賃貸管理業界の2023年時流予測と賃貸管理業界におけるM&Aの活用方法
- 不動産賃貸管理 M&Aレポート
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賃貸管理業界の2023年の時流予測
2022年は新型コロナウイルスの影響も 3 年目となり、賃貸住宅建築、収益物件売買、賃貸入居者住み替えなど、コロナ前の状況に戻ってきている傾向はあった。2023年もこの傾向は継続し、市場全体が回復しつつあると考えられる。
一方、人口・世帯数減少と新築着工数横ばいによる入居率低下の流れは強い。2020年には12,615万人だった日本人口は2025年には12,254万人、2030年には11,092万人と予測され、その後も増加の兆しは見られない(令和4年版高齢社会白書)。また人口の地域格差も広がっており、2015 年~2020 年の人口増加数を都道府県別にみると,東京都が 53万人と最も大きく,次いで神奈川県(11万人),埼玉県(7万人)などとなっており,8都県で人口増加となっている(令和2年国勢調査)。反対に人口減少数をみると,北海道が15万人と最も大きく,次いで新潟県(10万人),福島県(8万人)などとなっており,39道府県で人口減少となっている。世帯数についても、2025年以降は減少傾向になり、2040年までには2.3%の減少が予測されている。
また、地域差はあるが、築年数の古い物件で、設備・間取りなどのリフォーム・リノベーションが進んでいない物件はより空室が目立ち、賃貸物件の所有者は物件からの収支が悪化し資産の見直し・再生を余儀なくされてきている。そんな賃貸物件のオーナーに対して、賃貸管理・資産管理の両面でサービスを展開する管理会社が出てきている。
不動産業界は人口や世帯数などのマクロ的要素の影響が大きいため、高齢化・人口減少等から発生する長期的なニーズと、コロナに見られたような迅速な対応が求められるニーズの両方に対して柔軟な経営戦略が求められる。
なお、2022 年12月20日に、日銀総裁による事実上、長期金利の値上げが発表され、2023年4月以降、住宅ローンに合わせて、事業用ローン(収益物件購入・賃貸住宅建築)の金利も上がっていく方向化で、2023年の市場は大きく変動を迎えると思われる。
賃貸管理業界が2023年以降M&Aを検討する際のポイント
今後間違いなく、人口・新築着工数は減少し、住宅関連の需要は減少していくことが予測できる。これまでと同じ社内体制、既存仲介・管理業務、商品・客層での経営だけでは、変化する社会情勢に対応できず、企業の衰退が加速すると考えられる。今後、衰退期に突入する業界において、勝ち上がっていくためには、常に成長・拡大する意識、戦略が求められることになる。
自社の事業地域で仲介件数や管理戸数など上位シェアを確保しており、自社ブランドを浸透させている会社であれば、累積経験効果によって、業務の仕組み化により効率的な構造を作り出す事ができる。そのような会社は衰退業界であっても利益が出やすく、関連業態へも展開しやすい構造である。とすれば、不動産管理会社が次に目指すは「管理シェア拡大」「関連事業の内製化」「業務効率化」の3点である。いずれの選択であっても、自社のみで達成するよりもM&Aを実行する方が費用・時間面で優位性がある。買収する会社としては、管理戸数を既に保有している会社、リフォーム工事会社、DX化が進んでいる会社等が考えられる。
一方で地域シェアが低い企業の場合は、利益を確保できる構造を実現することが難しくなる。例えば、仲介営業・営業事務・管理業務など体制を配置する場合にも、兼務が多くなり、顧客に対するサービスも十分に行えなくなり、収益も出しにくい構造になる。事業の撤退は大きな決断となるため、議論されないまま先延ばしにされやすいが、タイミングを間違うと大きな損失につながる局面になる場合もあり、時には冷静な判断も必要になる。また「事業撤退」は「雇用の問題」や「既存顧客との関係」に大きな影響を与える。また、「事業成長」のためにも、同業または異業種での中堅・大手企業にグループインし、新たな成長路線を作る事も重要な戦略となる。
M&A市場において賃貸管理会社は、安定したストック事業・安定した経営基盤であることから、買い手希望はより増えてきているため、市場価値が上昇している。また人手不足解消の景況から不動産業に従事する(資格保持者、建築リフォーム関係者、実績のある営業社員)人材に焦点が当てられ、価値が上がるケースも出てきている。
合わせて下記の賃貸管理業界2023年時流予測レポートもご覧ください。
船井総研に新卒入社後、賃貸支援部を経てM&A支援部に配属し、不動産管理業中心に業務を行い、入社3年で1件の成約経験を持つ。
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