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食品製造・食品卸の2023年時流予測と食品製造・食品卸におけるM&Aの活用方法

  • 食品製造・食品卸 M&Aレポート

食品業界をとりまく環境の変化

食品製造・食品卸業界の2023年の経営環境は、原料価格高騰にはじまり、物流コスト増加人手不足と課題を挙げれば枚挙にいとまがありません。特に影響の大きいトレンドとして、①原料価格高騰、②物流コストの上昇、③飼料の高騰、④卵の品薄、⑤最低賃金上昇について取り上げます。

①原料価格高騰

世界的な人口増加による需要増、地球温暖化による干ばつ、天候不順による穀物相場の上昇などにより、食品原料の価格は年々上昇しています。このトレンドは2023年も続き、食品製造・食品卸業者に影響を与え続けます。

②物流コストの上昇

2020年に急上昇をはじめた原油価格は、2022年半ばに一旦ピークを迎えていますが、ロシア・ウクライナ情勢も安定しない2023年に下降すると予測することはできません。食品業界においてはトラックの運賃に関わる軽油価格が2022年も高止まりしたままであり、ドライバーの残業規制の問題も輪をかけて影響しはじめる2024年に向けて、2023年もコスト高は免れられないと予測できます。

③飼料の高騰

家畜、家禽、養魚などの飼育動物の飼料の価格の高騰も食品製造業の原価を押し上げます。ロシア・ウクライナ情勢の悪化も飼料価格高騰に影響を与えています。

④卵の品薄

スーパーに行っても卵がない、価格が高いと感じている消費者は多いと思います。鳥インフルエンザの影響から卵の流通量が減っています。大阪の卵加工業の経営者にインタビューしたところ、「価格が高いのではなくて数が入らない。仕入れられる卵の数が2割減になっている。利益が出ないだけでなく、純粋に売上が2割下がってしまう」とのことでした。

毎年3月に「てりたまシリーズ」を発売する日本マクドナルドは、朝マックの「てりたまマフィン」は、国産たまごの供給状況から今年の販売は中止とすると発表しています。

⑤最低賃金上昇

2022年10月、各都道府県の最低賃金の額は約3%引き上げられています。食品製造業の工場での工員には、最低賃金で働いている方や、家族の扶養内に労働時間を調整して働いている方もいます。新たな採用が難しくなること、勤務時間を短縮したいという要望が起こることが予測されます。

予測されるトレンドと打ち手

上述の環境の変化に対応するため、食品製造・食品卸業の各社が打ち出す施策として、①値上げ交渉、②付加価値向上、③代替食材の利用、④DX、AIの活用について取り上げます。

①値上げ交渉

原料高、資源高など原価が上昇することへの最も直接的な打ち手として、小売価格への転嫁が考えられます。食品製造・食品卸業では多くの事業者が直販チャネル・自社製品より、小売店等への卸売やOEMによって売上を上げていることから、自社独自で小売価格を上げるというよりは、卸先に対して価格転嫁の依頼・交渉をすることが求められます。中国地方のある食品製品の会社では「得意先から購入価格を上げるよう逆に申し出があった」とのことでした。自社が得意先にとって真に求められている、共存共栄するためのビジネスができているのか今一度見直す契機になると言えます。

②付加価値

競争が激化しても、価格を上げても選ばれるためには、自社独自の特徴を持つ必要があります。その特徴は最終的な選び手であるエンドユーザーに届かなければ意味がありません。わかりやすい特徴でいうと「健康」が挙げられます。他、トレンドでは小売業のSDGsへの取り組みも背景に「サステナビリティ」を特徴にした商品開発に取り組んでいる製造業者もあります。

③代替食材の利用

高騰している食材を他の食材で代替するというのは特定の食材の高騰時の常套手段です。例えば、大阪の揚げ物製造業の会社では「製粉メーカーに依頼して小麦に使う着色料の量を減らしてもらう」という取り組みをされていました。原料のどの部分なら材料を換えても最終製品に悪影響がないのか、深く考えた上での見事な取り組みです。

④DX、AIの活用

生産性向上、人手不足への対策に設備投資をすることも一つの解決策です。設備投資に伴う高額な投資・資金調達によるリスク・財務状況の悪化を避けるために、外注工場や補助金を活用する企業もあります。設備投資に使える補助金としては、ものづくり補助金や事業再構築補助金の予算が組まれることは今後も予測できるため情報収集を怠らないことが大切です。普段から協力工場とのパートナーシップを深めておき、固定費的な人件費を外注費という変動費にすることで需要にあわせた生産にすることもできます。

食品製造・食品卸におけるM&Aの活用方法

経営課題に対応するために、M&Aも有効な手段となります。昨今の食品製造・食品卸業におけるM&Aを3つに分類して解説します。

①食品製造業同士でM&Aが行われるパターン

食品製造業同士のM&Aでは、販路や商品構成を充実させてシナジーを目指す、スケールメリットによる合理化・生産性向上、一方の後継者不在による見受けなどに勝ち筋を見出すケースが見られます。

2022年、冷凍食品、水産加工品製造・販売・輸出入などのヤマガタ食品(静岡)は、惣菜加工・冷凍食品製造の朝日食品(静岡)を買収しています。同地域の同業種がM&Aを通じて合理化・生産性向上に取り組む事例です。

②食品製造業と小売業・流通業の間でM&Aが行われるパターン

販路交渉力、物流、販売力のある小売・流通業が食品製造業社を買収することで、製造力やブランド力を即座に手に入れ成長を加速することができます。

2022年、菓子製造販売のシャトレーゼ(山梨)は、和洋菓子製造販売の菜花堂(岩手)を買収しています。国内640店舗、海外9カ国・地域120店舗で展開しているシャトレーゼが、東北地方での和洋生菓子を中心とする商品の強固な生産拠点を確保しました。

③食品製造業が大手企業の参加に入る、またはベンチャーを買収するパターン

企業規模に違いがある場合でも、大手企業に狙いがあるケースがあります。食品製造業者がEC、海外展開、自社ブランド開発などを取り組むにも、自己成長だけでは限界がある、時間がかかると判断し、大手の資本、人材、ノウハウを受け入れることで成長を加速させられます。逆に、自社ブランドを持つ大手製造業は、EC、AI、ロボット、SNSなど先端領域でベンチャーを傘下におさめてスピードを重視するケースもあります。

例えば、化粧品・健康食品製造販売のフォーシーズHD(福岡)は、2023年、EC販売のiiy(東京)を買収しています。iiyは2009年設立、売上高2億3400万円、従業員2人の会社ですが、独自の市場リサーチ手法を活かした商品開発力があります。、フォーシーズHDは、iiyの既存事業だけでなくその能力とポテンシャルを買い、iiy代表から約2億1600万円で72%の株式を取得しています。

食品製造業にとってもベンチャー企業にとってもM&Aが自社の成長のための手段になり得た好事例です。

まとめ

環境の変化が激しい食品製造・食品卸売業では、生き残りをかけて2023年も様々なM&Aが生まれることが予測されます。

下記の食品業界2023年時流予測レポートも、合わせてご覧ください。

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