲渡が進まない傾向にあります。
したがって、引退したいと考える理想のタイミングから3年から5年前には、
少なくとも一度は事業譲渡における事務所価値を試算し、引退後の準備を本格的に進めることが重要かと思います。
このコラムをお読みの先生におかれましては
「こんなはずではなかった、、、」
ということにならないように早い時期からの
❶ ライフプランの作成
❷ 譲渡額の試算
以上を是非行ってください。
M&Aを考える時、従業員様や顧問先企業様のことが重要ではあります。しかしそれだけではなく最後はご自身のお金がとても重要な部分となります。
船井総合研究所では、企業価値試算、事務所価値試算を無料で行っております。
今すぐの検討でなくても大丈夫です。
早いタイミングでご相談ください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
新卒入社から約10年間、税理士・会計事務所業界に特化した経営コンサルティングに従事。
その後支援先企業の組織拡大に合わせて、組織・人財採用に課題がシフトしたのに合わせて、人財領域の専門コンサルタントとして、税理士・会計事務所業界以外の業界にも対応し、多岐にわたる業界の支援を担当する。
その後、企業の成長支援の一環としてのM&Aの支援業務を行っている。
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