整骨院業界M&Aの時流と今後
- 整骨院 M&Aレポート
近年、整骨院業界は大手企業間のM&Aが活発になっております。今回は整骨院業界の時流をもとにM&Aの目的に触れて参ります。
コンテンツ
整骨院業界M&A:人材不足・人材獲得競争の激化
まずは、こちらの表をご覧ください。こちらは年間の柔整師の合格者数をグラフにしたものです。第20回国家試験(2021年実施)では約5,000人であった合格者数ですが、第30回国家試験(2022年実施)では3,000人弱に減少しております。
また、施設数は平成24年から令和2年にかけて概ね増加傾向(42,431施設→50,364施設)となっております。
施術所数の推移
施設数は増加しているが、柔整師の数は減少傾向にあり、柔整師の獲得競争が進んでいる状況となっております。整骨院は柔整師の存在が事業を左右する、いわば労働集約型のビジネスとなりますので今後しばらくは人材獲得競争が続くと推測されます。
なお、現在は業界問わず働き方改革が浸透しつつあります。整骨院業界も例外でなく待遇や労務環境が問われる時代です。適切な賃金UPと労働時間の管理が求められます。こうした働き方改革に対応できる企業が生き残りの資質を備えていると言えます。
帝国データバンクによれば、2018年度時点で年商を把握可能な整骨院事業者1,997社のうち、年商1億円未満の企業数が1,656社(全体の82.9%)、年商1~10億円未満の企業数が192社(全体の15.9%)となっています。また、従業員数別の企業数をみると「10人未満」の事業者数は1,702 社で全体の81.4%となっております。
整骨院業界は小規模事業者数の占める割合が多いといえますが、こうした業界構造の場合、いずれは事業環境が厳しくなると競争力のある大手チェーン店に人材や資金などの経営資源が集約していきます。その一つとして、M&Aによる業界再編があげられます。
整骨院業界のライフサイクル
会社にも成長期著しい時期や安定している時期があるように、業界にも成長期や安定期があります。これを業界業種の「ライフサイクル」と呼びます。
上記の図の左端は「導入期」と呼ばれ、新しい業界業種が該当します。スタートアップ界隈のように、一般的に事業規模は小さいものの、需要が多数あり、今後の成長性が期待される業界とイメージいただければと存じます。導入期の業界が育つと、「成長期」に移行します。
現在では、AI・VR業界が注目されておりますが、市場規模や企業数とった業界全体が成長傾向にある状態が「成長期」とされます。整骨院の場合は「導入期」や「成長期」とはことなり、「成熟」から「衰退」への過渡期となっております。
事業所数は増えているものの、そもそもの需要の源泉となる国内人口が減少傾向にあることから、一つの市場を多くの競合が取り合うという構造になっております。供給過多が目前に迫っていくことから、AIやVR業界とは異なる戦い方が必要になってきます。
人材といった限りある経営資源を活かすためには、自力のみならず、他社と手を組むことも方策の一つと言えます。なお、「衰退期」がさらに進んでいくと「安定期」と呼ばれます。これは、大手企業数社~10社程度が市場のシェアのほとんどを占めている状態です。
企業間の統廃合が進み、競争力のある企業に経営資源が集約された結果となります。
M&Aというと「敵対的買収」や「のっとり」といったイメージをお持ちの方もいらっしゃるかもしれませんが、こと中小企業のM&Aは友好的に進んでいくケースが多数となります。事業継続という点を意識した場合のM&Aのメリットとして下記があげられます。
整骨院業界M&A:譲主のメリット
・ノウハウの共有による事業基盤の強化や技術者の成長が期待できる。
・大手傘下による従業員のキャリアアップや、大手資本を活かした攻めの経営が期待できる。
整骨院業界M&A:買主のメリット
・有資格者の確保により、企業の成長のスピードアップが期待される。
・店舗拡大と自社ノウハウの活用により、売上・利益の拡大が期待される。
・商圏内のシェア獲得により、早期に地域一番化を目指すことができる。
・他エリアの店舗を買収することで新規エリアを開拓の足掛かりにすることができる。
M&Aを活用した企業経営は、中小企業でも有効に機能します。整骨院業界の時流のなかで、今後も成長していくためにM&Aをご検討いただければと存じます。
税務監査・財務コンサルティングの業務経験に加え、事業承継・事業再生コンサルティングの成功経験を多く持つ。2017年10月に船井総研中途入社後、M&Aコンサルティングにより22件の案件成約を担当。 現在、船井総研における事業承継・M&Aコンサルティングの中核的な役割を担う。
中野 宏俊の紹介ページはこちら 船井総研のM&Aの特徴とM&Aに関する解説ページはこちら