飲食店(飲食業界)M&A事例
- 飲食 M&Aレポート
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■飲食業界の市場動向
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で大きく落ち込んだ飲食業界は、コロナ3年目の2023年と4年目の2024年にかけて回復の兆しを見せています。売上、客数、客単価の各指標は前年比でプラスとなり、コロナ禍の影響を受けた時期に比べて大きく持ち直しています。しかしながら、コロナ前の水準と比較すると、全体には完全な回復には至っていないのが現状です。
個別要素では、売上は概ね回復傾向にありますが、客数はコロナ前の水準には戻っていません。その一方で、客単価は上昇しています。ただ、この客単価の上昇は、主に価格転嫁によるものであり、人件費、仕入れ価格、水光熱費などのコストが全体的に上昇しているためです。したがって、売上は回復しているものの、費用の増加が営業利益に影響を与え、全体としては依然としてラクではない経営環境が続いています。
さらに、小規模飲食店を支えていた給付金、補助金、助成金などの一時的な救済措置が終了し、コロナ融資の返済が始まったことが経営に追い打ちをかけています。加えて、人材不足が加速しており、コロナ化にぼかされていたポストコロナの経営の厳しさが顕在化しています。コロナ明けに期待を寄せていたものの、実際には「そこまで戻らない」という現実がそんな事業者に突きつけられ、先行き不安を感じている店舗も多く、閉店に踏み切るケースも依然として見られます。その結果、事業所数は減少を続けています。
飲食業界全体はたしかに回復を果たしつつはあるものの、依然としてさまざまな困難に直面しています。コロナ禍の影響で変化した消費者の行動や経済的な圧力が、業界の再構築を促しており、企業は新たな戦略を模索しながら対応を進めています。
■飲食店M&Aの動向
2021年のM&A市場では、特に焼肉店の取引が人気で活発に行われました。この背景には、空調換気システムの進化とコロナ感染リスクの軽減が大きく寄与しています。新型コロナウイルスの影響で、感染リスクを軽減するための空調換気システムが導入され、これが焼肉店に対する安心感を提供しました。この安心感が、焼肉店のM&Aを促進する要因となりました。
2023年以降、飲食業界では以下の施策に基づいたM&Aが多く実施されています。健康志向、プレミアム・品質向上、デジタル化、地域密着企業の全国展開です。これらの施策を理解することは、業界の動向や収益性を上げるための企業戦略を把握する上で重要です。
1.健康志向
健康志向の高まりは、消費者のライフスタイルや食の選択に大きな影響を与えました。コロナ禍を経て、消費者の健康に対する意識がさらに強化され、栄養価が高く、添加物が少ない食品や、オーガニック、グルテンフリー、低糖質などの特定のニーズに応える商品への関心が高まっています。このトレンドに応じて、飲食業界では健康志向を反映したメニューやサービスを提供する企業が注目されています。具体的には、無添加や自然素材を使用した食品、カロリーや糖質を抑えたメニュー、さらには免疫力を高める成分を含む食品が求められています。
健康志向に対応するため、企業はM&Aを通じて、これらのニーズにマッチするブランドや事業を取り込むことが増えています。これにより、企業は新しい市場への参入や、既存のメニューの改善を行い、消費者の期待に応えています。たとえば、オーガニック食品を扱う企業の買収や、健康志向に特化したチェーン店の統合などが行われています。
2.プレミアム・品質向上
プレミアム感や品質の向上も、飲食業界における重要な施策の一つです。余裕のある層の消費者の生活水準が向上する中で、高品質な食品やサービスに対する需要が高まっています。高級食材を使用した料理や、特色あるサービスを提供するレストラン、さらには特別な体験を提供する店舗が注目されています。プレミアム市場の拡大に伴い、企業は高品質な商品やサービスを提供するブランドへの投資を進めています。
具体的な施策としては、上質な食材の調達や、料理の技術革新、店舗のデザインやサービスの改良が挙げられます。また、プレミアム市場での競争力を高めるため、企業は品質の高いブランドをM&Aによって取得し、自社のポートフォリオに加えることで、顧客の期待に応えています。たとえば、高級レストランの買収や、著名シェフがプロデュースするブランドの取得などが見られますし、ちょっと良いブランドに自社のスケールメリットを組み合わせる動きも見られます。
3. デジタル化
デジタル化は、飲食業界におけるもう一つの重要な施策です。コロナ禍により、非接触型のサービスや効率的な運営が求められるようになり、企業側での省人化の目的と相まって、デジタルツールの導入が後押しされました。オンライン注文やデリバリーサービスの拡充、デジタル決済の普及、そして店舗運営の効率化を目的としたデジタルシステムの導入が進んでいます。
デジタル化により、消費者はより便利に店舗の内外で購入や予約ができ、店舗は効率的に運営できるようになりました。企業はデジタルツールやプラットフォームを活用することで、顧客データの分析やマーケティング戦略の最適化を図っています。M&Aの観点からは、デジタルプラットフォームやテクノロジー関連企業の取得も増えており、これによりデジタル化のメリットを享受しつつ、業務の効率化や顧客サービスの向上を実現しています。
4.地域密着企業の全国展開
地域密着型の企業が持つ成功モデルを全国規模で展開する動きも見られます。地域に根ざした企業は、その地域特有のニーズや顧客層に応じたサービスや商品を提供することで成功を収めており、この成功モデルを他地域に展開することでさらなる成長を目指しています。地域密着型企業の全国展開には、フランチャイズモデルや直営店の拡充などの方法が取られています。
M&Aによって、地域密着型企業を取得し、そのビジネスモデルやノウハウを全国展開に活用する動きが加速しています。これにより、地域での成功を全国規模に拡大し、全国的なブランド認知度を高めることができます。たとえば、地方で成功したレストランチェーンの全国展開や、地域特有のメニューを提供する飲食店の増加が見られます。
コロナ禍で醸成された非接触の重要性もしくは許容されるようになった風習を意識しつつ、市況の回復と人材不足の深刻化が省人化やデジタルツールの活用を促進しています。体力のある企業は、効果的な運営ノウハウを磨き、再度の拡大に向けて舵を切っています。これらの施策を基盤に、M&Aを通じて優良立地の取得や開業費の抑制、マニュアルやノウハウの吸収、人手不足の緩和、取引先の拡充、固定客の取り込みを迅速に進めています。また、それらの筋肉質なノウハウを土台として、施策の効果を売上に結びつけるため、店舗の拡大を行う企業が再び増加しています。
■飲食店M&Aの事例
弊社では、10店舗規模のまとまったM&A案件だけでなく、赤字や薄利といった業績の1店舗300万円(関東の日本料理店)や1店舗あたり200万円(九州のフードコート内のカフェ)といった金額でのM&A事例も数多くお手伝いさせていただいております。「M&Aってちょっと大きな話で、うちは別に対象に入らないでしょ」といったイメージをお持ちの譲渡を考えられる売主様にとっては、この金額は一般的なM&A取引額とは異なるかもしれませんが、飲食店や飲食事業のM&Aでは、無償譲渡から数百万円、数千万円での取引が非常に多いのが特徴です。
飲食店舗であれば、業種・業態・立地・契約状況は問いません。お手伝いさせていただく案件は、業態も様々ですし、駅前・駅近、ロードサイド、商業施設の中等、あらゆる立地に対応します。不動産が賃貸でも所有でも混在でも結構ですし、自社ブランドでもFCでも、関係者が多いものでもどのような形式でも対応させていただきます。従業員・リース・金融機関ケアの必要な場合等を含め、関係者の状態をご教示いただき、情報開示の順番を相談しながら適切に進めてまいります。既存設備を活かしつつ、原状回復や違約金等の賃貸契約の内容も加味した上で、経済性と情報管理を適切に行い、最大限、譲渡主(売り主)・譲受主(買手)・家主・従業員等、関係者にとっての良い譲渡・譲受をお手伝いさせていただきます。
譲渡案件は確実に増加しており、各社は本業の一本化から、コロナ後の成長戦略へと切り替えるためにM&Aを積極的に活用しています。
■飲食店経営者の分かれ道
飲食店経営において、最も重要なのは「判断・決断」です。この「判断・決断」は、経営者としての最も重要な役割です。しかし、多くの経営者がこの「判断・決断」を適切に行えていない現実があります。実際は、「本当はわかってはいるのだけど・・・」といったところが多いかと思いますが、我々が多くの経営者と対話する中で感じたことですが、「どうしたらいいかわからないけど、また繁盛する時がくるかもしれない」というような漠然とした期待を抱き、現状に対する具体的な対策を講じない経営者が多く存在していました。特にコロナ禍の中では、このような思考が目立ちました。
しかし、コロナの影響で業界全体に求められる運営ノウハウが高まる方向に大きく変わり、文化の変化が進む中で、客数が完全には戻らず、人材不足は深刻化し、物価も上昇しています。また、戦争・供給チェーン・為替の問題などが物価の急騰を引き起こし、その影響が直接的に飲食業界にも及んでいます。これらの変化は予測しにくい要素による急加速という面もありましたが、日本や世界の人口動向、日本の人口ピラミッドと女性の就業率の上昇の鈍化・限界、経済活動の変化を考慮すると、ベクトルとしては基本的なシナリオの一部といえるでしょう。
このような状況の中で、先を見越して迅速に対応した経営者もいます。コロナ禍の最中にテイクアウトやデリバリーの導入、非接触型のサービスの導入を進め、省人化を図ったり、経営の立て直しを行ったりした経営者たちは、その後の回復においてもその後においても一定の成功を収めています。さらに、一時的な赤字を覚悟の上で、優良立地に低賃料で店舗を開設した経営者もおり、これが功を奏しているケースも見られます。また、逆に、自社リソースでは勝算は薄いと早くに判断され、縮小・撤退により譲渡側の売り主として、傷を最小限に抑えた経営者もいらっしゃいます。
変化に適応するためには、現状を冷静に見極め、必要な対策を講じることが求められます。コロナ前の状態には戻らないという現実を受け入れ、攻めだけでなく守りも撤退も含め、変化に対応するための戦略を立てることが必要です。外食が完全に消えることはないでしょうが、消費者の行動やニーズは変化しています。デリバリーやテイクアウト、モバイルオーダーといったデジタル化も進んでいますし、これに対応した効率的な運営や、コスト削減が求められています。人材不足に対しても、競争をするしかありません。奪い合いです。日本の人口ピラミッドを見れば一目瞭然で、麻酔的施策も尽きてきたのが足元数年の経緯です(高齢者の雇用延長の限界・女性の就業率の上昇の鈍化)。採用特設HPの設置や求人戦略の見直しなど、積極的な対応が必要です。昔20年かけて起こった変化のインパクトが、今や3年で起こるような時代です。
一方で、多くの飲食店経営者が、本業の利益が戻りきらない状態でも、必要な変革や判断が遅れ、給付金や補助金に依存していたケースも少なくありませんでした。こうした状況では、時が経つのを待つだけでは根本的な解決には至らず、さらなる厳しい状況に直面していきます。
経営者には、未来を見通す力と適切な判断力・決断力が求められます。もし未来を見通すことが難しい、またはどうしたらよいかわからない場合は、専門的なサポートを受けることも一つの手です。例えば、船井総合研究所の飲食業専門のM&Aコンサルタントに相談することが考えられます。専門家のアドバイスを受けることで、新たな視点や具体的な戦略を得ることができ、経営の分かれ道において明るい未来へと導けるよう最善を尽くします。
経営者としての「判断・決断」が飲食店の未来を大きく左右します。変化に柔軟に対応し、積極的な戦略を講じることが成功への道です。明確なビジョンを持ち、必要なアクションを起こす勇気を持つことが、今後の経営の鍵となるでしょう。
■飲食店M&A(譲渡)を成功させるための秘訣
飲食店のM&Aを成功させるためには、業界に特化したM&Aコンサルタントを見つけることが不可欠です。特に、大手M&Aブティック、厳密には業界事情に明るくなく、変容的な見解で判断されてしまう担当者に依頼すると、適切でない価値算定が行われることがあります。例えば、赤字の店舗で解体費用もかかる場合に、5000万円以上で売れると評価されることがあります。このような場合、経営者は高額な着手金やアドバイザリー手数料を支払い、結果として市場相場とかけ離れた試算に基づいた契約を結ぶことになります。
業界に特化していないコンサルタントは、業界の実情を把握していないため、現実的でない試算を行うことが多くございます。高い査定は嬉しいものですが、買うのはM&Aアドバイザーではなく、同業等のプロ経営者であり、現実に実を結ばなければ、結果は良いものとはなりません。買手候補が現れないまま長期間放置されるといった事になり、最終的には着手金が戻らずに閉店や廃業に追い込まれるケースもあります。逆に、買手候補が現れても、結局相場よりも大幅に低い価格で取引されることにもなりかねません。
このようなリスクを避けるためには、飲食店や飲食業に特化したM&Aコンサルタントを選ぶことが重要です。船井総研では、業界特化型のM&Aコンサルタントが在籍しており、業界の専門知識を活かして適正価格でのM&Aを実現します。また、船井総研は業界トップクラスの安価な手数料でサービスを提供している上、ミスマッチが少なく、スムーズなM&Aが可能です。
是非自社の方向性を考えた際は、閉店・廃業する前に船井総研のM&Aコンサルタントにご相談下さい。分かれ道に対し、明るい未来へと導いてくれるでしょう!
2008年銀行に新卒で入行。与信管理・調査部門を4年半程度経験後、21012年頃より、銀行にてM&Aアドバイザリー業務に従事。その後、2019年船井総研に参画後も、引き続きM&Aアドバイザリー業務に従事。
岩倉 拓哉の紹介ページはこちら 船井総研のM&Aの特徴とM&Aに関する解説ページはこちら