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食品製造業界M&A:最近の事例

  • 食品製造・食品卸 M&Aレポート

①キリンが花王からヘルシア事業の事業譲渡

2024年2月、キリンホールディングス株式会社(社長 磯崎功典)のグループ会社である、キリンビバレッジ株式会社(社長 吉村透留、以下、キリンビバレッジ)は、花王株式会社(社長 長谷部佳宏、以下、花王)の茶カテキン飲料「ヘルシア」に関する事業を譲り受けることを決議し、2024年2月1日に同社との間で事業譲渡契約を締結しました。
今後、両社にて必要な許認可取得などの手続きを経て、当社は2024年8月(予定)より茶カテキン飲料「ヘルシア」の製造・販売を開始します。

【譲渡事業】花王(株)東京都中央区 売上高1,532,600百万円(2023年12月期)による、ヘルシアブランド5製品8品種

【譲受企業】キリンホールディングス(株) 東京都中野区 売上高2,134,400百万円(2023年12月期)

②ライオンが日清食品へ機能性表示食品の一部事業の譲渡

2023年11月ライオン株式会社(4912)は、機能性表示食品の一部に関わる事業を、日清食品株式会社(大阪府大阪市)へ会社分割により譲渡することを決定し、吸収分割契約を締結した。
ライオンを分割会社とし、日清食品を承継会社とする吸収分割方式。本件により、ライオンは日清食品から15億円の金銭交付を受ける予定。

【譲渡事業】ライオン(株)東京都台東区 売上高402,700百万円(2023年12月期)による、機能性表示食品の一部に関わる事業

【譲受企業】日清食品ホールディングス(株) 東京都新宿区 売上高732,900百万円(2024年3月期)

③ヨシムラ・フードHDが、マルキチを完全子会社化

2023年3月、ヨシムラフードホールディングスは、北海道網走市に本社及び工場を構える、マルキチを子会社化しました
シンガポールで水産品卸を行う当社グループのSin Hin Frozen Food Private Limitedは、ホタテを主力製品のひとつとして年間約170トン以上購入しており、現地大手スーパー等へEmeraldブランドとして販売を行っています。Emeraldブランドは現地で一定の知名度があるため、マルキチの安定したホタテ供給力を活かした拡販が可能となり、一方でマルキチは海外販路をより強固なものとできるため、両社の業績向上を図れる可能性があります。同じくシンガポールで水産品加工販売を行う当社グループのPACIFIC SORBY PTE.LTD.においても、マルキチの水産品を取扱う等、当社が持つアジアにおける販路を活用した拡販ができる可能性があります。
【譲渡企業】(株)マルキチ 北海道網走市 売上高1,117百万円(2021年12月期)

【譲受企業】(株)ヨシムラ・フード・ホールディングス 東京都千代田区 売上高49,700百万円(2024年2月期)

④ヨシムラ・フードHDが、丸太太兵衛小林製麺を完全子会社化

2022年12月、ヨシムラフードホールディングスは、北海道札幌市に本社及び工場を構える、丸太太兵衛小林製麺を子会社化しました。
同社の強みは、長年にわたり培われてきた高度な製麺技術とノウハウにより、こだわりの味と高品質の麺を製造できること、また、得意先からの要望を反映した特注麺等、高付加価値商品の製造が可能である部分にあります。それにより多くの有名なラーメン店で同社の麺が採用されており、安定的な業績を維持することができております。

【譲渡企業】(株)丸太太兵衛小林製麺 北海道札幌市 売上高1,067百万円(2022年3月期)

【譲受企業】(株)ヨシムラ・フード・ホールディングス 東京都千代田区 売上高49,700百万円(2024年2月期)

⑤ヨシムラ・フードHDが十二堂を完全子会社化

2022年1月に、ヨシムラフードホールディングスは福岡県太宰府市で海産物・農産物加工販売を行う十二堂をM&Aにより子会社化しました。十二堂は「えとや」の屋号で福岡県に直営3店舗を有し、ソフトふりかけ「梅の実ひじき」等を製造・販売。ヨシムラ・フード・ホールディングスは食品製造・販売を行う中小企業の支援・活性化を目的とした「中小企業支援プラットフォーム」を構築し、支援を行っています。本件では、特に同社グループ企業が行うEC販売との協業やダイレクトマーケティングの相互活用によるクロスセル等、通信販売事業のさらなる強化を図りつつ、原料の共同購買、共同での商品開発等も加えることで、直接的なシナジーを創出し、業績の向上を図ります。

【譲渡企業】十二堂(株)福岡県太宰府市 売上高680百万円(2021年8月期)

【譲受企業】(株)ヨシムラ・フード・ホールディングス 東京都千代田区 売上高29,283百万円(2022年2月期)

⑥栃木屋が七越を完全子会社化

2021年11月に、広島県の創業71年を有する菓子メーカー(有)栃木屋が、富山県の創業68年を有する菓子メーカー(株)七越をM&Aにより子会社化しました。栃木屋は主に豆菓子・ナッツ菓子を製造して全国へ販売しており、同社の全国販路を活かした七越製品(七越焼)の展開や、北陸の七越販路を活かした栃木屋製品の展開を推進。老舗菓子メーカー同士の協業によるブランド力強化に繋げます。

【譲渡企業】(株)七越 富山県富山市 売上高134百万円(2021年5月期)

【譲受企業】(有)栃木屋 広島県広島市 売上高213百万円(2021年3月期)

⑦アイリスオーヤマグループが(株)ゆのたにから食品製造事業を譲受け

2021年2月に、生活用品製造・販売のアイリスオーヤマのグループ会社でパックごはん・切り餅の製造を行うアイリスフーズ(仙台市)は、新潟県魚沼市の食品製造会社の(株)ゆのたにからレトルト食品及び缶詰事業を譲り受けました。アイリスフーズはごはんとそのおかずとして最適な総菜を主力商品としており、レトルト食品販売も加えることで商品ラインアップを拡充。アイリスグループの強みであるスーパーマーケットやホームセンターへの販路も活かして、グループ全体の相乗効果を図ります。

【譲受企業】アイリスフーズ(株)宮城県仙台市 売上高12,454百万円(2019年12月期)

⑧アークランドサービスホールディングスがコスミックダイニングを完全子会社化

2020年6月に、「かつや」等の飲食店事業を展開とするアークランドサービスHDは、各種冷凍食品製造・販売のコスミックダイニング(前橋市)を完全子会社化しました。コスミックダイニングはスーパーや飲食店向けのとんかつ、メンチカツ、ハンバーグなどの冷凍食品製造販売を行っています。アークランドサービスHDは新たに、グループが展開する飲食業態のブランド力を活かした冷凍食品製造・販売へ進出し、事業領域の拡大につなげます。

【譲渡企業】コスミックダイニング(株)群馬県前橋市 売上高2,657百万円(2019年5月期)

【譲受企業】アークランドサービスホールディングス(株)東京都千代田区 売上高38,634百万円(2020年12月期)

⑨丸大食品がトーラクを完全子会社化

2020年5月に、ハムやソーセージ等の食肉加工会社である丸大食品(大阪府)が、乳加工製品の製造会社トーラクをM&Aにより子会社化しました。トーラクは神戸を代表するお土産品である「神戸プリン」や、ホイップ済みクリームでトップシェアを誇る「らくらくホイップ」などブランド力のある商品を有します。丸大食品は、双方の販売力、商品力、研究開発力を融合することで、品揃えの強化や新しい価値創造を図ります。

【譲渡企業】トーラク(株)兵庫県神戸市 売上高7,891百万円(2019年3月期)

【譲受企業】丸大食品(株)大阪府高槻市 売上高245,820百万円(2020年3月期)

⑩亀田製菓がマイセンを子会社化

2019年2月に、「柿の種」「ハッピーターン」などの米菓メーカー亀田製菓(新潟県)が、玄米パンやベジタリアンミート等のグルテンフリー食品製造会社マイセン(福井県)の株式90%を取得しました。近年のアレルギー対応を含む健康志向食品の需要増加も受け、亀田製菓は米菓以外の食品製造の強化を目的に子会社化を実施。具体的には玄米などを使った新製品の開発を進めるほか、販路や製造ノウハウなども両社で共有します。

【譲渡企業】(株)マイセン 福井県鯖江市 売上高342百万円(2018年3月期)

【譲受企業】亀田製菓(株)新潟県新潟市 売上高100,041百万円(2019年3月期)

参考情報源:レコフデータ、TSR

食品製造業界M&A:事例の考察

食品製造業では、国内市場縮小に伴う競争激化や、アフターコロナを見据えた経営基盤の強化、新興国の経済発展や原材料の供給懸念を背景とした価格の高騰、また後継者不足等を背景に、業界再編やM&Aが進行しています。

その件数は年々増加し形態も、近隣同業による買収から飛び地の同業買収、異分野の食品製造会社による買収から金融投資家による買収まで、多様なプレイヤーによるM&A事例が見られています。前段でご紹介した昨今を象徴するような事例でも、同じ食品製造会社同士のM&Aでありながら、双方の取扱製品が全く異なっていたり(事例⑦、⑨、⑩)、同じ業種でも展開エリアが全く違う提携(事例⑥)が実現しています。

もちろん近隣同業種同士の食品製造業M&Aも引き続き散見され、購買や物流の共同化等によるコスト・シナジーを中心に提携効果を出されている事例も多くありますが、M&Aは同一性よりも相互補完性が高いほど事業シナジーが効きやすいこともあり、販路や生産技術、管理ノウハウ等が異なるも補い合える食品製造業界同士の企業が組むことで、イノベーション的飛躍を意図したM&Aも増加している印象があります。

また、飲食業界の企業が、取り扱う食品の製造会社を買収するケース(事例④)も、以前から時々見受けられましたが、コロナ禍を経て更に目にする機会が増えたのも特筆すべき傾向かと思います。

以上、簡単ではありますが、昨今の事例から食品製造業界のM&A動向を考察いたしました。皆様の成長戦略の一環として、M&Aという選択肢を検討される際のヒントの一助になれば幸甚に存じます。

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